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1-14 超獣の起源

「お姉ちゃんって、本当はお姫様だったのねー」

 姫という単語に激しく反応したアニーちゃんがキラキラした目で見上げてくれる。


 うっ、その純粋な尊敬の視線が、体が灰になりそうなほど眩しいわ。


 この子にだけは絶対に、私の忌まわしい二つ名達、『超獣マリー』だの『ブラッディ・マリー』だの『鋼鉄のマリー』だのは聞かせられませんね。


 この子にそれを囁くような馬鹿がいたら、フレア・ウルトラだのフレイムバーストなどの爆炎魔法を用い、そやつらの方を灰にしてしまいましょう。


「まあ、姫といっても公爵家の姫なのですがね。我が国は現在王女様がいないので、割とその代用にされてきたところはあるのですが。生まれた時から王宮住まいですしね」


「マリー姫様、本当にありがとうございました。お陰様で借金も無くなりましたので、娘と二人、この先なんとかやっていけそうです。


 それにしても、このような陋屋ろうおくにお姫様を泊めてしまって。おまけに食べ物まで頂いて」


「いえいえ、どこだって住めば都ですよ。それに、あのような輩達が弥漫びまんするような事になっているのは我が王国の不手際なのですから。帰ったら、またあちこち締めてまいりますので」


 いや本当、冗談抜きで。今回のあの変態代官のような悪徳な連中のお蔭で、あのにっくきエロマンガ家の跳梁跋扈を許してしまったのですからね! お蔭で私もこのザマなのですから。


「ほほ、頼もしい事ですわ。マリー様、是非とも王太子妃候補に返り咲いてくださいね」

「もちろんですわ」


 何しろ私たちの結婚には、あの少々頼りないスフレに『副官』として私をつけるという意味合いも持っているのですから。


 その言葉は当のスフレ坊ちゃんの御両親から常々言われてきている事なので。


 それにも拘わらず今回はエロマンガ家にまんまと出し抜かれて、その国王夫妻(将来の義父母)からの信頼に少し泥を塗ってしまいました。


 それがまた私の怒りに燃料を注ぐ格好になっているのです。


「お姫様、もう行っちゃうのー」


「ええ、王国に使いを出してしまったので、居所はバレましたので。国王陛下は笑って頑張れと言ってくれるでしょうが、のこのこ家に連れ戻されたりすると、お母様の説教が待っていますからね」


「そっかあ。お姫様だってお母さんに怒られるのは嫌だもんね」


「ま、まあ、私も成人しましたからね。この歳で、碌でもない事で母親に叱られているのもなんですので。まあ、世直しの最中という事で多めに見てもらいたいものです」


「じゃあねー、マリー姫様」

「ええ、アニーも元気でね」


 まあ、あの人(母)はちょっと特別なのですが。人と呼ぶのもはばかられるほど、常人離れしていますので。


 元は平民の冒険者でしたが、若いにも拘わらず超高名な圧倒的な冒険者でありましたので。


 特に魔法の才は『三国一の魔法使い』とまで謳われたものだったそうです。普通は花嫁とかに使われる表現だと思うのですがね。


 しかも、その美貌は諸国に鳴り響いていたと。求愛者は後を絶たず、そのたびにあっさりと『仕留められて』いたそうです。


 ついた仇名が『プリティ・マンハンター』だそうで、人聞きの悪さは私の比ではありません。


 うちの父上も一目見てやられてしまったそうで、さっそく父の方から『戦いを挑んだ』そうです。


 夫婦揃って一体何を考えているものやら。実の親子でもわかりあえない事って多いと思うのです。


 結局、戦いを通じて二人はわかり合い、心から愛し合うようになったそうです。それは『伝説』として今も諸国で物語として書物となり、吟遊詩人に謳われる人気のお話となりました。


 さらに酷い事に、あの恥知らずな夫婦は、その伝説を舞台化する企画が建てられた時に『立候補して』自分の役を演じました。


 おまけに熱が入り過ぎて舞台を壊し、一日で興行中止に追い込まれたようです。


 幼かった私にはその当時の記憶はないのですが、その時幼かった私も乱入していたようで、それが超獣マリーのデビュー戦だったようです。


 ちなみにその仇名をつけてくれたのが母でした。幼い私を舞台に上がらせたのも、あの人だったようですし。よほど娘の自慢をしたかったようなのです。


 父曰く、「あれは元々はしゃいだお前が魔法を使って暴れまくるので、それを抑えようとした結果の事でなァ。八割方お前の仕業だったぞ」だそうですが。


 あれもまた伝説の一つとして諸国で語り継がれているそうです。よかったですわ、他の国へ嫁ぐ予定がなくて。


『三国一の恐怖の花嫁』として恐れられながらの御輿入れはちょっとね。


 うちの母親は、これまた諸国で噂になるほどに今も当時と変わらぬ美しさを備える化け物なので、あの二人今でもラブラブで、実の娘が時折吐き気を催す事があるくらいです。


 せめて、その美貌を長く保てる才も、この私に遺伝してくれているとありがたいのですがね。


 まあ、お陰様で魔法の才に長け、人並みはずれた美貌も兼ね備えた美少女に成長できましたので文句はないのですが。


 私の『おいた』の数々は、あの母親からの遺伝であるのは間違いなく、また父親の方も剣技・格闘などは天才的で、それもまた受け継いでいるので。要は両方の各種ヤバイ資質のハイブリッドが私と言う結晶ですね。


 それがまた王家の血筋に還元されようとしているのですから、我が国に意趣を持つ国は是非とも私の王太子との結婚を阻止したいことでしょう。


 でもね、マンジール王国よ。そのような真似をされて私が黙っているとでも思ったのですか?


 この私には、史上最強の魔法使い『超姫エメラルダス』と超イケメン筋肉公爵『超人ヘラクレス』の圧倒的な力がそのまま受け継がれているのですから。


 何故この二人だけ格好いい名前なのか。私の名前も意外と普通っぽいですが、前世の世界にはそういう名前のお菓子があってですね。


 私ばかりが勇猛な資質を集中して受け継いでいるために、うちの跡継ぎの弟など拗ねまくっています。


 その代わりに、彼は他の家族にはないような素晴らしい頭脳を持ち合わせているのですが。


 今もうちの王都の王侯貴族が通う王立学園ではなく、他国の名門で才ある者しか入学できない特別な学園の寄宿舎にいます。


 王侯貴族でも資質を認められなくては入れない学校ですので、王立学園などとは逆に『王侯貴族がいると珍しがられる』とまで言われるほどの名門校なのです。


 おまけに特に母親似で女顔の美少年ですからモテるし、やっかまれるようで。


 ですが、彼には「なんで、男の僕じゃあなくって、姉上がそんなに強いのですか。ずるーい」と毎回顔を合わせる度に言われます。


 そんな事を私に言われても困るのですが。うちの弟は、あれでも十分な剣や魔法の才は持っているので、へたに絡んだりすると大変な事になります。


 そのような学校へ行けない無能物の貴族家の人間などは、彼の才能に嫉妬して帰国するたびに頻繁に絡んでくるほどです。だが、その度に彼はこのように言い返すそうです。


「ふざけるな。それを言うなら、うちの姉上『超獣マリー』に挑戦してから物を言え。世界が変わるぞ、お前らのそれまでの人生全てが変わってしまうだろうから」


 我が親愛なる弟、ホイップ・カスタード・エクレーア君。お友達に姉の名前を紹介する時に『二つ名』を使うのはおやめなさい。


 それ、一番人聞きの悪い、私が切れまくっている状態を差す奴ですから。


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