終章
「巽さん、犯人捕まったんですね」
例の行方不明リストの一人が、一か月前遺体で発見された。
死因は、ひき逃げによる出血死。
五年前。親と口喧嘩した女子中学生が、家を飛び出して、国道沿いを一人歩いているところを、後方から来た大学生グループの車にはねられた。彼らは助けを呼ぶことなく、女子中学生の遺体をそのまま崖下に落とし、帰路についた。その大学生グループが今朝捕まったのだ。
「ああ。例の遊園地に胆試しに行く途中だったそうだ」
巽は苦虫を潰したような表情を隠そうともしない。
「親からすれば、行かなくてよかったですね」
何処とは、敢えて言わない。
「そだな……」
巽は短く答える。
あの不思議な一夜、それも数時間の体験から三か月が過ぎた。
結局のところ、勇也たちは、男子大学生の幻影映像を見ることを拒否した。
今でも、あの少女の姿をした人鬼の顔を思い出す。勿論、ウサギのレン太もピエロもだ。
勇也が「いや、知りたくないな」と答えたあの時、少女は一瞬呆気にとられたが、すぐにカラカラと声を上げ笑った。
ひとしきり笑った後、麗はニヤリと笑った。ニヤリとーー。
その黒い笑みを間近で見て、勇也の体は凍り付く。もののけとしての本性が、一瞬、垣間見えた気がした。だがそれに反して、精神は凍り付くことはなかった。妙に冷静にこの状況を把握出来ていた。
彼らが自分に対し、妙に関心があることは、始めから感じていた。だから、危険だと承知しながらも、思い切って尋ねた。
ーーどうして、自分にプラチナチケットを送ったのか、を。
あの時、勇也が「知りたい」と答えたなら、たぶん、今この場所にはいないだろう。無事帰って来れた勇也に、涼と華はそう告げた。それは大袈裟ではなく、事実だということは、勇也が一番理解していた。
何故、彼らが自分にあれほどの関心を示すのか。
何故、わざわざ人間の肉体を手に入れてまで、自分たちの敵である人間の世界に来るのか。
何故、SNSを最大限まで利用し、人間を呼び寄せるのか。
疑問は、まだまだ色々ある。
あの時「知りたい」と答えたのなら、彼らは喜んで教えてくれたかもしれない。もしかしたら、その言葉を欲するために園内ツアーを組んだのかもしれない。
でもそれはーー知ってはいけない、真実。
リスクを負ってまで、知ることじゃない。行き過ぎた好奇心は、身を滅ぼす。だから勇也は、「知りたくない」と答えた。そしてその足で、皆でドリームキャスルを出た。
その瞬間、不思議なことに、勇也たちは裏野ドリームランドの跡地に立っていた。記憶を失うこともなく。時計を見ると、二時間ほどしか経っていなかった。どうやら、時間の流れは、向こうもこちらも然程変わらないらしい。
実際、跡地に戻れた人間は何人いるだろうか。
気になるが、帰りの車の中で、その話題をする者はいなかった。
事務所に戻った勇也は、行方不明者リストを精査した。
記憶を失って戻ってきた人がいたグループを除外する。満月に開園する点から、いなくなったとされる日が、満月の日より前も、また除外した。すると、絞られた人数は十二人。
……あのウサギの言う通りだった。
勇也は時々思い出す。
あの幻想的なイルミネーションに彩られた遊園地をーー。
『クリスマスイベントが始まったから、迎えに行くね』
ふと……レン太の楽しそうな声が聞こえた気がした。
今回で最終回です。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございましたm(__)m
少しでも涼んで頂けたら、嬉しいです。




