エスメラルダ
エスメラルダ…旅芸人の娘…って、誰(○_○)!!
いきなり始まる昔の話のキャラクターに奈美はビックリした。
『ノストラダムスをしってるかい?』は、故郷を離れて、アヴィニョンの街で学生生活をする、ミシェル ノートルダムと呼ばれた青年の、間抜けでほのぼのした話のはずだった…
いや、そんな風に記憶していたので、ここに来て、突然、登場する美少女エスメラルダにビックリしたのだ。
い、一体…私は何をしたかったのかしら。
奈美は恐る恐る話の続きを読む。
古い未完の自作を読み返す作者なんて、ホラーゲームで廃病院をさ迷うゲーマーのような心理状態なのよ、皆。
奈美は、勝手にweb小説家の心理を決めつけ、から元気を貰って先を読む。
作者にとって、例え、登場するのが王子だろうか、美少女だろうが、把握できないキャラは、ゲーム上のゾンビのような存在なのだ。突然の登場は恐怖でしか無い。
設定ノートにコメントがあった。
“他の人の作品を見ていての感想。
webの作品では背景などの描写は無い物が多い。でも、人が集まってる。
不覚にも読んでしまった。
私は本好きだから、こういう文章は嫌いなんだけど、この作品は読める。
感想を見ながら分かった。ネット小説って、劇と本の間の表現方法だ‼︎
描写のないところは、読者と作者が対話しながら埋めていく‼︎
上手い人ばかりでは無いけれど、話上手な人間は、読者の夢を飲み込んで物語を進化させていくわ。まるで、中世の吟遊詩人のように、貴婦人を虜にする。”
「ごめん、私にはよく分からないわ。」
友人の晴香が、小説の設定を聞いてそういった。
私だって分からないわ( ;∀;)
一昨年の忘年会のノリノリの自分を思い出して奈美は発狂しそうになる。
当時の奈美はこう続けた。
「ノストラダムスの時代。エクリは音読されるものだったわ。読めない人は、素敵な吟遊詩人に旅から旅への物語を聞いたはずだわ。もしくは、村の暗唱上手に読んで貰ったんじゃないかしら?赤毛のアンみたいに。」
赤毛のアン。いい例えだと奈美は思った。
現在の奈美は、こんな自分の発言を消し飛ばしたい衝動にかられる。
「赤毛のアン」とかいってる時点で、中学辺りからラノベ関係をよんでいない事が丸わかりじゃ無いだろうか?
実際、奈美は読書の時間にサラリと読んだ記憶で話していただけだ。
漫画は好きだったけれど、怪奇物や猟奇殺人関係のものが好きだったのだ。
奈美の母は、奈美がそんな物語ばかりを読む事を嫌っていた。
そして、たまに付き合いで読む少女漫画のラブシーンが過激すぎるとぼやいていた。
今時の女子高生の恋愛とか、母親との面倒な話が嫌いだった奈美は、web小説の感想欄でそんなコメントが求められるのも面倒な気がしていた。
だから、とりあえず、赤毛のアンのガイドラインで物語を作ろうと考えたのだ。
が、周りを見渡す限り、そんな作品は上位ランカーには居ない。
異世界
ザマァ
追放ものが流行っていた。が、これすらもすでに時代遅れなのかもしれなかった。
設定ノートに舞台について書いてある
“時代は16世紀初め。花の都フェレンツェでは、ルネサンスが枯れる前の大輪のバラのように花開き、
15世紀の中ごろ、同じく活版印刷の恩恵を女に対する憎悪を果たすために使った男の本がヒタヒタと底知れない恐怖を飲み込んでヨーロッパを蝕んでいるの。
『悪魔の鉄槌』それは、人間を一瞬で魔女に変える魔法の本よ。
夢溢れた新しい事柄も、時代とともに飽和して枯れてくるわ。1517年。今から約500年前の12月14日。プロバンスの立派なお家の坊ちゃんの、14歳の誕生日のお祝いが催されるわ。彼は、人生の分岐点にいるわ。ミシェル ド ノストラダムス。来年の新学期には、アヴィニョン大学に入学する”