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名前決め

小百合が少女をリビングに連れてきた。


「連れて来たわよ。」


少女は、髪や顔の汚れが落ちたため、とても綺麗な美少女になっていた。

それを見た不知火は、少女の変化に驚いていたが、白夜は少女が美少女になったことなどまるで気にしていなかった。


「じゃあ、本人も来たことだし、名前考えるぞ。」

「そうだな。じゃあ、そこの空いてる椅子に座ってくれ。」


不知火の言った椅子に少女は座った。

4人でテーブルを囲むように椅子に座って小百合が話始めた。


「それでこの子につける名前のいい案ある?」

「人の名前考えるのが苦手なのでお前たちに丸投げしに来ました。」

「お前も少しは考えろよ。」

「白夜さん、少しは考えてくださいね。」


小百合は、魔力を出しながら怖い目の笑顔を白夜に向けて言った。


「分かったから、魔力を出すな。」

「分かればいいんです。」

「でも名前なんてどうするんだよ。」

「お前は、どんな名前がいいんだ?」

「私は、どんな名前でも構いません。」


少女は、自分のことを話しているのに、まるで興味がないように無反応だった。

その反応に白夜は、心底面倒くさそうに不満を言った。


「本人がこれでどうやって決めるんだよ。」

「まあ、これじゃあ決めにくいな。」

「そうですね。」


三人は、それからずっと話し合いながら考え続けたがなかなか決まらず、気づいた時には夕方になっていた。


「もう夕方か。」

「そうね。暗くなってきたから明かりをつけるわね。」


小百合がそう言って席を立ち明かりをつけに行った。少し経つと部屋が明るくなり小百合が席に座った。


「もう疲れた。」

「それには同意するけど、頑張りなさいよ。そもそも、あんたが買ってきたんだから。」

「本来、俺たちが考えることじゃないんだからな。」

「じゃあ、もう月夜でいい。」

「かなり適当に決めたんだろうけど、まあいいんじゃないか。」

「ええ、私もそれでいいと思うわ。」

「そうか。じゃあ、お前の名前は月夜だ」

「つくよ、ですか?」

「ああ、じゃあこれからよろしく、月夜。」

「はい。よろしくお願いします。」


相変わらず無表情のままだが、小百合と不知火は微笑ましいように見ていた。


「さて、帰ろうと思ったが、腹が減ったから晩飯を食べて帰っていいか?」

「ええ、構いませんよ。ただし、白夜さんが全部作ってくださいね。」

「そうだな。この子の服のお金どうせ持ってないんだろ。」

「ああ、手持ちを全部使って買ったからな。」

「どうして、そこまでして私を買う必要があったのですか?」


先ほどまで、自分から全く話さなかった月夜が、珍しく自分から話したことに驚いたため、質問に答えるのが少し遅れた。


「別に、大した理由なんてないさ。ただ、お前が、俺が手に入れられなかった物をくれる気がしたからな。それにかけてみようと思っただけさ。」


白夜の回答に、月夜は先ほどまでの無表情を崩し、心底驚いた顔をして白夜を見つめていた。


「私は、名前すら持っていなかった奴隷ですよ。そんな私に手持ちのお金をすべてかけたっていうんですか?」

「そうだよ。」


その回答に、月夜は白夜の異常さに初めて気が付いた。

奴隷をこき使うわけでもなく、性的なことが目的でもない。ただ、欲しいものが手に入る気がしただけで、手持ちのお金をすべて使うような人を異常と言う以外に何も言葉が出てこなかった。


「私に、そこまでする価値はありませんよ。」


月夜の言葉に、白夜は何を言っているのか分からないと、言いたげな顔をしていた。


「お前は、何様のつもりだ?」

「え!?」


白夜の言葉に今度は月夜が、驚き何のことか分からない顔をした。


「お前は、他人がお前に向ける価値をすべて分かっているのか?」

「それは、分からないけど。」

「なら、勝手にそれらすべてが無価値などと言うな。他人の考えを理解もせずに決めつけるのは、ただの偏見だ。」

「分かりました。今度から気を付けます。」

「分かればいい。」


白夜と月夜の話が終わったところで、小百合と不知火が会話に入って来た。


「まあ、白夜の行動が異常なのはいつものことだから気にしなくていいよ。」

「さらっと、酷いこと言ったな、おい。」

「事実でしょう。それより、早く晩御飯作って来てくれない。」

「こっちは、人使いまで酷いな。わかったよ。作ってくるから月夜のこと頼んだぞ。」


そういって白夜は、リビングから出て行った。


「さて、これで君と落ち着いて話せる。」

「まず、あなたに言わないといけないことがあるわ。」

「なんですか?」


小百合と不知火は、少し間を開けて続きを話し始めた。


「「白夜のこと、よろしく。」」

「え!?」


月夜は、予想していなかった言葉に驚いた。


「私たちも白夜と出会って、まだ3年くらいしかたってないから、あまり詳しく知っているわけじゃないけど。」

「あいつは、感情がほとんど分からないんだよ。分かるとしたら、楽しいと悲しいくらいだ。」

「でも、実際に自分で感じたことのあるのは、楽しいくらいだと思うわ。」

「どうして、そんなことに。確かに変わった人だとは思いましたが。」

「あいつは、3歳の時、親に捨てられている。それも、魔物や猛獣が多くいる森に捨てられたんだ。」

「私たちは、それが原因んだと考えているわ。」

「捨てられた!その後、どうなったんですか?それに、今は普通に生活できているのは、なぜですか?」


月夜は、理解できなかった。

物心ついていないころに捨てられて、生きていることも奇跡なくらいすごいのに、その上で奴隷を買うことが出来るだけのお金を稼いでいるとなると異常だ。

それに、そんな悲惨な過去を持っているのに、普通の人と同じように笑っていられることが異常だと思えた。


「彼の話だと、森では修行をしながら魔物や猛獣から隠れて生活していたそうよ。そして、魔物や猛獣を狩れるくらい力がついて生活に余裕が出てきたところで、森から出てきたらしいわ。」

「森から出た後は、町を一通り見て回った後、冒険者になってお金を稼ぎ始めたらしい。その後、いろんな店にどうしたらアイデアを出して、少しずつ町の人の信頼を築いていったらしい。」

「あの人は、本当に人間ですか?」

「まあ、一応人だよ。」

「彼は、誰よりも人に憧れているのよ。」

「君が人の心や感情を与えてくれると思ったから君を買ったんだと思う。」

「私には、そんなことできないと思うのですが。」


小百合と不知火の話を聞いて、月夜は白夜がなぜ、自分を選んだのかまるで理解できなかった。


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