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1-25 こいつに決めた

「でも、もしかしたらこいつも勝手に出しちゃ駄目なのかもしれないわ。何せ、簡単に強力な火を起こせちゃうと街にだって簡単に火を付けられちゃうわけだし。


 これもうちの親に相談してからでないと出したら駄目な商品かも。こいつは、まだ見せてない商品なんだよね」


 日本じゃ何でもないような商品なんですけどね。ほら百均にもたくさん並んでいますし。


「マリー、そんな事を言っていたら出せる物が無くなっちゃうじゃない。マリーが作らせる物って、お蔵入りになるケースが凄くあるよね」


 むすっとした顔で少し拗ねたシナモンがホッペを可愛く膨らませた。


 あー、わかるわ。あのハンドスピナーを商品として出したかったのね。もっといっぱいのお友達とアレで遊びたかったのか。


 帰ったらドヴェルグの親方達と遊びなさいな。シナモンったら親方からはマブダチ認定だそうだから。


 あの偏屈なドヴェルグを相手にそれがどれだけ凄い事なのか、この子はあまりよく考えていないようなのですが。


 本当に普通にお友達のノリで付き合っているだけなので。それがまた親方からすれば、大のお気に入りという事のようです。


 あの人(人じゃないけど)は、製品欲しさに作りエセ笑いを浮かべてすり寄ってくる商人とか大嫌いなのですから。


「まあ、そうなんだけどさあ」

 うーん、出してもそう問題にならないものかあ。案外と難しいな。


 消費されて再購入してくれる食い物なんかなら、値段も安い事だし無難かもしれません。


 軍用の携行食にならないような物という条件で。敵国の兵站に利するような物は絶対に駄目、特にマンジール王国に生産技術を持っていかれたりしたら非常に最悪よ。


 何にするか決めかねていたのですが、ふっと私の目に留まった物がありました。


「あー、これなら無難だし、他にない商品なんだから、いいんじゃないのかなあ。安い食べ物なのだから、他の商人からの風当たりもそう強くなさそうだし」


 そして私が取り出したものは。


 いわゆる『携行食料』でした。軍用に使えない事もないのですが、これは超大量に出さないのであれば、技術的な観点から言えば、実はそう問題はないものです。


「へえ」

 珍しく感心したような声のシナモンが手に取って、それを矯めつ眇めつ眺めています。


 地球の製品っぽい感じの派手で綺麗な包装に仕上げてありますから、彼の興味を引いたのでしょう。


「これは?」

 プリンさんも不思議そうに見ています。


 地球の製品を模していますので見慣れないパッケージでしょうね。これはまだ、シナモンにも食べさせていません。


 今持っているのは試作品というか、試供品のようなものですね。保存用の外部容器に包むので、これもドヴェルグの力を借りました。


 なんというか、マラソンや自転車競技などで栄養補給に使う物ですね。実は外装フィルムのように見えるものは、『マジックフィルム』です。


 一種の包装魔法で包んであるのです。何故かというと、この世界の人はきちんとゴミの処理をしないでしょうから、こんな物を売るとあたりがゴミだらけになってしまいますので。


 一見すると手触りまでもがリアルなプラスチック包装にしか思えない封を切って、しばらくすると魔法が分解して跡形もなく消えてしまいます。


 ちなみに状態保存の魔法がかかっていますので、中身自体は封さえ切らねば大変長持ちいたします。


 これは他国で簡単に作れる技術ではないため、父からは販売の許可をもらってあります。


 味も数種類あり、そう簡単には飽きさせないようになっています。味は評判を見て、種類を変えていってもいいですしね。


「これを生産して渡しましょう。もう生産設備自体はできているのよ。あなたの店用に渡すだけなので、卸値は友好価格でいいわよ。後で王都から生産出来次第に配達させるわ。ハトリ、いるかしら」


「はいはい、いますよ」


 なんと、すぐ傍の壁に張り付いて迷彩の布で隠れていました。うーん、こんなチャチなものでも案外とわからない物ですね。


 そこにいると思えば、すぐに見破られるレベルのお粗末な物なのですが、こいつは気配を消すのが凄く上手いので。まるで忍者みたいな子です。


「ちょっと王都のドヴェルグの親方のところまでおつかいに行ってちょうだい。今書状を書きつけるわ」


 私はさっと書状をしたため、彼女に渡しました。万年筆を作ってもらってあるのです。


 全部吸い上げ式で、便利なプラスチックのカートリッジ式でないのが残念ですが、何本か収納に入れてありますので大変便利です。


「私は姫様の見張りの役目なのですが、なんだか最近は姫様の部下のような扱いになっていませんか?」


「もう、間諜なんだから、そう細かい事は気にしないのよ。今、王宮関係者で自由に動いてもらえるのはあんたしかいないんだから、それは仕方がないじゃないの。


 今度、また美味しい物をいっぱい食べさせてあげるから頑張ってちょうだい」


「はーい」

 結構、この子は美味しい物に目がないので、食い物で釣れますので大変に使い勝手がよいのです。


 何しろ、原料さえあれば私はこの世界に本来はないようなご馳走まで用意できるのですからね。


 さすがに彼女にはシナモンの小僧のように自分の転生者としての秘密までは教えませんけど。あちこちに報告されてしまうと非常に面倒な事になりますので。


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