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ノストラダムスを知ってるかい?  作者: フリマジンA
改変
2/16

再開

すいません、遅くなりました。

以前の話から随分とリニューアルしています。

よろしくお願いします。

まあ…小説の更新のお知らせ、が無難ね。


奈美は、未完のまま放られた作品をクリックする。

『ノストラダムスを知ってるかい?』


うぁぁっ(///ー//)

題名に、言いようもない恥ずかしさが込み上げる。

それにしても、なんでノストラダムスなんて書こうとしたかな?


一年前の自分に文句を言いながら題をクリックする。

すると、いちだんと恥ずかしさが溢れ出してくるような出だしの言葉が…

目眩めまいをおこさせる。


リメンバー2018あれはいつもの喫茶店でのお話。


「さて、とうとう、歴史に来たわ。」

奈美は、タブレットを前に闘志を燃やす。歴史。なんて難解で、知的なテーマなのかしら。

奈美は嬉しそうに目を細める。

「まだやるの?」

剛は面倒臭そうに奈美を見る。二人は最近ネット作家になった中年男女だ。ちなみに趣味はフリマ。

職安の職業訓練で知り合い、生活不用品をお金に変えてるうちに、フリマの底知れない魅力にハマったのだ。不用品から手作りフリマを体験し、とうとう、小説フリマに挑戦だ。

しかし、小説フリマの道は、修羅の道。辿り着けるとは限らない。


「当たり前よ。歴史は昔から好きだし、子供達に伝えたい人達が沢山いるんですもの!

少子化の現代、こうして、誰かに話せる機会がまた来るなんて、嬉しわ。」

奈美は微笑んで剛を見た。

「頭良いんだね。」

剛は少し不満げに言った。いつもはおかしな事ばかり話す奈美は、

時折、偉い人のような話し方をして、剛のよく分からない話をする。

そんな時、剛は、なんとなく、イライラする。

「どんな人の話を作るの?」

興味深そうに晴香が聞いた。晴香も職業訓練で知り合い二人をフリマに誘った人物だ。

「ノストラダムス。」

よくぞ聞いてくださった。と、ばかりに、挑みかかるように奈美は挑戦的な視線を晴香に投げかける。


「ノストラダムス…あの、1999年人類滅亡の?」

晴香は、穏やかに聞き返した。確かに、実在する人物だが、色々脚色された話が錯綜し、あまり子供達に興味を持って欲しい人物とは言い難い。どんな意図があるのか?晴香は、奈美の次の言葉を待った。

「ミシェル ド ノストラダムス。ええ、同じ人物よ。けれど、肩書きは違うわ。それでは、誰も見向きもしないもの。預言者で、医師、そんなもの、私の狙う読者には興味ないもの。あのネット小説の世界で、歴史上最も興味深い人物にして、ノーマークキャラ。それがノストラダムスよ。」

奈美は勿体ぶって、それと、自分の興奮を少し抑えるためにコーヒーを口にし、続けた。

「ノストラダムスはね、世界三大ベストセラー本の作家なのよ。私の記憶とインチキくさい(ノストラダムスの情報は往々にしてあるのだが。)知識によると、世界で最も売れた本はね、聖書と、悪魔の鉄槌、そして、ノストラダムス氏の予言集…だったかな。私は諸世紀の方が馴染みがあるんだけれど、ね。」



三大ベストセラー作家ねぇ…(ーー;)


奈美は、登録時の事を思い出して赤面する。

物語の設定用のノートにデカデカと書かれる『三大ベストセラー』の文字に心臓を射抜かれながら、再開のために考える。


剛、まっさん…生きてるわよね…


奈美は、羞恥心やら、面倒くささやらで、気持ちが混乱しながらも設定ノートの文字に、懐かしい喫茶店でのお茶会を思い返していた。


いっそ、この作品を消して、新しい物語を作ってしまいたい。

でも、削除はしないで欲しいと、削除画面が訴える。


それはサーバーの為の文字だが、コロナで生活が変わった現在、『この時代を忘れないで』と、思い出に訴えられている気持ちがして切なくなる。


かつて、仕事の契約が切れて無職になった。

その時、職安で知り合って仲良くなった私達…

あまり、誉められた出会いでは無いけれど…


災害が、景気が…色々な家庭の事情が、我々を職安に集つどらせたのだ。


あのときは、名古屋に行くのだって、ほぼ夢物語の状況だったけれど、

なんとか、隙間仕事をこなしながら生きている。



「確かに本が売れてたとして、それほど興味を持たれる人物には思えないわ。」


あの時の晴香はるかの意見は真っ当だった。

でも、こんなパンデミックの世の中になり、動画サイトでノストラダムスは蘇り、

ユーチューバーに煽られて、新しい予言を語り出したり、ゲームキャラとして異世界チートな存在に転生していた。


世の中、一寸先は闇ね( ̄ー ̄)

奈美は恥ずかしさの動悸とともに、昔のイケイケの自分が脳裏によぎるのを感じた。


「普通の人は、確かにね。でも、私の客は、自分の才能を試したい作家志望の人か、そんな夢を見てる人が好きな読者なのよ。で、上位ランカー100人以外は、私を含めて底辺作家ってわけ。

そんな私達がその人生を知りたいと思う歴史上の人物。それが、働き者で人付き合いのいい、

昭和のモーレツ社員の様な豊臣秀吉や、

切った爪の数まで数えさせるブラック上司の様な織田信長なわけはないわ。」

奈美は、当たり前の様に言ってのけたが、晴香は呆れた様に言い返す。


「でも、秀吉も、信長も、人気があるわよ。奈美、あなたの投稿するサイトでも、沢山の人が作品にしているわ。」

「そうね、確かに。彼らは不動の人気はあるわ。だから、作品を上位ランカーといきなり比べられるのよ。運が悪ければ、池波正太郎とかのゲームのラスボスみたいな、

立派な作家を例に挙げられて痛い目に遭う確率が高くなるのよ。」

奈美は、物思いをしながらため息をついた。それから、挑戦的に晴香を見て言葉を続けた。

「フリマの法則は、ここでも生きてるわ。『誰も売らないものを売れ。』よ。検索したけれど、ノストラダムスの作品は殆ど無いし、今、私が出せばその作品は無敵。比べる相手が居ないんだから、当たれば丸儲け。どうせ賭けるんなら、私は万馬券にかけるわ。」




ま、万馬券……


奈美は、自分の言葉に頭が痛くなってくる。

万馬券は、ハイリスク、ハイリターン。

恥だけかいて、0円退場。その確率が高い、そんなゲームを頼まれもしないのになんで始めたのだろう?


当時、ウェブ小説について知らなかった奈美はドンキホーテのように、見えている世界の理ことわりを理解できていなかった。

ただ、夢中だから書いて、そのまま、更新できずに止めていた。


仕事が安定すると、書籍化とか、賞金なんて狙うより、コツコツ働くほうが実入りが良くなり、新しいコロナの時代に適応することに気がいってしまったのだ。


再開する。


完結を目指して。多分、もうフリマをすることはないだろう。

これが最後のクラブ活動になる。そんな予感がして、奈美の気持ちは引き締まる。


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