きっかけは不意に己の外側から
思考の切り替えってとても大事
それが上手くいかないと地獄の苦しみに……
駅ホラー企画が始まってから何日も経っているのに、私は頭にゾンビのごとくへばりついて離れない面白くなさそうなイメージを捨てることも、新しい何かを考え付くことも出来ずに呻いていた。
……むしろ私がゾンビになっているような。おごごごごごきしゃーげげげげげって奇声を挙げ続けている。ゾンビも真っ青の死にかけの物書きがここにいるぞー!
……いやいや待て待て。まだ死ねないぞ!
しかし、何度考えても、駅ホラーのお題に関係なく、おじいちゃんが孫を慰めるだけの話は……面白くなかった。何しろ「味がしない」のだ。なーんにも面白そうな場面が思い浮かばないのだ!
とてもじゃないがわくわくしながら書ける気がしてこない。
始まりとオチが決まっているというのに面白くないと書く前からわかるのだ。こんなザマで書ききるなんて無理だ。
そもそも最後になっておじいちゃんが「実は幽霊でしたー☆」ってわかるだけの怖さって怖いの?
孫と祖父のやりとりなんて確実にほのぼのにしかならないし。では怖いお化けにしてしまえばいいのか?
でも「仲直りしねぇ子は喰っちまうぞ~!」なんて襲いかかってくるおじいちゃんは逆に恐怖の化身だよ。
ホラージャンルなのがダメなのだろうか。
ただの実力不足なのだろうか。
どこをどう直せばいいのかもわからず目が回ってくる。
どうする。もう駅もホラーもやめてただの短編小説にする?
でもお知らせを見て書きたいなと思ったのに、全然関係なくてしかも今のところは面白く感じないものに取り組み続ける?
もちろん書くこと自体がいい経験になることはわかっている。でもこれを「書きたい」と思わないのだ。かといって他に何か思い浮かぶ訳でもなく。
結局何も書けないのかなぁ……。
そう落ち込みながらため息をついている時に感想を読んだのだ。
――廃駅が舞台。ホラー小説にぴったりですね。
廃駅。
廃駅。
廃駅――――――
自分が話題にしていたはずの、違う言葉を見て、私の見る村が昼間から真っ暗に変わる。
ぼろぼろの寂れた廃駅がある。真っ暗なのは森の木々のせい。
暗い世界。夜。夜に村の空に浮かぶオレンジ色の提灯の光。私が過去に目にしたもの。
あれが浮かぶのはお祭りだった。夏のお祭り。でも提灯に照らされない村の外は何も見えない黒い道しかない。
家のどこにでも蝋燭があって、あの日は提灯の蝋燭に祖父が火をつけているのをよく見た。蝋燭も提灯もあるのが当たり前だった。
簡単な屋台しかない小さな広場でのお祭り。広場にたくさん提灯があるのに、少し暗くてぼんやりとしか照らされていない。眩しすぎない世界。
全ての輪郭が曖昧な暗さと明るさの舞台。
あそこになら「何か」がいるんじゃないだろうか。
こっそり人じゃない存在がいても、誰にもわからないんじゃないだろうか?
こうしてようやく「村」だけが頭に残り、他のイメージを追い払えたのであった
誰かの言葉って大切
感想を書いてくれたり読んでくれたりしてくれている全員に感謝したい




