1-32 ダンジョンへ
本当に大雑把ですね。はあ、Sランクねえ。単に冒険者資格が欲しかっただけで別にFランクでもよかったんですけど。
あれ? という事は、うちの親もSランクの冒険者だっていうことなのでしょうか? うちに帰ったら聞いてみましょう。
「えーと、いつ出発したらいいの? 」
仕方がない。それでは私も行くとしましょうか。しまいにはマルークが待ちくたびれてしまいそうだし。
「もうしわけないけど、あの虹色蜥蜴の世話は頼むわ。そろそろおやつの時間だし」
「後で金は払えよ」
「はいはい」
なんだか私も投げやりになってきて、まるでシナモンのような返事になってきました。
そして、私はギルマスが開けてくれた扉に手をかけました。
「これって空間魔法のアイテムよね。収納とかに影響でないのかしら」
「そいつは大丈夫だ。こいつも、お前のところにいるドヴェルグが作ったものだから安心しろ。あの親方は元気か」
「親方を知っているの?」
「ああ、あの親方はお前の母親との賭けに負けて従者をしていたのだがな。あやつ、まだ王宮におるのか」
「ぶふうっ。そんな話は初めて聞いたわよ~。出ていくどころか、むしろ弟子まで取って数を大幅に増やしているくらいなんだけど」
「あっはっはは。そうだったか。あいつ、あの親方が唯一の嫁入り道具だとか言って豪快に笑っていたがな」
マ、マジですか。今初めて知る驚愕の事実。まあ、あの爺ちゃんの作でしたら何も問題ないわね。
「じゃあ、いってきます」
「おう、いってらっしゃい」
まるで、ちょっとそこまでお使いにいってこいみたいな軽いノリでダンジョンへ送り出されてしまいました。
アイテムボックス早着替えで、少し重装備に交換してあります。相手はSランク。魔法で全部片付いてしまえばいいのですけどね。
魔法耐性が強い魔物の場合はそれでは駄目ですし。私はアイテムボックスからベスマギルの長剣を取り出しました。
こいつは魔法の杖代わりにもできる優れものです。強力な魔法剣も使えますしね。やれやれ、まさかこんな真似をしなくてはならないとは、公爵令嬢も楽じゃないですわ。
そして私は空間魔法でダンジョンに繋がれた扉を潜りました。
特に問題はなく着いたその場所は薄明るいドーム状になっていました。高さは百メートルくらいでしょうか。
表面から光が溢れているのか、全体的に照らされているようです。すぐ後ろには扉ではなくて、例の水銀状の光の物質化したかのような鏡面が波打っていました。
多分、さっきもらってきたキーを使用すると、これと同じ物を任意で創り出し、そこを通って地上へ戻れるようになっているのでしょう。
「さあて、何を仕留めたらいいのでしょうかね」
決まった種類の魔物が出現してくるのか、それともランダムでいろいろな種類の魔物が湧いてくるのか、あるいは纏めて出現してくる場合などもあるものなのか。
もう少し話を聞いてくればよかったなどと思ったのですが、もはや後の祭りでした。
そして、ゆっくりと歩きます。反対側にも通路があるようで、どこかに通じているのでしょうか。
どこかへ飛ばされてしまう空間トラップなんかを発動させてしまうと厳しいのですが。まさか、このような事になるとは思っていなかったので、プリン達には何も言ってこなかったですからね。
直径二百メートルはありそうなドームを横切ってみましたが、何も出てきません。
「ははあ、ここは高ランク魔物、おそらくはSランク魔物しか湧かないから他の魔物が出てこないんだな。そして、これだけここが広いということは」
そう獲物が言うのを出待ちしていたとでもいうように、そいつは湧いて出た。壁の中から。昔の特撮の怪獣や宇宙船か、アニメのロボットみたいな感じに岩を崩して出てきた、そいつ。
『巨人族の魔物』のようです。絵本や神話の物語などに登場しそうな代物です。
ただし、ビジュアル的には優雅な人型ではなく、武骨で怪物っぽいフォルムをダンジョンの灯りに照らし出している姿はなんともいえない迫力というか、情緒が溢れています。
これはまたシナモンが喜びそうなタイプですね。あの子もこれに当たっているとよいのですが。
鑑定してみると、しっかりとSランクでした。あのギルマスも、機械操作の腕はいいようです。
「こいつに魔法は効くのかしらね」
試しに軽くざっと炙ってみる事にします。炎系や爆発系であまり派手にやらかすと、こっちにまで被害が出そうですので。
「フレア」
ノーマルのフレアを軽くぶち込んでみましたが、軽く表面が焦げただけのようです。
魔力でガードしているのかもしれません。あいつもダンジョンから力を受けているはずなので、その手の防御力は強力そうです。
これはまた戦いが膠着しそうなタイプですね。
本日は忙しい予定なのですけれど、こうなったら仕方がないです。少し粗っぽくやるといたしますか。持って帰る素材がかなり減ってしまうかもしれませんね。




