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おっさんが行く 異世界で軽運送   作者: 仕事の傍ら執筆中
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神様と面談

 ゆっくりと覚醒していく。


 あれ、俺寝てたのか。

 いや、イノシシにぶつかったんだ。


 そうだ、クルマは…道の上で止まったんだっけか?

 いやガードレール無かったな。谷に落ちたか。てか俺死んだか?


「…っ!…気がつきましたか!?」


 …えと、だれ?現地のひと?


「…申し訳ありません!」


 いきなり謝られた。え、対向車の人?いなかったよな。なんでこの人謝ってんの。あ、今気づいたけど、俺地べたに横になってた。起きなきゃ失礼だ。よっこいせ。

 それにしてもここどこだ?変な場所だな。白っぽいもやで遠くが見えない。右も左も判然としないな。とりあえず目の前の人に話しかけないと事態が前に進まないようだ。

「あの、え〜と…、あなたは?」

 目の前で膝をついて謝罪していたのは上品そうな爽やか系の青年だった。イケメンだがどこか人の良さそうな、気の弱そうな人物だ。やたらヒラヒラした服を着ている。ギリシャ彫刻で見たことあるようなやつだ。

「わっ、私は…いわゆる、あなた達の言うところの、神です。…と言ってもまだ神の座に着いて間もない、未熟者なのですが…」

 不思議と嘘を言ってるように思えなかった。俺は特に信仰があるわけではなく、神様なんて信じていない。だが目の前のこの青年のことを疑う気持ちはなぜか湧いて来なかった。


「…はぁ、そうですか。それはどうも?で、何がどうなって…?」

「この度は!誠に!申し訳ありませんッ!…私の眷属である山の護神(もりがみ)が…えぇそう、あのイノシシです。あなたの前に飛び出してしまい、事故に巻き込んでしまいました。本当に、申し訳ありません!私の管理不行き届きです」

 かぶせ気味にきたな。あー、眷属?もりがみ?ナニそれおいしいの?神様の遣いみたいなもの?


 その後、ひたすら恐縮する爽やか青年神様から説明を受けた。

 要は、山の守り神であるイノシシが食べ物探しててうっかり道路に躍り出たところに、運悪く俺のクルマが遭遇したと。


 知ってるかい、成体のイノシシってのはその重量もバカにならず、軽自動車なんて真正面からケンカしたら逆に跳ね飛ばされるくらいだ。先の知人曰く「巨大な岩にぶつけたと思った」というくらい。 涙目で笑ってたな。そいつのクルマは廃車になったよ。フレームまでイッてて修理代の見積もりがバカみたいに高かったんだと。

 文明の利器であるはずの自動車は、野生に対しかくも脆弱なのである。


 結果、俺の愛車は哀れ顔面を陥没させたまま、コーナー外側の谷底へ転げ落ちたらしい。

 ナンボ衝突安全ボディと言えどもかなりの高さから落ちたはずだ。俺は即死だったろう。

 傷みの記憶は無いが…生命保険ちゃんとおりるよな?中学生の一人娘は泣くだろうな。ヨメは…な、泣くよな!?

 

 勝手に死んじゃってゴメンな。

 葬式はチャチャっと済ませてくれ。墓はいらないと常々話していたがヨメは聞いてくれてただろうか。 いやいや、やっぱりお墓建てないと、とか揉めてないかな。家に仏壇もいらないからね。私はそこにいませんよ。お米炊かないでくださいね。


 あ、それと、荷物!小宇宙(コスモ)ドラッグさん、お届けできなくなってゴメンなさい。どうしようもないんです。もし今度生まれ変わったらコスモドラッグでいっぱい買い物します!それで許して!

「あのー…、そろそろよろしいでしょうか」

 お人好し爽やか青年が俺の妄想劇場終幕を待ってた。あぁ、なんかスンマセン。

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