役割とは大事なのです(主人公とモブ)
登場人物についてのあれこれ編
物語には「主人公」がいる。どんな小説であれ、その「核」ともいえる特別な存在がいる。
物によっては主人公が二人いるとか、人ではない何かを物語の中心に据えたりもするが、何者も登場しない小説はないんじゃないかと思う。
主人公、「人間」に限定しても彼らのことは一言でまとめられるものではないかもしれない。男か女か。年齢。その年齢までの人生経験(小説の前日譚となるようなあれこれ)や、持っている能力。
ただ一つ言えるなら、きっと主人公は作者が心の中に作り上げた「夢」を顕現させる、作者にとっての相棒なのだ。
主人公は作者でも、その小説を読む読者でもない、違う誰か。だけど、彼らが物語において一番長い付き合いになる案内人になるはずだ。彼や彼女と共に行けば、物語の森を駆け抜けられると信じてついていってしまうような、そんな存在が「主人公」なんじゃないかなあと思う。
主人公がいない小説はないと思うけど、主人公しか登場しない小説はあると思う。他にも登場人物はいるけど全部モブ、みたいな。恥ずかしながらちゃんと読んだことはないのだけど、「我輩は猫である」も猫が主人公で、あとはわりとただのモブにしか猫は受け止めていないのでは……と思っている。誰かがどうこうしたら猫の考えが変わって世界を救うとかはないと思うし。だっておねこさまなんだもの。猫とは王者。かしずかれることが当然だという自信が彼らにはあるとしか思えない。
……それはとにかく、主人公以外の登場人物といえば。
まずモブですね、うん。スーパーで買い物をしている主人公の周囲で商品を吟味しているだけの人々はほぼモブ。安いよ安いよと声が聞こえてくるけど姿は描写されないような人物も十中八九モブとして一瞬の登場を果たすのだろう。小説の中に存在はするものの主人公の人生に足を踏み入れてはこない、小説では名もなき存在。読者というスポットライトにはほぼ照らされなくても彼らはその一行に行動が書かれているだけで意味のある存在だ。
……もちろん名前が登場したらモブではないという意味ではない。いくら私が「小説の世界に生まれ変わりたいわ☆」などと考えて、
「『主人公』、おはよう」と晶が声をかけてきた。
「『主人公』様、助けてくださってありがとうございます」「いえ気にしないでください」「私、晶と申します。是非お礼をしたいのです」「いえ結構です」(走って街から離脱する)
「『主人公』、この晶様の前で美人に誉められるのを見せつけやがって!」「いや誤解です」「覚悟しろー!」(一撃で負ける)
……などと書いたところでその人物の再登場がないならやっぱりモブである。せっかく名乗ったところでわざわざ記憶にとどめてくれる読者なんているのだろうか。それなら名前が出ない方がいいのかもしれない。彼らは読者へ自らの活躍を見せつけるためにいるわけでもないのだから。
次は~ライバル~
ライバルに到着しま~す~




