2ラウンド
清野悠生
第一ラウンドが終了した翌日、俺たちは再び例のホールに集められた。
「コングラチュレーション、あなた達はよく協力して第一ラウンドをクリアされました」
ゲームマスターはそう表現したが正直協力はしていなかっただろう。俺と重山は連絡を取り合っていたが、奥村理沙はずっと部屋に隠れていただけだし、浜井まゆみが赤チームだったことに関しては今初めて知ったのだから。
ちなみに負けた白チームの人たちも別に殺されたわけでも無いからホールの隅っこの方に立って俺たちの事を眺めている。そのせいで俺たちだけが生き残ったって感覚もあんまりなかったりする。
負けた人は大切なものを失うとは言っていたもののすぐに実行されるわけでは無く、全ゲームが終了した後に各事務所なりアニメ制作会社なりに報告されるらしい。
「では、どんどんゲームを進めていきましょう。残った四人に戦っていただく次のゲームはこちらです」
第一ラウンド同様、ゲームマスターがそこまで言うと画面が切り替わり第二ラウンドのゲームが表示される。
『運命の相手は誰だゲーム』
ただ、今回のゲームは第一ラウンドのように名前を聞いて容易に想像できるものでは無かった。
「では、このゲームについて説明をさせていただきます」
これから皆様にはこの場でカードゲームをしていただきます。
使用するカードは四枚ありそれぞれに『男』『女』『天使』『悪魔』と四つの役が書かれております。
ゲームはポイント制であり最終的にポイントの高かった人の勝利、そのポイントを大きく左右するのが先ほどの役割です。ではそれぞれの役割においてどのようにしたらポイントが入るのか説明いたしましょう。
まず初めは『男』と『女』です。この二人はそれぞれ対になる人物(つまり『男』なら『女』を、『女』なら『男』)を見つけ出してください。見事いい当てることが出来たのならば3P差し上げます。
そして難しいかつこのゲームのキーとなるのが『天使』と『悪魔』です。
『天使』は『悪魔』を見つけ言い当てることが出来れば5P。
『男』と『女』のカップルが成立した場合3P
ただし、自分が『天使』だと『悪魔』に言い当てられた場合はマイナス10P。
『悪魔』は男女のカップルが成立しなければ5P。
『天使』を言い当てることが出来ても5P。
ただし、自分が『悪魔』だと『天使』に言い当てられた場合はマイナス10P。
役割としてはこんな感じです。そしてゲームは、
カード配り(役決め)→話し合い(五分間)→投票
のループでくり返し三ターン行っていただきます。
ただし、ゲーム最初に配られたカードは確認を済ませ次第回収され、それぞれのポイントについては途中で発表されることは一切なく最終的な総合ポイントで競い合っていただきます。
以上がルール説明ですが、ゲーム進行中に分からないことなどが出てくるかもしれません。ゲーム進行に関する質問であればその都度お答えいたしますのでどうぞご安心ください。
それではゲームスタートです。
そして俺たちの前には机とイスが運ばれ、それぞれが席に着いた。場所としては俺の隣に浜井まゆみ、向かいが重山北斗、対角線に奥村理沙という位置取りだ。
ここから先のゲーム進行は例によってディーラーが進めるようで彼女が俺たちに座るよう促してから、新品のカードを開け、シャッフルをしてから一枚ずつ配った。
それを確認したのちディーラーがカードを回収する。
「それでは、話し合いを始めてください」
その声と同時に五分間のカウントダウンが始まった。
やはりこのような場面では誰もが黙ってしまいがちであるのだが今回はそうはならず浜井まゆみの第一声からしっかりと話し合いが始まった。
「私は男よ」
ちょっと違和感のある発言ではあったが、つまり浜井まゆみは『男』だという主張をしたのだ。
「俺も男だ」
それに俺も続く。正直被ってしまうのは仕方がない。ここで下手に他の役をいって自分が不利になるのだけは避けたいのだ。
次に発言をしたのは重山北斗だった。
「俺は女だけど、男が二人いるってことはどっちかが悪魔ってことか?」
