お正月企画!!桐谷茜主催新年会
「あけましておめでとうございます、今年もどうか我々をよろしく頼む」
晴れ着姿で頭を下げる黒髪の女、彼女は生徒会長、桐谷茜
そのカリスマと我儘で様々な問題とぶつかって来た女だ
「と、いうわけで全員集合させたのだが」
「何がと、いうわけよ」
いつの間にか制服に戻っている茜に対してふてぶてしく相槌を打つのが、生徒会一年生の東西美遊だ、長い赤茶の髪を弄りながら欠伸をしている、明らかに正月ボケだ
「何を腑抜けているのだ?」
「だいたいね? 今夏じゃないの?」
「それ以上はいけない!」
「それよりこれはどういう事よ」
美遊が指差した先では大勢の人達が集まっている、見たことのない人も数人見受けられる
「あぁ? 時空をちょっとな......」
「時空を!? 時空ってなによ!?」
「これが今回の参加者だ」
桐谷茜
東西美遊
岡部
マイケル
田原楓
橘
安堂千夏
ライラック
アイリス
ハードボイルドさん
メリーさん
「会長、あけましておめでとうございます」
「岡部か、今年も頼むぞ」
茜に声をかけたのは、生徒会副会長の岡部、眼鏡以外に特徴という特徴がない男だが、茜へ対する忠誠心は見事な物だ
「必ずやご期待に応えてみせます」
「それでこそ私の部下だ」
「会長、2名ほど不参加がいらっしゃるのですが」
「あぁ、年末年始も2人で過ごしたいと断られたよ」
「そうですか」
「では宴を始めようではないか! 新年会の始まりだ!」
茜の合図で皆グラスを手に持つ、勿論学生にはアルコールは渡されていない
「では皆の者! 今年も頑張ろうではないか! 乾杯!」
「乾杯!!」
こうして茜主催の新年会が始まった、ここからは各テーブルを見ていこう
「めでたいでござるなぁ、新年でござるか」
緑茶を啜る侍、和服姿に髷を結い、腰には刀を下げている彼はマイケル、見た目は中年の侍だが、自称米国出身の男子高校生である
「侍! まさか新年早々に侍を見れるとはね」
マイケルに声をかけたのは安堂千夏、黒髪を2つに縛り、ぴょこぴょこと揺らしているが、本当の姿は有り余る怪力で周りの物を破壊する女生徒である
「おぉ千夏殿、今年もよろしく頼むでござるよ」
「刀抜いてよ! 何かやってよ!」
「いやはや、それはできぬでござるよ」
「えぇ、なんでさ」
「そうだそうだー!」
話に乗って来たのは銀髪の女、メリーさんだ
「やや、初めましてでござるな、確かメリーさんでござったか」
「そうだよ、それ刀だろ? シュパパってやってよ! 変な格好したおっさん!」
「ぐぬふぅ!?」
メリーさんの何気ないおっさん発言がマイケルを襲う、千夏もそれに続く
「侍! 刀の抜かない侍なんて侍じゃないよ!」
「だめでござる! 抜刀だけはだめでござるよ!」
「いいじゃん......」
その瞬間銃声が鳴り響きメリーさんの額に穴が開く
「「......ひっ!?」」
メリーさんは音もなく倒れた、そして倒れたメリーさんの後ろに立っていた男は不機嫌そうにメリーさんの襟を掴む
「邪魔したな、迷惑をかけた」
彼はハードボイルドさん、謎の多い裏の萬屋、金が貰えるなら何でもやる、最近メリーさんに取り憑かれた
そしてメリーさんを引きずりながら去っていった
「なんなんでござるか、あの男」
「さぁ?」
「旦那ー!? いきなり撃たないでくださいよー!」
引きずられながらメリーさんが意識を戻したようだ、額の穴は完全に塞がり外傷は全くない
「うるせぇ、あまり目立ちたくない、そして周りに迷惑かけるんじゃねぇ」
「旦那ー! まだ私あの侍に話がぁぁぁぁ.....」
メリーさんの叫びが遠のいていく
「本当になんなんでござるか」
「さぁ?」
そして別のテーブルには茜と金髪の少女、彼女は生徒会2年の田原楓、小さな体でモーニングスターを振り回す女生徒だ、常に笑顔で場の空気を和ませる力がある
「会長ー! これおいしいよー!」
並べられた料理を食べながら楓の表情がいつもより緩んでいる
「そうだろうそうだろう! 岡部が頑張ってくれたからな」
「でも会長かまぼこしかたべてないよねー?」
「かま......ぼこ? 何だそれ?」
同じテーブルにいた女が口を開く、歳は20歳にも満たない見た目をした女、程よく日焼けした肌に少し癖のある長い黒髪の彼女はアイリス、見るからにおかしいのは頭部に猫のような耳が生えて、大きな狐の尻尾を揺らしている、さらに開いた口には伸びた二本の牙が見える
「何だ貴様、かまぼこを知らないのか?」
「知らないゾ! うまいのか? それうまいのか!?」
「当たり前だ、この国日本の伝説の食料、nerimonoの1つだからな」
「おぉ、食べる! 食べるゾ!」
アイリスがフォークをかまぼこ目掛け突き出すが、茜の箸の方が早かった
