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1-20 新しい仲間?

「ねえ、君。別に怖くないからさー」


 地上に置かれた、長細い瓜型の透明なバブルプリズンの前で小坊主が必死に蜥蜴ちゃんに話しかけています。


「ふふ。こんな小僧にビビっているとは、この蜥蜴も見掛け倒しですわね。ハッ、まさかこの子ってば、この私を怖がっているのでは」


 超獣マリーの異名をとる私としては十分に有り得る話なので困ったものです。まあ、そいつの調教はシナモンに任せておくとして、私は馬車に向かって呼びかけました。


「出ていらっしゃい、蜥蜴はもう捕まえましたわ。私達は別に怪しいものではありません」


 馬車の窓から、おそるおそる顔を出したのは、なんとまだ少年少女の二人でした。


 お姉さんと弟かな。よく考えたら、こっちも年の頃や組合せも同じなのですが。うちのは弟ではなくて従者ですけどね。


「あのう、もう大丈夫なんですか?」

「あの大きな蜥蜴……捕まえたの⁇」


 ビビって窓枠にしがみつき腰の引けているお姉さんと、若干不思議そうにしている男の子。


 まあ、弟君が大きな蜥蜴とかを庭で捕まえてくれば、お姉さんは悲鳴を上げますわね。猫ちゃんなんかもよくやってのけるわけですが。


 同級生の家の子は、蛇が大好物でした。別に食べたりはしないのですがね。大好きな飼い主さん(女の子)への貢ぎ物ですわ。


 飼い主を自分の子供だと思って狩りを教えているんだという説もありますが、いずれにせよ、朝起きると枕元に蛇の死骸がある事には違いはないので。


 男の子は、大丈夫そうだとわかるとシナモンのところへ走っていき、一緒に見物しています。本当に男の子ってもう。さっきまで自分がそいつに喰われかけていたというのに。


「ああ、大丈夫ですよ。それに、あの魔物は食べられる種類の物のようですし」


 鑑定したら『レインボーリザード。食用可・大変美味』とありました。自然界の掟は厳しいです。ご馳走だと思って獲物を襲ったら逆に狩られてしまうなんて事は珍しくありません。


 不敵にもサバンナ最強の生物である河馬を襲ったライオンの末路とでもいいますか。草食動物だって後ろ足でライオンを蹴り殺したりする事もあります。


 すると、それをシナモンが聞きつけて、慌てて叫びます。


「駄目ー、この子は食べちゃ駄目ー。きっと希少な生き物なんだよ。こんなに綺麗なんだしさ。レッドデータブックに載っている絶滅危惧種なのに違いない!」


 どうも、この子には地球の知識を与え過ぎたような気がしますね。こういう時には、なるべく私のいた世界のたとえで説得を試みようとします。まあ可愛いものなのですが。


「はいはい、食べませんよ。私、蜥蜴の肉はあまり好きじゃないのよ」


 蜥蜴も心なしか体を丸めて縮こまっている気がしますね。そんなに私が恐ろしいですか?


 魔物とか野生の動物は私の可愛らしい見かけに騙されてくれません。猛獣を見るような目で見られます。


 人間とは見えているものが違うのかもしれません。逆に人慣れしているロバなんかは全然気にしないのですがね。


 そこにいる馬も嘶き一つしないです。疲れ切っているせいもあるのでしょうが。


 そして、今のやり取りでなんとなく蜥蜴君がシナモンを見る目が少し和らいだような気がします。やっぱり自分を庇ってくれているのが本能的にわかるのでしょうかね。


「ねえ、この子の名前を決めたよ。丸くなる癖があるんだ。マルーク!」


 すると蜥蜴が可愛らしくキュピーっと鳴きました。あ、返事したね。ティムに成功したのかしら。


 もう男の子って本当に爬虫類が好きよね。蛇なんて案外と人によく慣れて、意外に女性にも受けがよかったりするのですが。


 私なんかだと朝起きる時、蛇に起こされたりするのは嬉しくなかったりします。


 魔物を手名付ける時には名前を付けると主従関係が決まるようなのです。かくいう私もシナモンのミドルネームのバニラはわたしがつけてやったのですが。


 この子は手に負えない悪餓鬼でしたので、少し甘い成分を添加しようと思って。甘いのは名前だけなのですけどね。そのあたりは私もあまり人の事は言えませんが。


 そしてバブルプリズンは解除され、のっそりと蜥蜴が歩いて虜囚だった場所から這い出てきました。


「きゃああー」

 それを見て、たちまち悲鳴を上げるお姉さん。


 まあクロコダイル並みに凶悪な魔物と柵や檻抜きで遭遇したらね。魔物は大鰐よりも凶悪なのです。


 鰐って案外とのんびりしてますからね。魔物は人間を見ると『魔物まっしぐら』って感じで突っ込んできますから。


「大丈夫。もう襲わないから。ね!」

 クエーと可愛く鳴いて伏せの姿勢をする蜥蜴ちゃん。


 うちの子はテイマーとしての才能もあるようです。あれは動物好きな人がなる職業かもしれません。


 気をつけないと、この子の事ですので、今度から次々と王宮に動物を連れ込みそうな気がしますので用心しないと。


 あの蛙の集団は煩すぎるので絶対に駄目です。怒られるのは私なんですからね。


 まだ躾の行き届いたドラゴンの方がマシです。空を飛べる奴なら欲しいのですが、それもまた行先で騒ぎになりそうで。


 おっかなびっくりで悲鳴を上げて馬車の中に駆け込んで隠れるお姉さんと、興味津々な様子でガン見している弟君。


「ところで、まだ名前を聞いていなかったんだけど」

 馬車の中からおそるおそる顔を目まで出して答えるお姉さん。


「あ、ババロア商会のプリン・アラモードです。そっちは弟のプディンです。助けてくれてありがとうございました」


「そう、私はマリーよ。彼はシナモン」

 紹介は突っ込まれないように、さりげなくね。


 公爵令嬢が何故こんなところで、とか言われたくないだけなのです。婚約破棄などの話は別に構わないのですが、御令嬢が悪党を締めるのに国中回っているというのは、さすがに外聞が悪くてね~。


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