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1-5 コントの時間

 それから、とりあえずそいつらの懐を漁って路銀の足しにいたしました。


 あらあら、案外と持っていますね。ちょっと唇の端が緩んでしまいました。


 そいつらは縛り上げて口も塞ぎ、『こいつらは盗賊です。通報すると賞金がもらえます』と張り紙しておきました。


 同業者が通れば助けてもらえるかも、あるいは役人が通りかかればアウト。運否天賦の天命サイコロ、こいつらの場合はどっちに転がるのでしょうか。


 いや、単に自分達で突き出すのが面倒だっただけでして。ただ今、絶賛家出中でございますし。


 奴らからせしめたお金は、お爺さんにも少し渡しておきました。いえなにね、ちょっと共犯を作っておこうと思いまして。


「あ、いや。わしは自分の金が戻ってきさえすれば、それでええんじゃが」

「まあまあ、こういう物は天からの授かりものですから」


 お爺さんは謙虚だったので、強引に押し付けておきました。そして、ブツブツ言いながらも受け取ってくれたお爺さん。


 別にお金がいらないわけではなく、面倒ごとに巻き込まれたくないだけなのですから。


 私はお金など十分に持っていますし、途中でいくらでも稼げるのですが、まあ連中と軽く遊んであげた手間賃という事で。


 そして、とりあえず、お爺さんの家のある村までいきました。お爺さんにはお礼を言って別れました。


 速度の遅い荷馬車できたので、四十キロ離れたこの村でもう日が暮れ始めました。王都から近い場所にあるので比較的大きな村でしょうか。街道を挟んで家々が立ち並びます。


「ここも久しぶりね。小さな子供の頃は王都を抜け出して、お祭りに来ていたものだけど」


「大きくなったら子供だけで堂々と来ていたものね。普通、公爵令嬢が村のお祭りに遊びにはいかないよね」


「あなたやフロートも一緒だったし、親から許可は出ていたわよ」


 そう、自力で不測の事態を跳ね除けられる武闘派の子供軍団だけで遊びに来ていました。


 実力の足りない子達は一緒にやってこれなかったので、随分と羨ましがられていたものです。もちろん、帰りに御土産はあれこれと戦利品として買い込んできましたがね。


「真理の場合は、一人でも全然大丈夫なのに」


「それを言わないの。一応は公爵令嬢としての立場があるというか、世間体というか。それにスフレなんかは連れ歩くと面倒だし、何かあった時とか確実に足手纏いになるから連れてきてやらなかったけどね」


「王子様、可哀想。そういう真理の日頃から冷たい態度が今回の事態を招いたのでは?」

「う、うっさいわね。こう見えて飴や鞭は使い分けていたのよ」


「でも飴は巨乳に負けたよね」


「ああ、まさにそれよ。本気でムカつくわ、あの女。胸がでかいだけのホルスタインの分際で。ああ、せめてこっちがもう一回り。って何を言わせるのよ~」


 シナモンは大笑いで腹を抱えています。いつもの事なのですが、やはりムカつきますわね。まあこの子は私の子分にした時に十分締めておいたのでいいのですが。


「あっはっは。もう真理ってば婚約破棄されても元気いっぱいじゃん」

「ただのヤケクソよ!」


「でもさー、王子様が本当にあの女と結婚式を上げちゃったらどうするの」

「そんな事は陛下が絶対にお許しになりません。あの女を暗殺してでも阻止するわよ」


「そう簡単に行くといいけどね~」


「だから怪しいと思って、尻尾を出させるように引っかき回しに行こうっていうんじゃないのさ」


 そう、端からそのつもりなのだから。王宮の方はフロート、あんたとその他の私のお取り巻き達に任せたわ。もう好きにやってしまっていいから。


「それで、これからどうするの」


「とりあえず足が欲しいわよね。そっと家を抜け出したから、馬を持ち出せなかったし。セバスに頼んで馬を出してもらえばよかったかな」


「馬車の方がいいんじゃない。できれば御者付きで。僕も運転は面倒くさいな」

「あんたって、本当にものぐさね。従者失格よ」


「最初からそんなのわかってて雇ったんじゃないのさ。雇ったもへったくれもないけれど」


「うっさい、うっさい。あんた、私に負けたんだから、ちゃんと言う事を聞きなさいよ」

「はいはい」


 返事がへえへえでないだけマシなのでしょうか。年齢的なものか、生意気盛りで本当に困ったものです。


 この小坊主も小さな頃はもっと可愛かった気がするのですが。物凄い、輝くような美少年には育ちましたがね。


 この子なら、あのボンクラのスフレとは違い、一人で置いておいても変態貴族やショタ好きマダムに持っていかれたりしないので安心なのですが。


「とりあえず宿屋にいくわよお」

 そして村のメインストリートに面した宿屋へ向かいました。


 ここは王都行きの平民の旅人が泊まる村なのです。


 もう一つ向こうにある街は、貴族の高速馬車で王都から一日の距離にあり、約八十キロ離れていますでしょうか。ここから普通の馬車なら一日あれば行けます。


「おばちゃん、こんばんは」


「おや、マリーちゃんじゃないかい。祭りの日でもないのに珍しいわね。ああ、いつもの可愛い男の子も一緒かい。確かシナモン君だったね。あれ、もう一人の娘っ子はいないんだね」


「ああ、あの子は今日用事があってね」


 むろん、私が申し付けた『対悪徳男爵令嬢対応作戦』の指揮官として王宮に置いてきたわけなのですがね。


 


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― 新着の感想 ―
[一言] 主従の珍(?)道中。余裕なのかと思ってたら意外とやけくそ? シナモンはチェシャ猫気質?これも主への愛情なのか。 巨乳に恨みは無いけれど無いけれど、やっちゃって下さい。 結婚式なんて挙げさせる…
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