まぁ確かにそういう推論になるのは間違っていないだろうがそういう言い方をすれば俺も浜井まゆみも答えた方は同じだ。
「俺(私)は本当に男だ(よ)」
それに対して重山北斗は、「うわぁ埒明かねぇーよ。どっちか証拠出せよ」とため息のごとく漏らしたが、俺は正直に「それは無理だろ。証拠になるもんなんて何もないんだからな」と答えた。
もちろんそれによって沈黙することは免れない。
正直俺はこの戦いで負けるわけにはいかないのだ。それは俺と未来の間で結ばれた一つの約束事があるからだ。
それは俺が中学二年の頃の出来事だ。
正直俺は未来が生まれたときからずっと彼女の事がかわいくてたまらなかった。彼女が生まれてから中学二年になるまでも何度か彼女が出来たりもしたが、未来を超えるようなかわいい子は現れず、俺のシスコンを知った女たちはすぐにどこかへ行ってしまった。
なぜ女たちは未来の可愛さが分からないのだろうか、赤ちゃんの頃には俺が人差し指を差し出せばぎゅっと握りしめ笑顔になり、歩き始めたときは壁や机に捕まりながら何とか歩き出そうとしそして足が重さに耐えられず床に転がりまわる。
成長して外に二人で遊べるようになったらほぼ毎日のように近くの公園に遊びに行って滑り台を滑ったりブランコを押してあげたり、砂場でお城を作って見せてはパンチ一発で壊されたり、そんな風に他愛もない日常を過ごしていた。
そこにお兄ちゃんとして遊んであげているという感覚は一切なかった。
幼稚園に通うようになってからも帰って来てからは俺が小学校で疲れてきたのを癒してくれるかのように幼稚園で起きた色々なことを俺に話してくれた。それに対して俺も小学校の話をすれば「小学校も楽しそう。早く行きたいな~」なんて言ってくれたものだ。
そして月日は経ち、未来は幼稚園を卒園して、小学校に入学した。未来の体よりも一回りも二回りも大きい赤いランドセルを必死で背負うその姿は、それはそれでとても可愛らしかった。
このまま平和な日々がずっと続くのだろうと思っていた時、――いきなり未来がいなくなった。
原因はお父さんと喧嘩したらしくそのまま出て行ってしまったとか。
俺が修学旅行から帰って来たところで知らされた事だったため、俺もどうしていいのか分からなかったが、とにかく未来を探すために家を出た。
全くどこに行ったかも分からなかったけれども、思い当たる場所をしらみつぶしで探していく。
その結果、俺は山奥にある、時期によってはとてもきれいに色々な花が咲き誇る公園で、彼女を見つけた。
家を出たのは俺が修学旅行から帰って来た日であり、彼女が誰かの家でかくまわれているわけでも無かったので、夜にはなってしまったが見つけることが出来た。
六月は花菖蒲が咲いておりその中で俺は彼女に声を掛ける。
彼女は振り向いたがその目真っ赤になっていた。
「お、お兄……」
その言葉は語尾すらはっきりさせず、未来は俺に抱き付いてきた。
「ゴメン。ごめんなざい。わだしが勝手に出て行ったばっかりに……」
俺を強く抱きしめて、顔をぐしゃぐしゃにしながら彼女は俺にただただ謝った。
「だって、お父さんが悪かったんだろ」
状況はある程度聞いていた。周りの友達が携帯電話を買い始めたから自分も買ってほしいとお願いしたけれども小二じゃまだ早すぎると断られたためその抗議の印として家を出たらしい。
「でも、勝手に出てきたのは……」
「じゃあさ、俺もお父さんに携帯買ってもらえるようにお願いするからさ今日のところは家に帰ろ?」
そう尋ねると、彼女は軽くうなずき、小さな声で言葉を紡いだ。
「ねぇ、私と一つだけ約束してほしいの」
そのか細い声に「え⁉」と聞き返しそうになったが何とか聞き取ることが出来た。
「約束?」
「うん、もしかしたら、今後も勝手に出て行ったりしちゃうかもしれないけどそんな時もまた今日みたいにお兄ちゃんに見つけ出してほしいの。だからさ、これからも私の事を大切にして守り続けてくれる?」
小学二年生とはとても思えないその言葉、その潤んだ目に俺は思いっきり心を奪われてしまったのだ。そしてその時俺は決めた。
何があっても未来(この子)だけは絶対に守ってやろうと。
