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5.クリスマスプレゼント 2


「もう、メイったら何をやってるの? それは砂糖じゃなくてお塩じゃない!!」


「……えっ? やだあああっ!! どうしよう、ママ!?」


「残念だけど、それはもう失敗。作り直すしかないわ……メイったら家に帰ってきてからぼーっとして、どうしたのかしら?」


「なんでもない! えっと生地から作り直しだから、急がなきゃ!」


「メイ! 足元!!」


「きゃあっ!!」


 ガラガラガラガッシャーン!!


「もう、メイったらどうしちゃったの? 熱でもあるのかしら……うーん、ないわね。風邪じゃないということは……もしかしてメイ、恋でもしているの?」


 ガラガラガラガッシャーン!!


「もっもうっ! そんなんじゃないってば!! 変なこと言わないでママっ!!!」


「はいはい。そうね、ごめんなさい。パパが悲しんじゃうからもう言わないわ。でももし悩むことがあったらママが相談に乗ってあげる」


「ありがとう、ママ。ってそんなんじゃないもん。もうっケーキ作る時間が無くなっちゃう!」


「そうね、もう時間が足りないからママが手伝うわ」


「ダメっ! ケーキは私一人で作るんだから!!」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ちわーっす!」


「これレオン! もっとしっかり挨拶せんか!!」


「いってー!」


「そうよ、レオン! 全くこの子は……誰に似たのかしら……?」


「いらっしゃいテルジアさん、レオ君! 気にしないでいいのよー! それよりもメイがさっきからずーっと待ちわびてるわ。早く入って!!」


 ママったら!!! ひどいっ!!!

 別に待ちわびてなんかないもん。

 あ、でもレオが来ちゃった……どうしよう、どうしよう……


 結局時間が足りなくてケーキの形がいつもよりいびつになっちゃった。

 意地張らないでやっぱりママに手伝ってもらうんだった。

 こんなの、見せられないよ。


「昨日とはだいたい同じメニューだけど、チキンの味付けを変えてみたのよ? さ、レオン君たくさん食べてね!」


「おう! 任せとけ!!」


「我が家は女の子だから気持ち良いくらいに沢山食べてくれるレオン君を見るのが楽しみでね」


「大食らいの息子でごめんなさい。私も今日はスープも持ってきたのよ。メイちゃん、昨日食べられなかったって言ってたからちゃんとシチューも持ってきたのよ? 食べてね」


「わっありがとうございます。おばさんのシチュー大好きっ!!」


 美味しい! ママの作るシチューも好きだけど、おばさんのシチューは滅多に食べられないから特別な感じがする。この味はどうやって出すんだろう……今度教えてもらおうかな。


 やっぱりクリスマスは楽しいな。

 子供の頃からずっと変わらない感じ……昔はもっと家族ぐるみでお茶とか食事会もあったけど、最近は少なくなっちゃったもの。

 ずっと、このままがいいな。


「ところでケーキは? 俺、今日はケーキ食いに来たんだけど」


 うわっ! やだどうしよう!!


「ごめんなさい……今日は、あの……ケーキはないの」


「はっ? なんで!? あ、なんだあるじゃん!!」


 うそっ!? 隠してたのに!!

 パパが台所キッチンから持ってきちゃったみたい。

 もう、パパの馬鹿!! 

 形が変だから見られたくなかったのに!!


「うん、やっぱ旨いなー! メイのおばさんのケーキは!!」


「あらあら、ケーキは毎年メイが作っているのよ?」


「マジで!!? メイもっと早く言えよ!」


「な、何で!?」


「おばさんになら頼みづらいけど、メイになら食いたくなった時にすぐ頼めるじゃん」


 レオ、ケーキの形が変なのに気が付いてない……の?

 よかった……レオンの気が利かないところちょっと嫌だなって思ってたけど、よかった。

 それに、私もっとレオにケーキ作ってもいいんだ。

 わあ、どうしよう! きゃああああっ!!


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 何となく食事も終えて、パパママたちはソファーでくつろいでお喋りに夢中。

 私とレオは、いつものとりとめのない会話をしているだけなんだけど、なんでだろう。なんかドキドキする。

 昔はレオンもすごくお喋りだったのに、最近は相槌を打つくらいであんまり話さなくなっちゃったし、間が空くのが怖くて話題を見つけては話しかけるの、大変なんだけど……


「そういえばさ、メイ。ちょっとこっちこっち」


「きゃっ! なに?」


 急に私の手首をつかんで引っ張るレオンに驚きながら、そっと廊下に出ると、レオがセーターの中から包み紙を取り出した。

 レオンったらそんなところにずっとそれを入れてたの!?


「お袋たちが見たらギャーギャーうるせーからすぐ隠せよ? ほら、これやるよ!」


「これって……クリスマス、プレゼント?」


「まあな」


「ありがとう……あっあけても良い?」


 包み紙は、街の可愛い小物が売っているお店のものだった。

 もしかして、今日帰りに用事があるって、これを買いに行ってくれてたの……?

 丁寧に包装を剥がしてみると、赤地に白い雪の模様の入った可愛いマフラーだった。


「可愛い……! それに暖かい! ありがとうレオン」


「昨日もだけど今朝門の所でお前を待ってた時にすげー寒かったからさ。メイは肉がないから俺よりさみーんじゃねーかと思って」


 肉がないって……ひどい。レオンはいつも一言余計なんだから。

 でも、そうだ。私も渡しそびれてたんだ!


「レオ待ってて! 私もあるの、プレゼント! ちょっと待ってて!!」


 急いで階段をかけのぼって部屋に置いてあったレオへのプレゼントを取って戻り、そのままの勢いでレオンに押し付けた。


「はい。これ、レオン寒いんじゃないかなと思って、私もマフラー編んだんだ」


「おっやるじゃん! サンキュー!! ……っていうかこれ」


「あっ!!」


 私の編んだマフラーは紺地に白の雪模様だったの。

 色違いの、お揃いみたい。


「これは、また学園に行ったらどやされるなー……」


「ごめん……編み直すね」


「いや、何もそこまでしなくても……メイがそこまで嫌なら仕方ないけどさ」


「えっ!? 私は嫌じゃないよ!? どうして!?」


「えっ!? じゃあ別にいいじゃん」


「レオン、どこにいるの? そろそろ帰るわよ!!」


「おおおおおいっ!! それ早く隠せよ!! じゃ、俺帰るから! 親父とお袋には先帰ったって言っといて!!」


「わ、分かった」


 私のマフラーを抱えたまま慌てたように家を出ていくレオンを見送って、私も急いで部屋に戻って貰ったプレゼントのマフラーを丁寧にベッドの上に置いて部屋を出る。


 ふふっ。レオンからのプレゼントなんて初めて。


 明日の朝が楽しみだな。

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