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転生は無理

―― 我はナロウ神。魂の慟哭に応えるモノ。我を呼びしは、汝ぞ。


パソコンの画面からジジイが浮かび上がってきた。

なんだか、南天堂3〇Sみたいだ。俺のPCって横にツマミでもあったっけ?


「ふうっ…」


どうやら、俺の「なろうぜ小説」に対する熱き情熱が神を呼び出してしまったらしい。


―― いや、妹とか幼馴染とか彼女が欲しいと申しておっただろう?それよ。


えっ、そうなの?


―― 妹と彼女を同列に置くあたり業が深いのぉ。その業の深さが我を呼び出したのよ。


いや、義妹ですぞ。再婚した両親の母方が連れてきた……


―― 連れてきたのを母親にする辺り、あわよくば母親も狙っておるのだろうて。


ソンナコトナイデスヨ


―― ゲームのやりすぎじゃな。ゲーム脳というものは真に恐ろしいものよのう。


「違うから、それ。で、何の用よ。妹とか幼馴染とか彼女とかくれるの?」


―― 我はナロウ神という。最近「なろうぜ小説」というものが流行っておろう?

   あれでマイナー神であった我の神格もぐっと上がってのう。

   こうやって限定的にじゃが、顕現出来るようになったのよ。


「えっ、なろうぜ小説の神様ですか?いつもお世話になっております」


やべえ、なろうぜ小説の神様だよ。運営よりもエライ人だよ。


―― いや……勘違いしておるようで悪いが、なろうぜ小説の神ではないぞ。

   我はナロウ神。魂の慟哭に応えるモノにして、願わぬ願いを司るもの。


3〇Sの立体映像がかっこよさげなポーズを決めているけど、何言っているか良く分からん。

つまりは何しに来たんだ?


―― なろうぜ小説の神ではないが、関係はあっての。

   ほら、ナロウとなろうぜと似ておろう?

   じゃからの。なろうぜ小説の人気が高まると、たまに我にも神気が集まる

   のよ。人気は神気って言うての。これが集まると神の力が増すのじゃよ。


「似ていると、何で集まるのですか?」


―― 間違えて集計してしまうようなものじゃよ。ほれ、ついこの間もあった

   じゃろ?〇田〇〇と〇本〇〇を間違うとか。

   我の場合はマイナー神じゃから、一方的に得するがの。


ナンノコトカナ~。

とにかく色々とあぶないジイさんって事は分かった。


―― での。急に力を得たものじゃから、色々と使ってみたくなるのは世の常

   じゃろ?ほら、PVが無いとか、言っておったろ?相談に乗ろうかと

   思っての。


「いえ、結構です」


ヤバめの神様のようだから、丁重にお帰り願おう。


―― ほうほう。PVが伸びないのは、異世界を実際に経験していないから、

   とのう。それにしても、ヤバめの神様とはなんじゃ。

   我は解決するまで帰らんぞ。お主のパソコンはこの先、ずっと

   南天堂3〇Sじゃ。


心を読みやがった、こいつ……いや、この神様。

それにパソコンがずっとこのままだと?原稿が書きにくそうだな、おい。



―― ほれ、相談してみい。これでも神様じゃぞ?


しょうがねえ。一通り話してみるか。

その前に2〇Sの状態にしてくんない、目が疲れるからさ。

俺は先ほど思いついた自分の仮説をジジイ神に話した。あっすみません、ナロウ様でしたね。


―― 単に文才の問題だと思うがの。


「いや、そうとも言えないんだよ。文章表現とか全然ダメでも、誤字とかいっぱいあっても、ご都合主義的な展開でも、更には主人公がクズ野郎だったりもするけど、何故か面白いんだって。土曜日の昼間から読んでいるといつの間にか夕方とかになっていたりすんの」


―― それを含めての……まあ良いわい。お主も言っている事にも一理あっての。

   おるぞい。PVが100万以上の者の中に、実際に異世界に転移している者

   とか、前世の異世界の記憶を引き継ぐ者とか。

   全部が全部ではないがの。


すげーな。そんなことも分かるのかよ。マジ神。


―― 実際に神じゃからの。それに事前調査は重要なことじゃからの。


だから心を読むなよ。

事前調査は重要って、そう言ってコンサル料を吹っかけてくるよな、コンサルタントの奴ら。

それは、今は関係ないか。

いるのかよ、異世界転生・異世界転移。

やべえ、俺が読んだ中にあるのかな?


―― それでお主も異世界に行けば、良いのかの?


「えっ、行けるの?」


―― 行けるぞい。我ってば、神よ、神。


ナロウ神がなんかポーズを取っている。

2〇Sの状態でやっているから、一昔前のスクリーンセイバーみたいだな。


―― とりあえず、異世界転生ってやつをやってみるかの?


「それって、戻ってこられるのかよ?それに、浦島太郎状態になったりしないよな?」


―― 浦島太郎は伏せ字にせずとも良いのかの?


「うるせえよ。で、どうなんだよ」


―― まず異世界に渡った時点の直後くらいに戻ってこられるようにできるぞい。

   それから年もそのままじゃ。

   向こうで寿命が尽きるまで生きても、こっちでは数秒程度じゃよ。

   実在しない人物とかには転生出来んが、生まれてくる赤子なら誰でも

   可能じゃ。

   能力もな。チートっていうのじゃろ?その世界を壊さない範囲でなら

   可能じゃよ。


「すげーな。で、どうすればいいんだ?」


なんだよ、至れり尽くせりじゃねえかよ。

それが本当なら今すぐやろうぜ、数秒後に戻ってこられるんだろ?


―― 善は急げというやつじゃな?

   じゃあ、まず死に方を選んで貰おうかの。


    1.大型トラックに轢かれる

    2.通り魔に滅多刺しにされて殺される

    3.キャトルミューティレーション


   どれがいいかの?人気なのは1.じゃよ。


「おい、死ぬのかよ」


死んだら戻って来られないだろ。

それから1と2は確かに良くあるシチュエーションだけど、3はなんだよ。


―― 「転生」じゃぞ?死ななくては転生出来んじゃろが。

   戻るときはお主が「死ななかった場合の世界」の方に戻ることになるの。

   もちろん「死んだ場合の世界」の方も残り続けるから並行世界が出来るの。


「一応、筋は通っている……か?でも、その選択肢は何だよ」


―― 直ぐに発生させることが出来る死因がこの3つだったのじゃ。

   飛行機に乗っていなのに墜落事故で死ぬなんて出来んじゃろ?


「じゃあ、3は何だよ!」


―― 別に異世界と言っても剣と魔法の中世的世界観とは限らんじゃろ?

   デストピア的な近未来とか、サイバーパンク物とか、あるじゃろうて。

   演出じゃよ、演出。

   DNAがどうたらこうたらって言っておけば、大抵は説明が付くからの。


「そういうことじゃなくって。飛行機に乗るより、可能性高いのかよ!」


―― 細かい事を気にするヤツじゃて。で、どの死に方にするのかの?


    1.大型トラックに轢かれる

    2.通り魔に滅多刺しにされて殺される

    3.キャトルミューティレーション


   さあ、さっさ選ぶがよい。


俺は悩んだ末……






「他の方法ってのは、無いですかね?」


表示された選択肢以外を選んだ。これって、典型的なパターンの一つだよな!

読んでいてよかった「なろうぜ小説」。

こういう時に役に立つよな。




単に、どれも怖すぎて選べなかっただけなんだけど。

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