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1-23 ババロア商会

 着いた先の商会は、小さくてなんというか、はっきり言えばボロでした。なんていうのでしょうか。商会というよりは、はっきり言って、ただの商店ですね。


 日本でいえば、限りなく昔の駄菓子屋さんに近い雰囲気のような。スペース自体はもうちょっと広いのですが。それに住居がくっついている感じです。もう完全な個人商店そのものですね。


「お店は何をやっていたの?」

「はあ、なんていうか、万事屋みたいな感じで。まあ、どこの街にもあるお店です」


 ははあ、日本の少し田舎の地方で見受けられるような、完全なフランチャイズっていう感じではない自由な雰囲気の緩いコンビニ・フランチャイズの店のような雰囲気が漂っています。


 しかも超零細の。多分、この世界だと、さして特色のないようなスタイルで。はっきり言って、あまり儲かってなかっただろうな。


 そして、少し嫌な予感がしたので聞いてみました。

「ねえ、ご両親はどうして亡くなられたの? 差支えなかったなら聞かせてもらえないかしら」


「事故です。王都まで行く途中で。でも、よくない噂が流れていました。ここにエロマンガ商会という人達が来て、あまりよくない条件でいろんなお店を傘下にしようとしていて、断った人達が不審な死を遂げる事が相次いで。うちもそうだったんです」


 そう言って肩を落とし項垂れた彼女。おのれ、エロマンガ家! メラっ。思わず周囲の大気が揺らいだかと思うような魔力の放射を抑えきれません。連中、ここにもいたか。


「キュ、キュイ~」

 またしてもマルークが怯えて、今度はプリンの後ろに隠れガタガタ震えています。


 あらやだ。やっぱり、この子達って何らかの形で魔力の放射が視えるのかしらね。


 昔、ゴブリンキングを討伐した時も、このような雰囲気で怯えていましたし。まあ、あれは遠慮なくそのまま討伐して、貴重なお小遣いになっていただいたのですが。


 あの頃は、まだほんのお子様でしたので、お小遣いは大変有意義に使わせていただきました。


 もっぱら必要な装備を発注するのに使ったのですよ。次回の戦闘への投資としてね。まるでリアルなRPGゲームみたいな幼少時代でしたわ。


「そう、大変だったわね」

 彼女は軽く溜息を吐いて、年季の入ったお店を眺めながら悲しそうな顔で答えた。


「今も大変です。これから弟と二人で食べていけるかしら。なんとか王都まで行って、中古の馬車と仕入れの品物を手に入れたのですが、これも全部借金だし。


 冒険者なんて雇えるようなお金はないから、次の仕入れはどうしよう。他にできる事もないし。本当はお店もあれこれと直さないといけないんだけど」


 うーん、こういう時はどうするのか。まあ、ちょっとやってみましょうか。


「それではまず、ちょっとお店を修理してみましょうか」

「ええっ、あなたが?」


「ええ、試してみたい魔法があるのだけれど」

「魔法……ですか」


「ええ、魔法です。シナモン、お手伝いしなさい」

「はーい」


 馬達とすっかり仲良くなって、かなり馬臭くなったシナモンが駆けてきたので、カウンターの消臭魔法で迎撃しました。


 あれ本当に匂うのよ。ちょっと馬とじゃれていると、あっという間に馬臭小僧うまくさこぞうの出来上がりです。本人はいい匂いだと思っていそうなのですが。


「うわ、これ御化粧臭いからやめてよ」

「これは化粧品じゃなくて消臭剤の香りよ」


 不思議な事に、魔法であるにも関わらず、そういう物まで再現できています。何か分子に作用しちゃってるんでしょうかね。


「僕、これあんまり好きじゃないなあ」

「おだまり! だったら馬臭くならないの」


「はいはい、尾田真理様」

 ああ、しまった。つい、口癖で言っちゃうのよねえ、これ。懐かしいのもあるのだけれど。


「じゃあ、あの魔法を試すわよ」

「どれだっけ」


「ふふ、分子結合再生よ」

 この世界では基本的に、私にしか理解できない用語ですわね。


「うーん、分子ってよくわからないな」


「まあ物を細かく分けていくと、小さい粒々になるって事ね。長い間にその結びつきが弱くなっていくから、それを元のように強くしてあげるだけなの。あんたなら簡単にできるわよ、この天才魔法少年」


 そして、お手本を見せてあげました。店の表の板張りの上の、半ば朽ちかけていた梁が、みるみるうちに張りと艶を取り戻し、ピーンっと新品の木材のように変わっていきます。


「へーえ、そんな感じかあ。どれ」

 そして、これまた憎らしいくらいに、あっさりと魔法をマスターして正面の板張りを新品同様に変えていくシナモン。


 建物の部材はみるみるうちに往年の強度を取り戻していきます。やっぱり、この子は掛け値なしの天才だわ。


 残念ながら、経年劣化はなんとかなったけれども、風雨に晒されて傷んで削れてしまった部分や、壊れて欠損していた板は戻りませんでした。


 こいつは日曜大工の出番かしらね。どうせ、男の子達がやりたがるでしょうから、連中に任せておきますわ。うっかりと壊したら、シナモンあんたが何とかしなさい。


 家中を処理したお次は、染み込んだ汚れの結合を解く異物結合解除、『蒸着』の魔法で剥がれた塗料や壁土などを細かく綺麗に吹き付け焼き付けます。


 タイルの目地なども汚れ分離の魔法と厚め蒸着でなんとかしました。この世界、気をつけないとすぐにこういう汚損部分だらけになってしまいますので、一応この手の魔法は常備してございます。


 あとは安い材料費だけで、なんとか見栄えはよくなるでしょう。


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