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1-34 冒険者マリー誕生

 シナモンは出口までの帰り道を探索しつつ、ダンジョンを遠足中に文句を垂れた。


 まあ帰り道といったって、大きなホールと扉の部分から伸びる一本道しかないので迷う方がどうかしているのですが、たまに試験には合格できても帰れなくて捜索隊を出される人もいるという話でした。


 一体どうやって迷うのか聞いてみたいものですね。うちは隣のホール同士をぶち抜いて、コネクトルームのようになってしまっていますが、それでも迷う要素は欠片もないのですがね。


「もう、真理姉。あんた何をやっているのさ。そういや思い出した。エメラルダス様から言われていたんだ。


『お願いだから、あの子をダンジョンにだけは連れていかないでね』って。今日の事はあの人には内緒にしておかないと僕まで怒られちゃう」


「う、面目次第もございません……」

 やだわ、主としての面子が丸潰れじゃないの。結局、魔物は出現しなかったしねえ。


「ところでシナモン、あんたはちゃんと魔物を狩れたの?」


「うん、倒したんだけど、可哀想だから角とか鱗とか爪とか、そういう証拠になる物だけもらってきた。魔核は取ると魔物は死んじゃうし。結構可愛い奴だったよ。ダンジョンの魔物ってティムできたんだね」


 そんな事を考える奴も、やってのけられる奴も、多分世界であんただけよ。どうやら主従共に同じダンジョン内で明後日の方向を旅していたようです。


「そういや、あんたどこにいたのよ。さっさと助けにきなさいよ」


「多分、試験参加者ごとに場所は区切られているんだと思うよ。おそらく一緒にSランク試験をやること自体が珍しいんだと思うけど。


 倒した魔物がやたらと後ろを気にしていたんで、ぶ厚いダンジョンの壁を土魔法でこじ開けたら、あんたが大ホールの真ん中でタコ踊ってた」


「そうだった。強力な土魔法使い限定で使えるダンジョンでの必殺技よね。それもあって土魔法使いは風魔法使いの次に有用なんだった」


 タコ踊り……。いっそ、あれはオクトパスモードとでも名付けようか。いや大人しく封印しておこう。


 あのような姿を我が親友の、笑い上戸な西宮紫音さんあたりに見られようものなら、三か月くらいは顔を見る度に思い出し爆笑されそうです。


 油断すると仲良しグループでアレを踊りまくり、動画サイトにでもアップされる悲劇になりかねないわ。


「それにさあ、真理姉もあの鍵をもらってきてるんじゃないの?」

「……存在そのものを忘れていたわ」


 だってバーサクモードなんですもの。何もかもが頭の中から蒸発して踊り狂っていましたよ。バブル期の日本のディスコでも、あそこまで踊っちゃいなかっただろうというくらい。


「あ、扉に着いたよ」

 そして、さっさと光って波打つ銀の鏡を潜り抜けていくシナモン。


 やれやれという思いで、くたびれ儲けを共とし、同じく地上への帰還を果たした私。


 座って咥え煙草で出迎えてくれたタコ親父が豪快に笑って訊いてくる。

「おい、どうだった、お前ら」


 それを受けてシナモンはアイテムボックスから、巨大な素材を大量に引っ張り出した。


「はいこれ。エンシェントドラゴンの角・爪・鱗と尻尾。尻尾はまた生えてくるんだってさ。ティムできたけど、大きすぎて連れてこれなかったの」


 思わず沈黙するギルマス。一応、主としては言い訳をしておきました。

「あー、この子は動物好きだから」


「はっはっは、そうだったか、まあいい。シナモン・バニラ・クッキー、Sランク試験合格!


 素材は換金して冒険者証につけておいてやる。こいつは魔道具だから、どこのギルドでも引き出せるぞ。まあ小さいところじゃ金を置いていないから、金を降ろしたい時は王都のギルドに行くんだな」


 まだ冒険者証もないのにSランクになっている十二歳。それに引き換え、我が身の情けなさ。わしゃ、敵わんよ。トホホ、ネタも古いし。


「で、お前は? 超獣」


 まあ、超獣という名には相応しい感じにはタコ踊ってまいりましたがねえ。私が痛い沈黙していると、訝しむギルマスに向かってシナモンが不服そうな顔でこのような事をのたまいました。


「このお姉さんにはSランク試験なんて生温いよ。ギルマス、あんたが悪い。Sランクの魔物が皆ビビって出てこなかったじゃないか。


 この人は、あの世界一の魔法使いと呼ばれた超姫エメラルダスを遥かに凌ぐ怪物なんだからね。


『決してあの者の目をエメラルドに輝かせてはならない』と謳われた彼女に、三つの歳から手を焼かせてきた世界最大級のモンスターなんだよ」


 仮にも主に向かってなんという言い草か!


 しかし、それは的確に当たっているだけに非常に反論しづらいですね。


 両親から受け継いで、まるで品種改良の如くに更に強化された力が増大し、しかも年齢的なものから精神的に制御できなくて暴れていた頃は、眠くなって電池が切れるまで、あの超人夫婦である両親がつきっきりで抑えておかないとなんともならなかったという、この私最大の黒歴史。


「はっはっはっは。そいつは悪かったな。仕方がない、詫びとして超獣マリー、お前もSランク試験合格!」


 あのう……合格させていただけたのは嬉しいのですがね。何故私の場合だけ二つ名で宣言されるのです?


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