剛をモデルに
「まあ、ね。短編でさわりをチラッと書き逃げするつもりだったから、どうでもいいんだけどさ。」
奈美は、カフェオレに映りこんだ自分の姿を見て苦笑した。
あんなに、盛りぎみに話していたのに…。
遥香は困った人を見るように、そんな奈美を見つめながら、あのWindowsがどうこうと言う前置きを思い出して少し呆れてしまう。
奈美は、話を大きくするのが好きだ。フリマでも、楽しそうにお客さんに商品の身振り手振りで派手な話をする。それは、時として楽しく、また、危うく感じてしまうことも遥香にはあった。
「どんな話を発表するつもりだったの?」
遥香は、子供に話しかけるように優しく問いかけたが、色々と心中が複雑に荒れている奈美は、捕まったばかりの野生の猿が飼育員と餌を見るように、失望を顔に浮かべてチラリと遥香を見てから、
「大したことは、考えてないわ…。ただ、剛と同じ星座だって言うから…、あのギターのエピソードを使って、ふざけた話を作ろうと思っただけよ。」
奈美は口を尖らせて、自分の失敗に思いを寄せていた。
「ギターの話?」
遥香は、そのエピソードを思い出そうと眉を寄せながら奈美に聞いた。聞かれた奈美は、下らない話をした事に気がついて、謙遜しながら
「ああ、大したことは無いのよ。本当に(と、赤面しはじめる。)。なんとなく、ノストラダムスの事を調べていたら、学生時代に学費の支払の記録が無いらしくて、滞納したのか、免除しされたのか、考えていたのよ、私、剛だったら滞納だなぁ…なんて思って、学費を使い込んだノストラダムスの話を作ったの…。」
奈美は、自分のゲームのリプレイを解説しているように、ばつが悪そうな顔で回想しながら話した。
「で、ギターの話は、どこに出てくるの?」
なかなか話の核心を得ないことに苛立ちながら、遥香は奈美に聞く。奈美は、考え事に気を削がれていて、遥香の苛立ちなど考えもしていない。
「だから…。」と、奈美はイタズラが親にバレた子供のように、言葉にする抵抗をため息で緩和しつつ、話をつづけた。
「剛が学生時代に、フォークシンガーに憧れて、親にわがままを言って、ギターを買ってもらった話があったじゃない?半年もねだりまくって買ってもらったギター。一度弾いたら指が痛くて使ってないって、あの話。ノストラダムスが、剛みたいな性格なら、学費を使い込んで、リュートとかを買って使い込んだりしたかなぁ…なんて、馬鹿馬鹿しい小話を考えていたのよ。」
奈美は、全ての設定を話して、懺悔を終えたようなスッキリとした気持ちになった。
ああっ。あの三万円の…ギター。
遥香は、コーヒーを口元に運びながら、ふと、剛がその話を告白したときの事を思い出して、思わず吹きそうになり慌ててコーヒーをテーブルに置いた。
「そんな話。何が面白いの?」
剛は、疑うように奈美を追求し、奈美はヤケになりながら、ぶっきらぼうに解説し始めた。
「まあ、史実から離れちゃったし、もう、書かないけど。面白いわよ。ジーさんとお母さんに甘やかされて、都会で遊びまくって、ついつい、学費に手を出して、学校に催促され、親に泣きついたら久しぶりに帰ってきた、マッチョな父さんが鉄拳制裁するんだよ。ノストラダムスを。誰もそんなミッシェル見たことないはずだし。」
奈美は、遠くを見つめて呟いた。
「まあ、今となっては、どうでも良いんだけれどね。」