2ラウンド 後半
間章の続きなので最初の視点は重山北斗のままです。
第二ラウンドも最終ターンまでやって来ていた。
第一ターンでは浜井まゆみと清野悠生が『男』だと名乗り俺を困惑させてきた。間違いなくどちらかが本当に『男』でもう一人が『悪魔』だろう。そして第一ターンの間ずっと黙り続けていた奥村理沙が『天使』。
そうなると『悪魔』は確実に『天使』を当てているはずだから5Pは取られている。
さらに言えば『男』の方も俺に投票して正解しているだろうから3P。
もし、仮に俺が入れた方(清野悠生)が本当に『男』なら俺も3P。
逆に浜井まゆみが『男』だった場合『悪魔』(この場合は清野悠生)が+5Pで計10Pという事になる。
まぁ奥村理沙の方は『天使』バレをしているだろうから眼中に含めなくていいとして、次に第二ターンに入る。
俺が携帯で示したあの『女』カードは一ターン目に撮影したもので、二ターン目の俺の役職は『悪魔』だった。
だけどあのズルギリギリの作戦に皆が驚いて俺を『女』じゃないと疑ったやつはあの中で一人たりともいなかっただろう。
つまりあの場で『男』だった奴は確実に俺に票を入れた。つまり清野悠生が俺に票を入れたことになる。だからあいつの加点は無しだ。
となると本当の『女』は浜井まゆみか奥村理沙となるだろうがここは清野悠生の推理通り奥村理沙のほうが本当の『女』だろう。恐らく奥村理沙が二連続で『天使』を引いていたら何一言発せずにゲームを終了させていたに違いない。だから『天使』は浜井まゆみだ。正直、なぜ最初に『女』を名乗ったのかは分からないが、恐らくは悪魔に自分の存在をばれないようにするためだろう。俺の計算では第一ターンの間に浜井まゆみは3Pを獲得してるわけだからここは『悪魔』当てを狙い『天使』バレを防いだと考えるのが妥当だろうか。まぁ俺が結局あの写真を出したことで俺が悪魔だとは思いもしていないだろうから外したんだけど。全く残念なこった。
つまり第二ターンで俺はカップル不成立の5Pと『天使』当ての5P合わせて10Pをゲットしている。そしてこのターンで他にポイントを得たやつはいないし浜井まゆみはマイナス10Pを喰らっていることになる。
だから最悪で現在俺と清野悠生が同率一位。さらに他の女二人はマイナスポイントの中にいる。
そしてこのラウンドで次に駒を進められるのは上位二人、つまりこのターンで俺に『男』または『女』のカードが来ればマイナスポイントはあり得ないから負けることは無い。
だが、運悪く俺の元に配られてきたのは『悪魔』のカードだったが、まぁいいや。別に『悪魔』バレさえしなければいい話だ。
そしてカードは回収されいよいよ話し合いが始まった。
最初に発言したのはやはり浜井まゆみだった。だが、その発言の仕方は前二回とは違い携帯を突き出して『男』のカードの写真を突き出して来た。
「これは推理とかもなさそうね。はい、私マジで『男』だから」
まぁ第二ターンの俺の行動があれば当然ちゃ当然か。『男』と『女』は写真で身の潔白を示して来るに決まってるよな。
だったら俺も。
「奇遇だな俺もだ」
再び『女』の写真を提示するまでだ。
だが、俺とかぶさるようにもう一人自分も『女』だと主張する人物がいた。奥村理沙だ。
彼女もまた写真を撮り、『女』だというアピールをしてきた。恐らくコイツが本物なのだろう。
「で? 女が二人いるってのはどういう状況だ」
清野悠生が漏らした疑問に俺はすかさずつけ込む。
「そりゃ、簡単な話だ。悪魔であるコイツが嘘をついている」
俺は奥村理沙を指差しながら主張する。
「そ、そんな事無い! 私は本当に……」
まぁ当然そう主張してくるだろうな。本当に『女』なわけだし。だが、俺は自分が『女』だと主張する奥の手を持っている。
「そうね。あんたがさっき使った写真をまた使ったっていう可能性もあるものね」
だが、そんな奥の手をこんなすぐに使うことになるとは思わなかった。
俺は携帯を突き出し写っている『女』の写真からスワイプさせる。すると再び『女』の写真が出てくるのだ。
実はさっきカードをもらって全員が撮影している間に俺は前の『女』の写真を複製し、加工して新たに『女』の写真を撮ったように見せかける写真を作っていたのだ。
