目が覚めたら幼女に転生してたんだが、
……真っ暗だ
何も見えやしない
本当に何処なんだろう
そんなことを教えてくれる人なんて闇の中には
誰一人として居ない
……「俺」は、何だ、?
誰だ?
思い出せない
曖昧になっていく
「いらっしゃい」
遠くから微かに声が聞こえた
もちろん、ここにいる青年の声ではなく
幼女の声
「待ってたんだよ?…お兄ちゃん」
さらに聞こえてくる
妹なんて居ない
青年は、静かに闇の中に堕ちて行った
再び目を開いた時、さっきの闇なんかは何処にもなく
あるのは幾多もの森があった
「朝なのか、」
この世界は朝なのか、夜なのかさっぱり
分からなかったが
景色が良く見えていた
瞳に映ったのは1面の蒼だった
それが空だと気づいたのは5秒くらいだってからだった
綺麗だった
「水分を取らないとな」
小川を探した
自分の顔を見てみた彼は言葉を失った
水面の中には黒髪ロングの幼女が居た
「なんで小さい子が水の中にいるんだ?」
と、呟いたが水の中の彼女も口を動かした
恐る恐る体を触ってみると
転生前は明らかになかったものがあった
それをぷにぷにと触ってみた
「こんな感触なのか、」
男にあるはずのものが、
無くなっていた
まさか、俺、女になったのか?
どうりで声が少し高かったわけだ
転生する前はうっすらと覚えていた
彼は、御剣龍我という18歳の引きこもりの青年だった
そこまでは分かるのだが
どうしてここに来たのかも分からない
『いらっしゃい』
この声の主を探すことにしよう
「ねぇねぇ!…」
後ろから知らない女の子の声がする
振り返ると
「君って、この村の人?…見慣れないね」
ピンク髪ツインテールにピンクのワンピース
猫耳を付けた美少女が立っていた
「気づいたらここにいたんです」
これで伝わるか迷ったが
「そうだったんだー、君の名前を教えてほしいな!…ボクはリリィ!」
何とかなったようだ
それにしてもボクっ娘か、
「リューナです、…」
龍我だからリューナなんて安直すぎるのか
「リューナちゃんか!…いきなりだけどー、ボク達とパーティを組んで欲しいんだ!」
リリィの他に居たのか
てっきりソロプレイヤーだと思ってたが
「パーティを組むことは構わないのですが、どうしてですか?」
「吸血幼女…フレイマーを殺さなければみんなが不幸になる…だから協力して欲しい」
至って真剣そのものだった
「その幼女にあったらどうなるんだ」
口調が変わったが聞いてみる
「逃げても追ってくる…ってことは伝えておくよ…」
フレイマーは吸血鬼
それ故に血を貪る
それ故に目が赤い
それ故に体が幼い
それ故に髪が黒い
見たものを魅了させることが出来る
そして血を吸われてしまったものは最期
彼女の眷属になってしまうという
「俺」は高揚していた
元々黒目で濃いめの隈だった瞳は
紅く染まっていた
「惨殺してやろうぜ」
これは平凡な男子高校生が異世界で幼女の吸血鬼に転生した怪奇譚である