気付いた時には茜がわざとらしくかまぼこを加えている
「く、イジワルだゾ! お前!」
「むぐむぐ......ん、うまい」
「こ、このぉ!」
アイリスが茜に飛びついた、マウントを取るが茜は笑っていた、仰向けのままアイリスの頭を撫でる
「はっはっは! お前みたいな可愛い娘は虐めたくなるんだよ、私は」
「変な奴だな......お前」
アイリスが気を許した瞬間、茜の口端がニヤリと釣り上がる
「楓!!」
「あいあいさー!」
茜の指示で楓がアイリスの尻尾に飛びついた
「お前! 何をしている!?」
「すごいよー! モフモフだよー! 何これー!」
「やめ、やめろぉ!」
茜がアイリスの下から脱出、一瞬で背面に回り楓と尻尾をモフり始めた
「これは......中々だな」
「ねー!」
「いつの間に!?」
「一本......欲しいな」
「いみゃぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
ベランダにて星を見上げる男が1人
グラスに注がれたビールを傾けながら寒空の下、白い息を吐くこの男はライラック、水色の髪が特徴的な30歳前後のこの男は大工である
振り向くと岡部が立っていた
「おや? 確か、岡部君だよね?」
「外は冷えます、どうぞ中へ」
「いやいいんだ、外からこの建物を見たかったから、それに」
「それに?」
「星が出ている」
「星ですか」
「ありがとう、あんなに楽しそうなアイリスは久しぶりだよ」
窓から中を眺めると、茜と楓がアイリスの尻尾をモフっている
「楽しそう、ですか?」
「うん、同年代の女の子と話した事すらないからね、アイリスは」
その時ベランダの扉が勢いよく開かれる、中から出てきたのはメリーさんだ、2人を指差し叫ぶ
「見つけたぞ! 地味ーズ!」
「「じ、地味ーズ?」」
「その通り! このメンツの中で明らかに地味な2人だ!」
「ストレートな方ですね」
「まぁ、元気があっていいじゃないか、ほら旦那さんが待ってるでしょ? 戻った方がいいよ?」
メリーさんが優しく諭すライラックを見上げる
「優しいな、旦那にも見習って欲しいものだ、旦那はすぐ発砲するし、私に穴開けるし、野蛮だし、自分勝手だし」
「「はぁ」」
((多分原因は貴方だけどね))
「そうだ地味ーズ! 早く席に戻れ! 大変なんだ!」
「「え?」」
一方最後のテーブル
「.........」
「.........」
(気まずいわ)
無言のまま酒を飲むハードボイルドさん、丸テーブルでその隣に座り無言でオレンジジュースを飲む東西美遊、気まずいのはもう1人にも原因があった
「にゃっはっはっは! 新年に何葬式みてぇな面してんだ? お?」
笑いながら上機嫌で酒を飲む金髪の女、橘である、普段は常識のあり、面倒見のいい彼女だが、厄介なのは酒癖の悪さ、一度酒を飲み始めると止まらなくなり、上機嫌の甘え癖がつき手がつけられない、これでも美遊の恩人である
「橘さん、飲み過ぎです」
(きっとハードボイルドさんは静かにお酒を嗜みたいんだわ、橘さん空気読んでください)
「あぁ? 新年のめでたい日だぜ?」
「ですけど」
(お願いメリーさん! 早くあの2人を連れ戻して!)
元々この席は5人いたのだ、橘、岡部、ハードボイルドさん、ライラック、メリーさんの5人、お酌係として岡部がいるものの全員成人のこの席ではアルコールが振舞われていた
しかし開始早々メリーさんが逃亡して見た目につられてマイケルの元に、元々マイケルの席にいた美遊が橘に拉致されてこの形になり
ライラックのコミュニケーション力により場は持っていたが、彼が風に当たりに外に出て、ハードボイルドさんがメリーさんを連れ戻しに去り、戻った後岡部がライラックを気にして席を離れてしまい
美遊の危険を察知したメリーさんが地味ーズを呼びに行ってしまった
そして今の状況である
「よし美遊」
「はい?」
「脱げ」
「脱ぎませんよ! 脱ぎませんよぉ!?」
「......」
こんなやりとりしてもハードボイルドさんは無言のままだ
「みゆぅぅぅ!! かわいいなぁかわいいなぁ!」
「ちょっ! ひっつかないでくださいよ!」
「......」
こんな会話をしていても彼は無言だ、両極端の2人に挟まれて美遊は苦しんでいる
「あの......」
美遊が恐る恐る口を開く
「何だ?」
意外なことにハードボイルドさんは答えてくれた
「何だぁ! その目はぁ! ういぃっく! 私の美遊に何て目を向けてんだてめぇ!」
「橘さんはややこしくなるので絡まないでください!」
「美遊に怒られた......生きていける気がしないぜ」
橘はがっくりと項垂れる
「嬢ちゃん悪いな、俺はこういう場に慣れちゃいないのさ」
