捨てればゴミ、生かせば資源
前回マツサモ村を訪れた時との違い…それはあの男、ヒロだ。
彼はどこからやって来たのか、何者なのか。先日のガラス玉といい、他国の大物と繋がりがあるのだろうか。しかしこれほどの高度な技術を持つ国の話は聞いたことが無い。まだ私の知らない大国が?味わったことの無い興奮に溺れそうな錯覚を覚える。
これは是非ともヒロを囲い込んでしまいたい。出来るだけ友好的に。
「ヒロさん、折り入ってお願いが。このフォーク、それに紙の皿をどうか私に売って頂けませんか」
え、今コーポンさんが握ってるそのフォーク?紙皿も?いや、売り物のつもり無かったな。フォークはともかく紙皿はソースで汚れちゃってるから、捨てるつもりだったし。
「欲しいんならあげますけど、紙皿なんてどうするんですか。一回使って汚れてるから捨てた方が良くないですか」
「ええっ!?捨てるですと?こ、こんな高級な紙を?」
そんな驚くかな。別に高級ではないが。ソースの水分吸ってペナペナになりかけてるし。 焚火の中に放り込んどきゃ燃えるよ。
「やっぱばっちいから新しい皿、あげますよ。フォークも洗ってから持って帰った方が良いですよ」
「えっ、頂けるのですか!?」
うん、それだけ洗うの面倒だしね。 でもフォーク1本だけ持って帰って何すんだろ。
「おぉ、おぉ、なんと。し、しかしいくらなんでもタダという訳には」
いや、ゴミは結構溜まって困るんだよ。空き缶とか。
「アキカン、ですか?どんなものでしょう」
家の裏にコーポンさんを連れて行く。いやぁ、飲んだなぁ、ビール。とりあえずここに空き缶まとめてるんだけど、これといった処分方法が思い浮かばないんだよね。現代ならアルミ缶をリサイクルに出すところだが、この世界ではそういう訳にいかない。朽ちるのを待つだけかなぁ。アルミって安定してるから確か200年くらいかかるんだよね。あんまりこういう物は召喚しない方がいいのかな。
「これは…!」
コーポンは絶句した。彼の目の前には、透明な袋に入った、銀色の美しい筒。色とりどりの模様が描かれて、なにやら異国の文字がびっしりと書き込まれている。信じられない。あんな小さな文字を、どうやって?そもそも、あの完璧な曲面は!?上下端にはくびれが見られる。小さな穴が開いており、これまた小さな摘みのようなものが付いている。あぁ、この美しき造形は神が作り賜うたのか。
「これ溜まっちゃうから処分に困るんだよね。上から踏んづけて潰しても限度があるし」
「踏み潰すですとぉぉぉ!?」
びっくりした。怖いよコーポンさん。え、なに、踏んじゃいけないの?長谷さんみたいにメダル状に潰さないとダメ? あれけっこう難しいんだよ。斜めに踏んじゃったらあさっての方向に飛んでいくんだよ。
「こ、こ、これは、私が全部頂きます!つぶすなんてもってのほかです!…あっ、か、軽い!?金属…のようですが…。はっ!?まさか伝説の金属、オリハルコン!?」
いや、そんなわけないから。ただのビールの空き缶です。アルミです。ちなみに、某鉄鋼関連企業の新年会では、特注のスチール缶ビールが供される。材質表示以外はアルミ缶のやつと全く一緒のデザインだから、初めて見た時は違和感の原因がわからなかった。
そうそう、オリハルコンって想像上の金属。そう思っていた時期が僕にもありました。でも調べてみたら、真鍮のことなんだね。
コーポンさんはアルミの空き缶を抱え、ほくほく顔だ。何に使うんだろ。まぁ、いいか、喜んでるし。こっちはゴミが処分出来て、なんか悪いな。 後でなにか付けようかな。
「ヒロさーん、ちょっと現場までお願いします!」
カートクが呼びに来た。ちっ、サボれなかったか。
「溜桝とのつなぎ目のところがよくわからないんですけど…」
んじゃ、現場行こうか。鉄板はここに置いといて、後で洗おう。
「ん?ヒロさん、どこ行くんですか」
シーハーしながらファストが聞いてきた。バカっぽい顔になってるぞ。似合うけど。
「ああ、ちょっといま村の工事やっててな。見に来るか?」
単純に興味本位で付いてきた冒険者たちは度肝を抜かれることになった。唸りを上げる重機、整然と並ぶコンクリートの溝、丘の向こうには水車の台座が建設中だ。静かな村にユンボのエンジン音が響く。
ポカンと間抜けに口を開けている面々。ファストは顔のデッサンが狂ってるぞ、だいじょぶか。コーポンさんに至っては地面にへたり込んでいる。
「も、もう、私の理解の範囲を超えています…これは、なんですか…なんて日だ」