ならば彼女の命がかかったこの戦い負けるわけにはいかないのだ。
正直誰もしゃべらなくなったまま五分間は過ぎ去ってしまったが、この五分間で一言たりとも話さなかった奥村理沙は恐らく天使であろう。仮にも『悪魔』ならもっと『男』と『女』を騙すように働きかけてもおかしくないが『天使』の場合はカップルが成立した方がいい。そうなると動きにくいのも当然だろう。
つまり今回の投票で大きくゲームを左右するのは重山の投票になるという事だ。
各々が配られた紙に『男』は『女』であろう人の名前、『女』は『男』であろう人の名前、『天使』は『悪魔』であろう人の名前、『悪魔』は『天使』の人であろう名前を書いて投票は終了した。
最初に説明があった通り中間発表は無いためそのまま二ターン目に入って行った。
奥村理沙
二ターン目も一ターン目同様にカードが配られる。
私が引いたのは再び『天使』のカードだった。正直天使とか言いながら最悪のカードだ。だって天使って一体何をしていいのか分からない。下手に口を出せば天使だってバレそうだし何も言わなくても天使だってバレそう。だからと言ってカップルをぐちゃぐちゃにしてもしょうが無いし、とにかく扱いづらいカードなのだ。でも、これ以上黙っているわけにもいかない。
このままただ、負けるわけには行かないのだ。
周りの人たちはるみちゃんの事をただの人形だと思っているかもしれないけれど、本当はそうではない。
私がるみちゃんと初めて出会ったのは私が四歳になった時の誕生日。
そもそも物欲なんてものはほとんど無かった私にとって誕生日だからと言って特に欲しいものも無かった。
そこで、お母さんがプレゼントしてくれたのがフランス人形のような人形。
そしてお父さんは私の部屋をプレゼントしてくれた。要は隅にあった一室を私の部屋として使っていいという権利をくれたってこと。
けどお父さんからのプレゼントは私にとって、とてもつらかった。
だって今まではお母さんの布団に入りながら一緒に寝ることが出来たのに今日からは一緒に寝ることは出来ず一人で寝なくてはならないという事なんだよ。
けど、プレゼントとしてもらった以上付き返すわけにもいかず、私は夜になると一人で自分の部屋へと入って行った。
もらった人形をベッドの近くにあった棚に置き、布団にこもって寝ようと試みたものの結局眠りにつくことは出来ず、一人でいるという不安だけが押し寄せてきた。真っ暗な部屋の中、他の音は一切聞こえてこない。
目が慣れてくると、何も収納されていない棚がまるで闇の入り口かのように私を連れ出そうとし、部屋の入口にある襖が湿気で波打ち、まるで恐ろしい妖怪のように見えた。
私の中にもともとあった不安に恐怖が付け足され、いよいよ部屋を抜け出してしまった。
リビングにはオレンジ色の明かりがともっており、扉を開けるとそこにはお父さんとお母さんがいた。
二人は扉が開くと同時に驚いたような顔をしてこちらに目線を向けてきたけど、私の表情を見てか状況を理解したようで、お母さんは私の頭を撫で、ただただ「大丈夫だよ、大丈夫」と繰り返してくれた。
ある程度心も落ち着き再び私が部屋に帰って睡眠を試みることが出来た。
だけどいくらリビングで心を落ち着けたところで、あの部屋に帰ったら再び不安が押し寄せてくる。
どうしようもなくなって三度リビングに行こうかと考えたその時、私の元に優しい声が聞こえてきた。
「どうしたの理沙ちゃん? 眠れないの?」
普通なら誰もいない部屋から私に話しかけてくるという恐怖体験以外のなにものでも無いはずなのだけどその声はどこか心が落ち着くようで、私はそこからただ逃げるのではなく受け入れようとしていたのだ。
「誰? どこからしゃべってるの?」
その問いに対して帰って来た言葉は意外なものだった。
「理沙ちゃんのすぐそばだよ。ほら、棚の上」
やっぱり恐怖体験以外のなにものでも無い。その言葉が指し示す答えは一つしかなかった。私のすぐそばで棚の上にあるのは今日お母さんからもらった人形。逆にそれしか棚に置いていない。
「もしかしてお人形さん?」