正直この時に携帯電話すら取り出していなかった清野悠生が『天使』であることは間違いないだろう。これで俺は5P獲得。俺の決勝ラウンド進出は決まったようなものだ。
「なるほどな」
俺の二枚目写真の登場によってみんなぐうの音も出なくなった。俺の完全勝利だ。
奥村理沙は死にかけて虫のごとく見苦しく「ち、違う‼ 私が本当の『女』なのに」とか言い張っているけれどそれ以上の証拠は出てこないようで俺が「ガキは黙ってろ!」とでも言えば奥村理沙は「はにゅ」とか言って一瞬で黙り込んでしまった。
浜井まゆみからは「恐喝は良くないよね」とか言われたけれど関係ない。俺は何としてでもこの戦いに勝たなければならないのだ。
そしていよいよ話し合い時間が終了した。
男である浜井まゆみが俺を選ぶことは確実としてその段階でカップルは不成立。さらに間違いなく天使は清野悠生。つまり俺はこのターンでも8P獲得できる。
俺が清野悠生に『悪魔』だとバレる可能性も無いだろうが万が一バレても、マイナス2Pで何とかなる。
俺は紙に清野悠生の名前を書いてディーラーに紙を提出した。
「これで第二ラウンドも終了いたしました」
紙を集めてしばらくしてから例のスクリーンにゲームマスターが現れた。
「それでは、早速結果発表をさせていただきましょう」
机とイスも既に撤収されており、受験の合格発表を待つかのようにして俺たち四人とその後ろで敗北者四人がドキドキしながらその画面を見つめていた。
まぁ別に俺はドキドキも何もしていなかったのだが。
「まず、第二ラウンド第一位で通過したのは――」
ゲームマスターも演出という物は知っているらしく少しためてから発表をした。
「――清野悠生様です」
どうやら清野悠生も最後のゲームで俺の事を『悪魔』だと見破ったらしい。まぁそれで一応想定内だ。どうせ次に俺の名前が呼ばれるのは間違いない。
「そして第二位で通過したのは――」
再び演出と称したドラムロールだけがただ淡々と流れる時間が過ぎて行った。
こんなことしなくたって俺が呼ばれるって決まって――――。
「――浜井まゆみ様です」
「…………」
あ⁉ 今ゲームマスターはなんて言った? だが、俺のその疑問に対して俺の左隣で現実を知らせるかのように浜井まゆみが騒ぎ始めた。
「いや、ちょっと待て! ゲームマスターこれは何かの集計ミスだ。俺が上位二人に入っていないはずが無い。もう一度集計しなおせ!」
俺の講義に対してゲームマスターはただ冷徹に「いえ、これはしっかりとした集計に基づいて決定されたものです。なんの間違いもございません」と答える。
「重山北斗、見苦しいぞ。現実は受け入れたらどうなんだ?」
まるで家畜を見つめるような目で清野悠生が俺に対して訴えてきた。
「おい! 清野‼ 一体どういう事だよ。俺が負けるはずが無いんだよ。俺は、俺は!」
「じゃあゲームマスター。三位以降もポイントと一緒にこの分からずやに教えてあげたらどうだ」
「分かりました。では改めてポイントと合わせて発表いたしましょう」
するとゲームマスターが軽く一息つき、ポイントの発表を始めた。
「一位、清野悠生様。11P。二位、浜井まゆみ様。9P。三位、奥村理沙様。マイナス4P。四位、重山北斗様。マイナス5Pでございます」
「ま、マイナス5P⁉」
意味が分からなかった。なぜこの俺がマイナスになっているのか。なぜ俺が奥村理沙にすら抜かれてビリなのか、やっぱりこれは何かの間違いだ。
「いい加減諦めろ。お前は俺に、いや俺たちにはめられたんだよ」
「はめ……られただと」
「あぁ俺と浜井にな。いいよこの第二ラウンドで起きたことを全部教えてあげるよ」
*
まずは第一ターン。
この第一ターンでは俺と浜井が『男』だと主張した。実際この時はまだ浜井との協力関係は無かったからここだけは俺(清野悠生)視点だけで話すことになるけれど、あの時俺の元に配られたカードは『悪魔』だった。
で、この辺りはお前も気付いてたかも知れないけど奥村が『天使』だった。つまり、お前が『女』で浜井が『男』というわけだ。だから俺は普通に奥村を選んだ。これで俺に5Pだ。そして浜井も恐らくお前に入れて3Pは手に入れた。ここで質問だが重山お前は誰に投票した?
