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これが俺たちの戦場だ  作者: 三河玲
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さあ、実戦。

 有真は初心者であることを示す黄色のマーカーをさらに腕へと加えといざ、戦場へと向かった。

 初心者講習では銃の扱い方、撃たれた際のヒットコール、専門用語の説明、レギュレーションの確認を終えた。

 ちなみにここで初めて撃たれたのだが、正面から体に当たったがそこそこに痛い。我慢できないわけではないが至近距離で撃たれたら間違いなく痛い、張っている背中や首に当たったら大ダメージになるというのが身をもって知った。

 『今回から初心者さんが参加しますので経験者の方、よろしくお願いします』

 と、アナウンスが流れれば自分たちと同じ赤のチームへと一礼しておく。

 フィールドを東西にわけて西側が自分たち、赤チーム、対する青チームは反対側だ。

 今回行われるのはフラッグ戦と呼ばれるものだ。

 チームが東西に分かれ、敵陣に置かれたフラッグ。(ここでは電子ブザー)を鳴らしたチームが勝利、フラッグが鳴らされなければ引き分けというシンプルなルールだ。

 待機スペースで伸びをする志麻先輩を見つければこちらに気づけば手招きされて。

「来たね、さっそく楽しもう」

「どういうルートでいきますか?」

「私についてきてサポートするもよし、自陣に残って防衛するも良し」

 事前に志麻先輩から受け取ったマニュアルでは、楽しむなら前に出るべき、という風に強く書かれていた。

 デコピンされる程度の痛みを覚悟するだけで楽しみが増し、奥に籠るだけではもったいないらしい。あくまでそれは志麻先輩の考えであって必ずしもそうではないと注釈はされていたが、確認の意味も含めて前に出たくはある。

「あ、じゃあ、俺はここに残ります。三人だと動きづらいでしょうし」

「そうかい? じゃあ、私と有真が前に出るとしよう」

「悪い、虎太郎」

「気にしないで、次は行くから」

 皆でポジションを決めれば待機スペースの中心へ。

『それでは、4分間のフラッグ戦――カウント!」

 とにかく、志麻先輩についていく。

「5!」

 カウントがはじまる、何故かゆっくりに聞こえる。

 脳内で一つ一つ決めたことを確認する。

 無駄な発砲はしない。

「4!」

 セーフティは解除済み、マガジンも入っている、スライドもさせた。

「3!」

 ――味方の邪魔にならないように。

「2!」

 ――当たったら大きな声でヒットコール。

「1!」

 ――走らない、走らない。

「スタート!」

 歩き始めた志麻先輩に続く。

 周囲のチームメイトも行きたいように行く。

 ”チュイン”

 ”バスッ”

 発砲音が響く。おそらくは電動とガスだろう。威嚇射撃か、それとも敵と会ったのか。

「敵! 左通路抜けてきているぞ!」

「ヒット! すいません、通ります!」

「櫓にもいるよ! 上にも注意して!」

 声が飛び交う中、志麻先輩と中央近くのバリゲードの裏に潜む。

「ここから先は厳しいかな」

 志麻先輩は顔だけ一瞬、出して状況を見る。

 こちらは後方から回られないように暗がりの通路や背後へと視線を向けておく。

 暗がりの通路は弾が飛んできている。通るのは自殺行為だろう。

 後方に下がることは出来るが、あまり意味があるようには思えない。

 考えていると志麻先輩に肩を叩かれ。

「前へ行こう、ただし頭をさげて腰を落として、中央フェンスの前までいく、右に三発ぐらい撃っておいて」

 志麻先輩の指示通りに動く。敵の姿が見えないのに発砲音が聞こえる。

 ――本当に気づかれていないのか?

 その思考が過るとバリゲードから動けない。

 志麻先輩の指示を無視して下がって迎え撃つべきか?

 ――心臓の鼓動が早くなっている気がする。

 こちらが動きを取れずにいる中、前方の志麻先輩が発砲した。直後のヒットの声からして仕留めたのだと思う。というかそう思いたい。

 志麻先輩が、身振り手振り、ハンドシグナルというものだろうか。指示を出してくれる。

 ”静かについてこい”

 という風に聞こえた。多分合っている。

 未だ発砲音や声は絶えない、そんな中抜けてこいといっているわけだ。しかも走らずにだ。

 ――大丈夫なのか?

 疑念がつきまとうが他の手が考えつかない、深呼吸を一つ。意を決して 指示通りに志麻先輩の後へとついていく。

 志麻先輩がそれに対してサムズアップで応じればどんどん進行していく。

 西側の櫓へと上って、敵を掃討。その動きに迷いはない、敵の確認を殆どしていないためだ。

 立ちふさがる正面の敵のみを見据えて討ち取るその姿は堂々としたものだった。

 ――一つ一つの動作は難しいことではない筈なのに。

 櫓の陰で志麻先輩を見失う同時に発砲音とヒットの声、そしてブザーが響いた。

 フラッグ戦終了を告げる音だ。敵のフラッグの位置へといけばそこには手を合わせてこちらに頭を下げる志麻先輩がいた。

「ごめん、いけそうだから行っちゃった」


 セーフティエリアへ戻れば、ゲームマスターが周囲を見渡して。

「今回のフラッグゲッターの方ー!!」

 にっと笑んで志麻先輩が手を挙げると拍手が起こる。敵味方関係なしに。

 ――いいプレイだった、ってことか。

 続けていれば自分もそんなチャンスが訪れるのだろうか。

「虎太郎、防衛の方はどうだった?」

「いつ敵がくるのかすごい冷や冷やした……撃ち合いになってそのまま終了って感じ」

 防衛は防衛なりに盛り上がってたようだ。次はそちらを試してみよう。

「二人とも、楽しんでいるかい?」

 次のゲームへの準備を進めてるなか、志麻先輩が問いかける。

 あの緊張感はそうそう味わえるものではない。

 ――夢中になって馬鹿をやれるゲーム。

 もし、敵をヒットさせることができれば、フラッグを取ることが出来れば、もっと楽しいのだろうな。

 だから、その問いに迷うことなく頷いて答えた。自分にとって思っていた以上の刺激だった。

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