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2.どきどきのクリスマスイブ


「行ってきまーす!」


ドアを開けると途端に刺す様な冷たい風。

はぁ~……今日も寒い。

暖炉の効いたぽかぽかの暖かい家から出ると一瞬で身体が凍りつきそうな寒さに思わず手袋をした両手で頬に手を当てる。


レオンはまだ布団からも出てないよね。しょうがないな。


いつものように、隣に住むレオンの家に向かい玄関のドアの呼び鈴を鳴らすと奥の方からトタトタと足音が聞こえ「はーい!ちょっと待ってねー!」と元気なおばさんの声が聞こえてる。


「おはよう。メイちゃん今朝は一段と寒いわね〜! いつもありがとう。レオンならまだお察しの通りよ。全くいつも朝ご飯作り損だわ」

「おはようございます。本当に寒いですね! レオンったら…まったくもう〜私に任せて下さい!」


美人で明るいレオンのお母さんの笑顔に迎えられて、家に入ると玄関にバッグを置いてすぐに見知った階段を急いで登る。

意味のないノックを二回して勢い良くドアを開けるといつも通りベッドの布団がこんもりとしている。


「レオン! おはよう。起きなさい!」


芋虫みたいになってる布団を勢い良く剥がす。


「うおっっ! さみっ!! 何すんだよ! 返せ!」


「寝ぼけてないでさっさと起きて! 遅刻しちゃうわよ!?」


「まだ大丈夫だろ。あと五分だけ…早くそれを返せ」


機嫌悪そうに私の持つ布団に手を伸ばして…ドスンッ!と大きな音を立ててベッドから落ちたレオン。

うつ伏せのまま落ちてパジャマのズボンも思いっきりずり下がった。


「きゃあっ! 朝から変なもの見せないでよっ!!」


「……へっ? おおおおおい! 何だよ! 俺のケツ勝手に見るんじゃねーよ! 」


「勝手に落ちて何行ってるのよ! もういいからさっさと着替えなさいよ」


「お前わざとだろ! メイが……そんなエロい奴だったとはなー」


バッシーンッッ!!!!


「行ってらっしゃーい! 二人とも気を付けてねー」


「いってー……」


「……ごめんね」


思わず思い切り引っ叩いちゃったせいで、レオは赤く腫れた右頰を抑えている。

力の加減間違えちゃったかな……でも、レオがあんなこと言うからいけないんだもん。

でも何か……レオン機嫌悪そう。

学園に着くまでに今夜の予定について話したかったのに、何だか気まずいな。

あーあ、またやっちゃった。暴力女って思われちゃう。私の馬鹿……


今日はクリスマスイブ。

私達の国の神様であるテレーズ様の初デートだった日らしいんだけど、それを記念して国民は毎年お祝いしているの。

この日は国中の皆が家族や仲の良い人達みんなでご馳走を囲むのよ。

私の家族とレオンの家族はもうずっと毎年交代でそれぞれのお家でパーティーをしているの。

今年は私の家でやるんだけど、何も言わなくても来てくれるよね?


そういえば大人になったら恋人同士で過ごす事もあるみたい。

私はまだ13歳だから分からないけど、いつかそんな日も来るのかな……。


「何チラチラ見てるんだよ? なぁ、俺、顔腫れてねぇ?」


「べっ別に!? うーん、少しだけ赤いかも」


「マジかよやべぇな……教室着くまでに引かねーかなー。朝から引っ叩かれた跡があったら何どやされるか分からねー」


「あっ……!」


「だから何でメイが赤くなってるんだよ。恥ずかしいのはこっちだってのっ!」


「ごめんなさい……」


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


「おはよう!」


「あっ!メイちゃんレオン君おはよー!」


「ちっ今日も一緒に仲良くご出勤かよ」


「メイちゃん……あんな奴に、優し過ぎるぜ」


「おい、レオン何だよそのビンタの跡」


「げっ!」


「お前……まさかメイちゃんに何かしたのか?」


「ちっ違うの! ヨハン君っ! これは私が悪いの! 今朝レオを起こそうとしたら変な物見せられてびっくりしちゃって……」


「メイッ!! 言い方!!!!」


「……テメェ」


「レオン君って……変態? メイちゃん大丈夫だった?」


「あっ違うの! ごめんレオ……」


ガラガラガラガラ


「まったく廊下まで響いて騒がしいわよっ! 黙れだまれっ皆の者〜!!」


「「「「「麗しのルッカ先生! おはよーございます!!」」」」


「はいっ! おはよーございます! 今日からクリスマス週間だけど授業は手を抜かないから心して挑みなさいよー」


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


「はい! 今日はここまでです! というのはうっそー! 部活もいつも通りやるからサボるんじゃないわよー!」


「「「「えーっ!」」」」


「ごたごたうるさい! 学生の本分は学びにあり! 遊ぶ事じゃないのよ!」


(……学園ここの先生、恋人いないっての真実マジなのかもな)


(数年前はルッカ先生もディアーナ先生も恋人がいたらしいぜ? その時は自習になって速攻で授業が終わったって姉ちゃんが言ってた)


(何だよそれ……公私混同甚だしくねぇ⁉︎)


(いやでもさ、その翌年はもっと授業内容が過酷だったらしいし抜きうちテストもあったらしいから、まだ今年はマシなんだと思う)


「そこ! お喋りしてるなんて良い度胸じゃない? ついでに補修でもやっとく?」


「あっ!!? あのっ! 違うんです! くっクリスマスは是非ルッカ先生のお家でパーティーを開きたいなってみんなで相談してたんです!!」


「「「「???????!!!!!!!」」」」


「あら……そうなの? うーん。家散らかってるけど、でも今年もディアと飲むだけだったし……生徒達みんなが来た方が賑やかで楽しいかも。いいわよー!各自貢ぎ物を持って先生の家に集合〜!! 1時間後ね!」


「「「「!!!!!!!???????」」」」


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


「くっそーヨハンの奴、調子いい事言いやがって」


「1時間後なんて、間に合うかなぁ」


「いいんだよそんなの守るやついねーって」


「うん。でも参加しないと全単位没収って言ってたし」


「まじで恐怖政治だよな。あーあ今年もおばさんの焼いたケーキ楽しみにしてたのによ」


「えっ!! レオン⁉︎」


「何だよ、毎年の事だろ?」


「うっうん…そうだけど」


……そのケーキを焼いてるの、私なの。

そっか。レオ、楽しみにしてくれてたんだ……。


「えへへ」


「なんだよ急に気持ち悪いな」


「何でもなーい! 明日、明日食べればいいじゃない? うふふ」


「そうだなー。何かメイ顔赤いぜ? どうしたんだよ」


「なんでもないってば! ほら、早く帰ろう? 急がないと間に合わなくなっちゃう!」

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