私は恐る恐る問いかける。
するとお人形さんは一切表情を変えることなく答えた。
「そうだよ、そうなんだけどお人形さんって呼ばれるのはちょっとやだな~。よかったらさ私にお名前を付けてくれない?」
「お名前?」
「そう、理沙ちゃんが私の事を呼ぶときに使うお名前」
「幽霊」
私の口から出たのはその二文字だった。だっていきなり人形がしゃべりだして名前を付けろと言われてもそんな簡単に思いつくわけはないし、とにかく私はこの人形を定義づけるために何がいいか率直にたどり着いた答えがそれだったからだ。
「ゆ、幽霊? そ、それって名前なのかな……」
けど、その人形は表情こそ変えなかったものの声に抑揚があり、どこか人間味を感じることが出来た。
「もうちょっとちゃんとした名前がいいな」
少し考えた。一体この人形にどんな名前を付けたらいいだろうか。
そんな時ふと、頭に「るみちゃん」という名前が思い浮かんだ。特に由来とかは無い。本当にただ浮かんだだけだ。
でも、その人形は私の声を聞き逃すことは無く食いついてきた。
「るみちゃんか~。確かにいいかも。じゃあ私は『るみ』ね」
人形――るみちゃんはその名前を受け入れたらしく、そのまま名前が決定した。
「ねぇ理沙ちゃん。今日の夜は、いやこれからずっと一緒にいてあげるから安心して眠って大丈夫だよ。お母さんの代わりになれるかは分からないけど、私は私なりに精一杯理沙ちゃんが眠れるように頑張るからさ」
その後も少しだけるみちゃんとお話をした気はするけれど眠ってしまってよく覚えていなかった。
でも一つだけ覚えていることがある。それはるみちゃんとの約束。
『何があっても私がしゃべったってことは内緒ね。それを周りの人に言っちゃうと理沙ちゃんが変な目で見られちゃうからね』
という言葉だけだった。
だから翌朝起きた後も、お母さんやお父さんにるみちゃんの話をすることは一切なかった。
そして、夜は私とるみちゃんだけで色々な話をするようになっていた。
自分の好きなこと、今日の出来事、テレビ番組の話。一体どこで情報を仕入れたのか知らないけれど、るみちゃんもある程度私の話についてきてくれた。だからとても話しやすく、るみちゃんが話すのを聞いていてもとても楽しかった。
それからあっという間に一年の月日が過ぎた。そこまで一体どれだけの話をるみちゃんとしたかは記憶に無い。けど、まるで昔からずっと一緒にいた友達のような感覚が出来ていた。
だけど、五歳だった私がとても悲しかった日の夜、唐突にるみちゃんは何も話してくれなくなった。
その日は私の母――奥村久留美が急な事故で無くなった日であり、その辛さを拭えないどころか、現実すら受け入れきれなかったまま、部屋に入り、るみちゃんにも受け入れてもらおう、いや、話して少しでもこの状況を理解し励ましてもらおうと思ったのだがいくらるみちゃんに話しかけても全く答えてくれなかった。ただ、変わらない表情で一点を見つめ続けているだけだった。
その日の夜は何度も何度もるみちゃんの名前を叫んだ。何とかしてるみちゃんに答えてほしかった。だけどその夢もかなわず私の方が疲れて眠ってしまった。
翌朝になっても変わらなかった。るみちゃんは夜だけでなく、私が一人でこの部屋にいれば話してくれることも何度もあったから、わずかな期待を残しながら声を掛けてはみたけど結局一切の反応は無かった。
そんな時、私はるみちゃんと初めて出会った日の事を唐突に思い出したのだった。
『ねぇ理沙ちゃん。今日の夜は、いやこれからずっと一緒にいてあげるから安心して眠って大丈夫だよ。お母さんの代わりになれるかは分からないけど、私は私なりに精一杯理沙ちゃんが眠れるように頑張るからさ』
彼女はそう言って私を励ましてくれた。十分お母さんの代わりに、いや、るみちゃんとしてのアイデンティティをしっかり確立し、るみちゃんとして私を支えてくれた。
急に喋らなくなってしまったけれどもるみちゃん自体がいなくなったわけでは無い。るみちゃんはお母さんと違って私の前から消えるなんてことはしなかった。
だったら私のしてあげられることはただ一つだけだ。
