表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/48

1-46 前世魔人の正体見たり

『ゲゲゲ、ゲゲゲ、ゲゲゲっゲゲゲ~!』


 やだ、シナモンったら。こっそりと王宮に連れてきちゃってたのね、あの蛙さん達を~。


 誰だ、そんな事に協力した奴らは。この子も見かけだけは天使のように可愛らしいので、王宮の奴らも、彼には結構甘かったりするのです。


 誰かに激しくお強請りしたのですね。もういつの間に~。そんな暇がいつあったというのよ。でも実際問題、ここにいるのよね、あの蛙達は。


 もしかしたら、ハトリの仕業? いえ、お母様という線もあり得るわ。大穴で、お父様とか。


 もう彼らブースト・フロッグ(私命名)はシナモンのお友達になってしまったようです。これはもしかして、この子達全部を王宮で飼ってあげないと駄目なパターンなんだろうか。


 しかも、何故か蛙達もやる気満々のようなのだし。よくわからない生き物ね。ちょっと女には理解できないわ。大蛙さんと男の子との間だけに通じる何かがあるとでもいうのかしら。


「まあ、それでも使える物はありがたく使わせてもらうわ。うーん、これは凄い。魔力が三倍増ね、これならいけるかも!」


 私はさらに魔法のパワーを込めました。いける!


 そして空中で必死に抗っているアリエッタから、何故かひび割れた壁の欠片のようなものが舞い落ちてきます。最初は細かい埃のようなものが。そして次第に大きくなってきたのです。


「何なの、これは」

 私は警戒気味に、そして油断をしないよう奴を魔法で拘束し、魔法をぶち込みまくっています。


 そして堕ちてくる破片のような物。


 私は奴が大気中の窒素と酸素から爆弾のような物質でも作って撒いているのじゃないかと思って警戒していましたが、うちの母親が防御魔法を発動できる体制で杖を構えていて、「あんたはそっちに専念していなさい」というアイコンタクトをしてきましたので、そっちは任せる事にしました。


 これはもう半端じゃない量が落ち続けています。何だろう、こいつは。え? こ、これは~。ま、まさかっ! まさかーーっ‼


 そう、鑑定してみたらこれは間違いなくアリエッタの化粧の剥がれ落ちたもののようです。


 確かに今、そういう魔法をかけているのですが、ちょっと派手過ぎて信じられなくて違う物だと思っていました。


 その量の半端ない事。顔だけではない、全身をこてこてに盛っていたであろう化粧の超重層構造、おそらくは魔法化粧によるものです。


 まるで3Dプリンターで持ったかの如くに。一度使ったら、剥がしたりつけたりするのが非常に面倒な代物なので滅多に使い手はいないと言われますが、これは半端じゃない量が施されています。


 使い手によっては、他人の肉の弾力や皮膚の感触までを精密に再現すると言われていますが。ここまでやれば、まったく別人に成りすます事も可能でしょう。


 間諜などで使う人間がいるとは聞いているのですが、実際に使っている方には初めてお目にかかります。己が放った魔法の引き起こす大惨事の予感に震え慄く私。


「ね、ねえ。真理……じゃあなかった、マリー様! こ、これ、まるでボロボロになった漆喰みたい。しかも、半端じゃあない相当の厚塗りだよ。ま、まるでSFXの役者さんみたいだ」


 そのような私から学んだ異世界地球の豆知識を披露してくれるシナモン。奇遇ね、私もそう思っていたところなの。そして、それを見ていた男達も震えまくった。


「ガクガクガクガク」

「うわわわわ」

「あばばばばば」


 いやあ、これは禁断の魔法として封印しておいた方がいいのかしら。


 将来、私が王太子妃になる事が正式に発表された途端、どこの貴婦人のサロンや舞踏会などにも呼ばれなくなってしまったかもしれないという暴挙も達成してしまったのかもしれません。


