(黒)テンプレならなんでも同じだと思うなよ
まず、私はあまり読まない種類のテンプレの小説を……
メインとなるテンプレが他の小説たちと違うのでトップバッターに据える
あらかじめ書いておくと、例として挙げる小説たちは私が読んで素晴らしく面白いと思った小説たちであり、一読をおすすめしたいもののかなり作風が違っている。全部好きな人は我が同士。
さらに言うとどれも完結しており、半分はなろうに登録する前に読了したので感想も書いていない。ネタバレにならない程度に懐かしみながら進行していきたい。
テンプレと一口に言っても、何十種類もある。私が好むのは「婚約破棄もの」「悪役令嬢もの」「乙女ゲームの世界もの」などである。「主人公最強」とか「ハーレム」などはあまり興味がない。虐げられた結果の「追放」の類いも好きだ。一つに絞らず複数を挙げていく。
ではでは、最初の具体例はこちら。以下は「作品名」と(作者名敬称略)である。
「ミルク多めのブラックコーヒー」
(丘野 境界)
ジャンルはハイファンタジー。人間、獣人、吸血鬼、聖霊……様々な種族が存在する異世界の物語。
主人公シルバはパーティーにおいてモンスター退治の後方支援を一手に担っていた。彼が新加入メンバーである美少女ノワによってパーティーを脱退するところから話は始まる。
(この小説はどうやら同じ世界観を共有する小説があるようだが、これ単体で読んで困ることは特になかった)
この小説に影響したテンプレは「ハーレム」「主人公最強」「追放」「ざまぁ」といったところだろうか? 最初の二つはあまり読まないので、ハーレムはタグにあったが主人公最強があてはまるか実は自信がない。違ったらごめんなさい。
では私が読んで思ったこの小説の面白さの理由とは、………………理由とは――――――
――(記憶を掘り返す)――(名前なんだっけ)――(戦闘どうだっけ)――(どんな事件があったっけ)――(そういえばあれはどのシーンだっけ)――
――――――ごほんごほん。お待たせいたしました。
ハーレムを好まない私がうっかりお洒落カフェ生活かとタイトルに騙されたこの小説。完結し書籍化されているようだ。
・理由もなく主人公がモテまくる不思議現象が苦手な私を「こりゃ主人公モテるわ」と納得させてくれた。
・他のエッセイで見かけた「主人公最強」ものの欠点、「なんでも主人公があっさり倒してつまらない」が当てはまらない。主人公シルバは何も倒せない超後方支援タイプ。支援された女の子たちが暴れます。
・戦闘描写がしっかり書かれている。特にシルバの「祝福」は作中で遺憾なく発揮されているところにぶれない設定がある安心感を抱けた。
・悪役がすっごく悪役してるぅ。悪役の人物像は一切崩れない。
・堅苦しくはなく、締めるところはシリアスに、シルバのつっこみは盛大に。
・200話を越える超長編小説であり、主人公が結果的にハーレム状態になるまでの女の子たちとのやりとり、伏線、最後の戦いの盛り上がりから最終話までの物語の閉じ方はまさに、用意された小さなパズルのピースをきっちり嵌めたような美しさであった。
女の子たちはそれぞれ個性があり、シルバとのやりとりも違う。シルバは敵を倒せないが、パーティーの中心となって全員を支えきる。ただ人柄ゆえなのかちょっと「特別」なところもある……というのは読者にはクるものがありそうだ。
私が一番尊敬するのは細かく決まっているのだろう小説の設定だ。一つの事件が敵を倒してそれで終わりにならない。時系列も複雑。パーティーメンバー一人一人の、謂わば好感度イベントも含め、200話越え……すごすぎる。
とても長い小説だが、ラスボスがはっきりしている。物語のゴールのようなもの(悪役ざまぁ)がはっきりわかるため、ラスボス退治を期待する人々は最後まで読んだのではないだろうか。
私にはハーレムも主人公最強もあまり興味がないのだが、追放もの(この場合は自主的な脱退だが)なのがわかってついつい読んでしまった。途中で読むのをやめなかったのは「作り込まれた設定」「道理に合わない展開がない」「クライマックスを期待させる」などが理由だと思われる。
最後の方はちょっと「そんなのきいてないよ!?」と思ったりはしたけど終わりよければ全てよしの精神で読了まで突っ走った。
それにしてもつくづくいいタイトルだと思うのであった。
こんな超長編小説を完結させられるとは……
やはり小説の設定を考えることは正義……!