ずっとずっと永久にこのるみちゃんと同じ日々を過ごし続けよう。
私は今まで通り色々な話をるみちゃんにしてあげよう。
もしかしたらそれが天にいるお母さんに聞こえるかもしれないしるみちゃんがお母さんに伝えてくれるかもしれない。
そう思うと一気に気持ちは軽くなり現実を受け入れてまた、しっかりと生きて行こうと思えるようになった。
もちろん今回のゲームを受け入れ大切なものを人質に取られると聞いたときにるみちゃんが狙われるなというのはすぐにわかった。
別にるみちゃんに依存していたわけでは無いけれどさすがに高校生になってまでも毎晩毎晩人形に話しかけていたら気持ち悪いよね。人形とばかり喋ってたせいでかは分からないけれど、実際私自身普通の人間と面と向かってしゃべるのは苦手になってしまったわけだから、もしかしたらるみちゃんとも決別してしっかり人間に向き合っていかなければならないのかもしれない。
でも、るみちゃんはそんな単純な理由でさよならできるほどの存在じゃ無かった。
私はるみちゃんに話しかけることに関してはある程度自嘲するにしても、ずっとそばにはいて欲しいのだ。
だから私はこのゲームに勝利して、るみちゃんとの日々を取り返して見せる。
ゲームは既に話し合いに入っていた。
最初に口を開いたのはやはり浜井さんだった。
「今度は女だったわよ」
彼女はそう宣言した。それに続いたのも先ほど同様清野君だ。
「んじゃ次は俺が男だからこれでカップル成立か?」
そうそれで成立してくれればいい。そしたら私は重山君の名前を書いて13Pゲットできる。でもまぁ重山君が「そうです、私が悪魔です」なんて言うわけはなく、
「いや、騙されるな。俺がホントの女だ」
こんな屈強な男がやや低めの声で『ホントの女だ』って言うのはちょっとおかしくて笑いそうになったがここで笑うのは場違いだからやめておこう。
清野君は重山君の言葉に「はぁまたか」なんてため息をついていたけど、このまま黙っていたのでは私がまた天使だって見破られてしまう。だったらここは何かアクションを起こさなくては。
「私が本当の女よ、悪魔も見苦しい嘘は止めなさい」
私の出せる精一杯を出して放った言葉には他の三人も虚を突かれたようで、一瞬言葉を失ったようだが、それにいち早く反応したのも清野君だった。
「まさか三人も女が出てくるとはな。ハーレムかなんかかこれ? そもそも悪魔は分かるけれど天使が女を主張する意味って何だよ」
確かに普通に考えたらカップルを成立させるために人間を主張するのはおかしな話かもしれない。でも、これ以上私は『悪魔』に『天使』だとバレるわけにはいかない。となればカップル成立は諦めて私は『天使』だとバレずに『悪魔』を探し出すしか方法は無い。
「でも、普通に考えたって最初に主張した私が本物の女でしょ」
清野君の質問はスルーし再び浜井さんが自分は女だと主張を始めた。
「でも、さっき天使で何も言わなかった奥村の性格を考えると最後にいったものの本物の女だってこともあり得る」
や、やっぱりさっきのゲーム私が天使だってバレてたし。でも、今回のゲームはもしかしたら追い風が吹いているかもしれない。
そう思った矢先、私の希望は軽く砕かれた。
「と思うだろうが残念だったな俺には証拠がある」
そう、自信満々に言ったのは重山君だった。
「証拠?」
誰とは無しにそんな声が私の耳に聞こえてきた。
それは重山君にも聞こえていたらしく彼は「これを見ろ」といって自分の携帯(第一ラウンドで支給されたやつ)を出した。
そこには女のカードが写った写真が出てきた。
「おいおい、マジかよ」
「ってこれありなの。カード回収してる意味無いじゃん」
清野君はただ驚いたままだったが浜井さんは手を挙げてディーラーに質問をした。
それに対するディーラーの答えは「Yes」つまり、ルール違反ではないという事だ。
ここで五分が経った。恐らく浜井さんが『悪魔』であり、恐らく私が『天使』であることもバレただろう。だったらここはカップル成立の3Pをもらえただけでも良しとしよう。
私は紙に浜井さんの名前を書き、それを投票した。