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1-11 家宅捜索の時間

「えー代官様、それでですね……」

「まあまあ、ここは一つお茶でもいかがですか」


 彼はわたしが話しかけても意にも介さず、お茶を勧めてきます。もう、なんとなくわかります。彼は別に私達を煙に巻こうと思っているのではなく、多分『口説きたい』のだと。


 いかにもといった名前を見るからに、もしかしたら本当に両刀使いの変態なのかもしれません。本当にこの世界の名前って!


 貴族とか、このような役職付きのような人の中には美少年好きな方も結構いらしてですね、ああゴホゴホ。


 我がビスコッティ王国は野暮な事は言わない自由な気風でありまして。少し危ないネタになってきましたので、話を先に進めましょう。


「真理姉、例の奴は持っているよね」

「もちろん」


 この子の言う例の奴というのは、毒などを中和してくれる特殊な回復魔道具です。


 どうやら、この場面で一番警戒しないといけないのは、眠らされてベッドへ引きずり込まれてしまう事のようですので。


 そして先ほどの男性が持ってきてくれたお茶のポットから、後ろ向きになった代官が自ら入れてくれ、勧めてくれた。もう怪しさ200%のシチュエーションですわね。


「いや、このお茶は美味しいんですよね。私の血族の領地で採れる物でして」


「そうでしたか、それは素晴らしいですわね。まあ本当にいい香り」


 そして自慢げに勧めてくれるお茶を、私が話しかけて気を引いているうちに、彼のお茶と私のお茶をまるでイカサマ賭博の如くに、さっと気づかれないようにすり替えるシナモン。


 相変わらず凄腕です。そして、じーっと代官の様子を観察しています。シナモンは万が一に備えてお茶には口をつけません。


 その様子を少し気にしたようで、チラチラ見ている代官。その様子を見ると、女好きと見せかけて、むしろシナモンがメインターゲットだったのかしら⁇


 やはり、この男は……。女好きの上に重度のホモ?


 そして、やはり一服盛っていたとみえて、だらしなく、ぐうーと寝てしまった男。


「やれやれ。やっぱり禄でもない男だわね」

 調べてみると、ポットの置かれているテーブルの引出しに眠り薬と思われる物がゴッソリと入っていた。


「はい、没収」

「これからどうする? 真理姉」


「この男、しばらく目を覚まさないでしょう。今まで何人を毒牙にかけてきたものやら。さっ、今の内に何か証拠がないかどうか、この館を調べましょ」


「わーい、探検だね」

 いかにもそういう年頃の男の子らしく大喜びするシナモン。


 小さい頃は仲間の浮浪児どもと一緒にやりたい放題でしたものね。うちへ来てからは、私やフロート達と一緒にやりたい放題だったのですが。


 あれこれと、あちこちをさばくり返すのは悪戯小僧に任せて、私は書類関係を捜す事にします。


 このさほど広くはない館には、おそらくあの男性以外はいないと思うので、彼と鉢合わせないようにスキルを駆使してと。そして索敵魔法を放ったのですが。


「あら。彼は、もうここにいないのね。ああ、はーん、なるほど」


 これから始める予定の素敵タイムに彼は『お邪魔』なので人払いしたな。きっと彼の方も手慣れたもので、首を竦めて出ていったのでしょう。


 だから私達を先に追い返そうとしてくれたのね。まあ、残念主人のお楽しみの邪魔をしないように、しばらくは帰ってこないとみた。美少女と美少年の両方のお相手ですものね。


 そして出るわ、出るわ。隠蔽工作すらしておらず、エロマンガ家との約定のような物がゴロゴロと。


 賄賂のお約束、素敵なお嬢様を寄越してもらう約束、また先方が望む内容も文書で。お互い裏切らないように、互いが要求する内容の書類の控えを持ち、保存していました。


 まあ白を切られないように持っているだろうなとは思っていたけれど、隠すつもりなど欠片もないようです。


 もしかして、代官の当然の役得とか思っているのかもしれませんわね。


 まあそういう事は我が国で幾らでも横行しており、王国としても今更その一つ一つを咎めだてするなど本来はありえないのですが、相手があの連中の場合は問題となります。


 するとシナモンが戻って来たので一応は戦果を聞いてあげます。にこにことしていて、いかにもという感じの『聞いてほしいオーラ』を放ちまくっています。


「ふふ、こちらは見事に証拠を押さえたわよ。そっちはどう?」


 すると、彼はにこにこと超美少年スマイルを私に向けてきます。


 その辺の美少年好きなマダムなんかに向けられたのであるならば、それはもうイチコロで落ちる素敵な笑顔ですが、私は絶対に騙されませんので心の準備をします。


 こういう時に、この子は絶対に碌な事をしてこないもので。そして彼は満面の悪戯な笑顔で数々の戦利品を見せてくれました。


「じゃあん、見て見て見て」

「こ、こ、これは~‼」


 それは、この私が思わず赤面してしまうほどにアダルティな品物、しかもかなりマニアックで、そのすべてが特注品ではないかという品々だったのです。


 煽情的で露出が半端ではない、裸なんかよりもよほどエロい、ピンク色や黒などのスペシャル過激なエロ・ナイトウエアの数々。そして、お楽しみのための『お道具達』の各種。


「うーん、この世界にもこのように様々なこの手の品があったとは……」

「ねえねえ、真理姉。これ何の道具ー。僕子供だからわかんないや」


 そう言って彼は手に、けして子供が持ってはいけないような道具を持っていました。しかも魔道具なので、うにょうにょと動いているではないですか!


「このう」

 私は久しぶりに、この悪戯坊主を追い回し、少しばかり汗をかいていたのでした。


 今頃は、あの代官も私やバニラを相手に違う汗をかいている夢でも見ているのでしょうか。


 そう考えてしまうと、あのまま代官を平和に寝かせておくのにも少々抵抗がありますね。証拠も無事に押収した事ですし、もう叩き起こすとしましょう。


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