2 隠しキャラと動く彫像
ブックマークと評価ありがとうございましたm(._.)m
今日は二個更新予定です。
話の設定上残酷表現等あります。申し訳ありません。
「ちょっと聞いてよ、素敵な彫刻男子の貴方。入学早々、王太子殿下は浮気者なのよー!わたくしという婚約者がいるのに」
7度目の台詞を聞いた時、地下室からリーフライトは起きあがり、扉を開けた。彫像が横に動き台座の下に隠された出入口が開く。頭を出したところで、目の前の少女と目が合った。銀色の縦ロールの髪が月光に輝き、紫の目元には涙が輝いていた。
「お前」リーフライトが声をかけようとした瞬間。絹を裂くようなというのが、ぴったりな悲鳴が上がった。真夜中の森の中、ただでさえも暗く怖い場所だ。地面から真っ黒な人影がわいてくれば、恐怖にかられない人はいないだろう。銀の縦ロール少女は、リーフライトから逃げ出した。
後で歴史書を調べると100年ぶりの地上、リーフライトの年は合計500歳近くなっていた。その久しぶりかつ最初の人間との邂逅がそれだと、リーフライトは非常に傷ついた。年はとっているが、美形だと言われフラれたことなどないため、意外とガラスのハートだったのだ。
リーフライトは人前に出ることを避け、人の来ない女子寮の屋根裏の一室を占拠し、そこから久しぶりの地上を観察することにした。リーフライトは日の光の下には、肌がすぐ赤く爛れるためかなり重装備でないと出られない。それだと、あまりに怪しいので、基本は半分眠りながら寮内の声を聞き、夜闇にまぎれて色々なところを覗いてまわった。
銀髪の縦ロールの少女はエルザ、公爵家の娘でアルフレッドという名の王太子の婚約者らしい。日の下にいると銀髪が青みがかっているのがわかる。その王太子の寵愛を男爵家のマリアンヌという娘と争っているらしい。こちらは銀をベースに桃色がかった髪をしている。
婚約者がいるのに争うという言葉が出る時点で、わかるようにアルフレッドは日に日に、マリアンヌに夢中になっていった。
エルザはマリアンヌに王太子の婚約者として立場の違いを諭し、時には嫉妬を剥き出しにして、マリアンヌと対峙した。マリアンヌに夢中なの男は他にもいたため、その婚約者令嬢も敵意を持って対しているのは明らかだった。マリアンヌは可愛らしい外見に似合わず強く、逆境は周囲の男性を彼女によりひきつけていた。
そして、その日が訪れた。エルザとマリアンヌが階段で二人いた時、故意か偶然かわからないがマリアンヌが階段から落ち、かなり大きな怪我をしたらしい。伝聞系なのは、リーフライトがその場を見た訳ではないからだ。女子寮での噂は、エリザが城で投獄されて、処刑を待っているというものだった。
リーフライトは夜闇の中を、城まで走った。壁を飛び越え、見張りの気配を避けながら、地下の牢までたどり着いた。
小さな明かりとりの天窓から少しの月光と、魔法の玉がついた燭台がほのかに通路を照らしている。
「貴方は死神?入学式のあの夜見た。」
自分を覚えてくれていた、ほとんど動かぬ自分の心臓が跳ねるのをリーフライトは自覚した。あれからエルザは夜彫像のある四阿に行くことはなかった。最初の邂逅が余程怖かったのだろう。
「ううん、どっちでもいいわ。黒の方、もし貴方が死神さんの役をやってくださるなら、私を殺してくださいませんか?明日、たくさんの人の前で処刑されて、醜い姿をさらす前に。」
「私は、エルザ、君を逃がすこともできる。」
リーフライトは目の前の少女に選択肢を与えた、エルザは首を横に振った。
「私が逃げれば、家族に責任が及びます。私を勘当してもらって、やっと弟やお父様の死を避けたのです。」
「マリアンヌを突き落としたのは事実なのか?」
「やった気もするし、違う気もする。事実としては私が振り返った時に体が当たって、マリアンヌが落ちて怪我をしたこと。私とマリアンヌが至極仲が悪かったため、偶然だと言っても誰も信じてくれなかった。」
エルザは弁明をしたのだろう、そして誰も聞いてくれなかったのだ。
「私は疲れてしまいました、王太子様の婚約者になるため、全てを捧げてきて、今全てがなくなってしまった。私はもう脱け殻なのです。だから、今のうちに静かに死にたいのです。」
「わかった。」
牢の鍵に手を触れる。内部機構を魔法で確認し、鍵が外れるよう機構を動かした。
カチャン、キイー
鍵が外れリーフライトが、牢の中に入る。
エルザは両手を合わせて組み、神に祈るようにひざまずき、目を閉じていた。覚悟を決めているのだ。リーフライトはその肩にかかる銀の巻き毛を、背中側に流し白いうなじをさらした。
リーフライトは剥き出しになった首に優しくキスをするように、唇を当てる。エリザの体がピクンと反応する。リーフライトは彼女の綺麗な首筋に牙を突き刺した。彼は腕の中で痙攣するエリザの体から血を吸い尽くした。
読んでいただき、ありがとうございました!