「清野、お前にだ」
という事はカップル不成立。俺に+5P。お前は得点無しで奥村は『天使』バレ。ちなみに奥村は俺の事見破ってた?
「うんん」
となると第一ラウンドの得点は……。
清野 ……10P
浜井 …… 3P
重山 …… 0P
奥村 …… マイナス10P
そして第二ターン。
ここで俺から浜井に『ここは協力して決勝ステージに二人で上がらないか?』と提案した。
もちろん協力しないのも自由だが、そうすれば他のやつと協力してお前を潰すけどって言葉を足したら彼女はあっさり承諾してくれたよ。
そこで第二ターンの彼女のカードを写真で見せてもらった。まさか、写真という手段を思いついたのが自分だけだなんて思って無かったよな。
彼女のカードは『男』であり、俺は『女』だった。まぁこの時点でカップル成立。俺らとしては、どうやって二人をまちがった道に誘導できるかっていう話だけになった。
そこで、俺が提案したのが俺と浜井の性別を入れ替えることだ。正直これに意味があったのかと言われれば微妙なところもあったが俺以外の他三人が全員『女』だと主張したことで俺に対するアピール合戦が始まったわけだ。
だから、浜井には極力自分が悪魔もしくは天使であるように上手に演じてくれって言ってみた。もちろん俺も奥村の言葉を逆手にとって浜井が悪魔もしくは天使だと思われるようにもって言ったつもりだったけど効果はあったのかな。ってことで聞いてみるか。重山第二ターンお前の役割は何でだれに投票した?
「俺は『悪魔』で、まんまと浜井に投票したよ」
奥村さんは?
「私が『天使』で、浜井さんに投票した」
つまり二人とも見事に騙されたってわけだ。浜井も意外と演技力があるわけだな。
ってことは俺と浜井のカップル成立。『悪魔』バレ及び『天使』バレも無し。つまり第一ターンと第二ターンを合わせると。
清野 ……13P(+3)
浜井 …… 6P(+3)
重山 …… 0P
奥村 …… マイナス7P(+3)
そして第三ターン。
まぁ俺が何一つ主張しなかったから悪魔のやつには俺が天使ってバレたんじゃないかなとは思ってたけど。
ちなみに浜井まゆみは写真で証明した通り『男』。まぁ話から察するにお前がもともと持っていた写真を複製して二枚目を作ったってところだろうね。あの写真加工は頑張ったようだけれどカードの角度、写真写り込んだ足の位置とかを鑑みればすぐにわかることだ。だからそれを浜井にも伝えた。だから浜井はしっかりと奥村の方を選んだと思うぞ。ちなみに奥村は最後誰に入れた?
「わ、私も浜井さんに入れました」
だってさ。ってことは、最後は大きく得点が動いたってわけだ。要素としてはカップル成立、『天使』バレ、『悪魔』バレってところか。
それを合わせると総合得点が……。
清野 ……11P(13―10+5+3)(マイナス2P)
浜井 …… 9P(+3)
重山 …… マイナス5P(マイナス5P)
奥村 …… マイナス4P(+3)
*
「な、これでさっき発表されたような順位とポイントになるってわけだ。お前がどういう計算をしていたかは知らないけれど、これが真実ってことだよ」
正直受け入れがたかったが筋が通っていた以上反論が出来なかった。俺はまんまと清野悠生の計算にはめられていたのだ。
ったくとんでもない野郎だな。俺のキララちゃんはいや、光ちゃんはどうなるんだろうな。
本当に申し訳ないと思ってる。俺のせいで彼女の夢がつぶれちゃうなんて。でも、もう俺にはどうすることも出来なかったのだ。
「――ゴメン。ゴメンな光……」
こうして俺もまた後ろの敗北者たちの中へと混じって行くのだった。