 誰も好き好んで素顔を暴かれたくはありませんからね、うちの違う意味で化け物のような存在は別として。うわあ、これもう、どうしようかしら~。


「やっちまった。やっちまったわ~」

 今までで一番やっちまった感に溢れている、このシーン。


 また私の伝説のページが一枚書き加えられたような、そのような歴史的瞬間です。


 後に、迂闊にもこの大惨事を歌おうとした吟遊詩人がいたならば、すべて抹殺してしまう他はないかもしれません。


 もう驚きを通り越したのか、凄まじくわくわく顔のシナモンの奴はアリエッタの顔をじっと凝視しています。


 なんといいますか、ホラー映画でも見ているような感じにドキドキしながら。


 もう子供は気楽でいいですわね、私だってこの大惨事を他人が引き起こしたのであれば、面白がって見物客を演じるのでありますが。


 スフレの馬鹿は彫像というか、まるで石化でもしたように固まっています。そりゃあ、そうでしょう。もうかける言葉も見つかりません。


 馬鹿につける薬はありませんわ。状態異常治療用のポーションでも無理ですね。


 こいつ、果たして立ち直れるのかしら。昔から結構打たれ弱いんですのよね、もっぱら心の方面などが。


「おばば様!」

 エロマンガ家の者が思わず、そう言ってしまった。ああ、やっぱりそうなのね。ああ、なんて事でしょう。


「お、おばば様あ!?」

 思わず私も叫んでしまいました。まさか、まさか、まさか、まさか。


「アントニウス、この馬鹿者めが。このような場所でその名を呼ぶでないわ」


 もう芝居は諦めたものか、しわがれた老婆のような声で叱責するアリエッタ。まるで古参の声優さんみたいだな。


 彼らはプロ、六十歳以上の女性が若い女の声を平然とこなされますしね。


 いつの間にか私の後ろに来ていた、その辺の御令嬢に成りすましたハトリが私の肩に置いた手を通じて、彼女の心の震えを伝えてきました。


「エ、エロマンガ男爵家の現御当主であるギルガメッシュ男爵の母君、伝説のアリエッタ。


 その若さを保つ秘訣を諸国の女性から懇願されたと言われ、その源であると言われた商品を誰もが買い求め、飛ぶように売れたと。


 それがエロマンガ家の隆盛の源泉。しかし、そのすべてが幻であったなんて。ショックです。私もたくさん使っていたというのに。あーん、さすがにこれはないですわあ。


 それにしても、影の支配者自ら御出陣だったとは。てっきり同じ名を受け継いだ曾孫か何かだとばかり思っていたのですがねえ。うわあ、凄い物を見ちゃったなあ。今、私は歴史の目撃者となったのです」


 なんだと、間諜のくせに敵国の製品の愛用者だったのだと。この裏切り者め。しかし、彼女の膝の震えが自分にも伝染してしまった私は、ガクガクと震えながら思わず訊き返しました。


「そ、その当主の御歳は?」

「あー……今年で、確か……七十二歳になったのでは……」


「あうう……そ、その母親なのかあ」

 私にできるのは呻く事だけです。


 アリエッタ、アリエッタ、あんた一体今何歳なのよ~。へたをすれば、三桁まで到達していたりして。


 人魚の肉を食ったという伝説の八百比丘尼ですか!


 あの私を狙った時の力強い剣捌きはまさしく若い女のものだったけれど。侮れないわ、この超獣マリー最大の敵として、あまりに相応し過ぎる!


 アリエッタ、ありえた? ありえない、絶対にありえないわ。その名前すらもすでに詐欺じゃないの。


 私は、もう今までの怒りの全てが消え失せて、全身の力が抜けていってしまうのを感じていました。


 もう、どうでもいいや。他の人達も同様の考えであったとみえて、アリエッタ・ショックはすべてを支配して、栄えある我が国王宮の大ホールはまるでゾンビでも出て来そうな墓場のようなムードになってしまった。


 ひゅううーという虚しい風が、まるで誰かが風魔法でも唱えたかのように、魂が抜けてしまったかのようなご様子のスフレちゃんを撫でつけていった。


 よく見たら唱えているのはハトリでした。どうやら、王国に仕える者としての王太子殿下へのサービスのつもりらしいです。


 あまり嬉しくないサービスだなあ。スフレはおめかしした上着もズルっと半分脱げかけたようになり、心なしか皺になってしまっています。


 国きっての高級品なのに台無しだわ。ネクタイも曲がり、ずれてしまっていて。


 王太子の婚約者、王太子妃として正式に発表されたからには、この超獣マリー自らが直しにいってあげないといけないのでしょうか。


 嫌だ、今は近寄りたくないわ。なんて言ってやったらいいものか。この私こそが、この事態を引き起こした犯人なのですものね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