「あ、いえ」
そこにメリーさんの叫びが響く
「旦那ー! そこまでですよ、その茶髪の子が困ってるじゃないですかー!」
「うるせぇのが戻って来やがった」
ハードボイルドさんは煙草に火をつける
「ふふーん! いいんですか? 今の私にはこの地味ー......のわぁぁぁぁぁぁ!?」
「嬢ちゃん釈してくれよぉ! 美遊が、美遊が釣れねぇんだよぉ!!」
橘がメリーさんを押し倒す
「ちょ!? 何処に連れて行く気!? 待って!! 旦那! 助けてください旦那ぁぁぁぁぁぁ.......」
今度はメリーさんが橘に拉致られた、それを見てハードボイルドさんが溜息をついた
「苦手だ......」
「悪いわね、橘さん酔っ払うとああなってしまうの」
岡部とライラックも席に着く
「いや、あの女は隙がない、気を許したら殺されるかと思った」
ハードボイルドさんが無言だったのはそのせいだったのか
「橘さんはそこまで危ない人では......いや危ない人ですね」
岡部が大人2人に釈しながら話す、両手に瓶を持ち器用に注ぎ切った、2つのグラスには一滴もこぼす事無く酒が注がれた、ライラックにはビールをハードボイルドさんにはウイスキーだ、さすが奉仕のプロ岡部、この短時間で2人の好みの酒を覚えているのだ
「副会長までそんな事言わないでよ!」
「しかし坊主、この会場に化け物がもう1人いやがる、ここまで威圧を表に出している奴は初めてだ」
ハードボイルドさんがウイスキーを飲みながら目線を向ける、視線の先には安堂千夏がいる
「あの子が? 悪い子には見えないけど......」
「あんたは確か大工なんだよな、一般人には解らないだろう、それにこの坊主と嬢ちゃんも大した物だ」
「「!?」」
「この仕事をしてれば嫌でも解る様になる、やばい奴は何と無く感じられる、この2人とあの小さい金髪はそこまでじゃない、特段危険視されるのは、さっきの酔っ払いとあの2つ縛りの女だ」
「そうなのかい? 俺にはわからないなぁ」
ライラックは酒を飲みながら話を聞く、少し興味があるようだ
しかし、不可思議な点が美遊にはあった
「ねぇ、あいつは?」
美遊が指差したのは、アイリスを撫で回している茜だ
この中で最も危険視するべき茜の名が上がっていない
「......? 何を言っているんだ? ただの小娘、大工と同じ一般人だろう?」
「そう、ね」
(あいつ、完全に素を隠しているの!?)
茜の姿を確認すると笑いながら食事している、側から見ればごく普通の女子高生だが本当の正体はわがまま放題の学園トップクラスの危険人物なのだが、千夏や橘を危険視できるこの男ですら欺くというのは流石と言うべきなのだろうか
「くぁぁ......」
「おっと、もうこんな時間か」
大きな欠伸をしたアイリスを見て茜が立ち上がり声を上げる、全員の注目を集めた茜が締めの挨拶を始める
「皆の者! 今日は実に楽しい時間を送らせてもらった! 2016年も終わった!今年も頑張っていこうではないか!」
グラスに入っている水を飲み干し続ける
「これから我々生徒会処刑執行部は全力を持って走り続ける!」
空気が張り詰める
「逃げる訳にはいかない! 消える訳にはいかない! 我々は未来へ走り! たまに休んでもいい、そして完走するんだ! 挫けそうになったら思い出せ、我々にはこんなにも仲間がいる、支えてくれている人達がいる! 忘れるな! その人達に向けて私が代表して礼を言わせてもらう」
最後に満面の笑みで茜が叫んだ
「昨年は世話になった! どうか今年も我々をよろしくお願いします!」
茜が叫んだ瞬間空間が歪み、暗転する
再び瞼を開けた時、そこは見慣れた景色、そこらに置かれた、刃物、銃、鈍器、そして拷問器具
生徒会室だ、茜が会長席から立ち上がる、茜、美遊、岡部、マイケル、楓、橘、千夏の姿がある、全員が意識が朦朧としている様だ
「一体何だったのよ、夢、じゃないわよね」
美遊が頭を抑えながら立ち上がる
「おはよう美遊」
「あんたね! 説明しなさい!」
「まぁまぁ、きっと神様がくれた奇跡だったのだろう」
それを聞いた美遊が溜息をついた
「もういい帰るわ、橘さーん、起きて......酒臭っ!?」
美遊に介抱されながら橘が立ち上がる、それぞれ皆意識を取り戻し茜を見つめる
「さて、皆の衆今年も楽しい年にしようではないか!」
この時の茜はいつもより瞳を輝かせていた、今年も面白い事をする為に彼女達は全力を出すのだろう
やりたい放題の彼女達だが、どうか今年もよろしくお願い致します
登場キャラクター分類
生徒会処刑執行部より
桐谷茜
東西美遊
岡部
マイケル
田原楓
安堂千夏
橘
君と歩いた旅路より
ライラック
アイリス
ハードボイルドさん家の残念メリーさんより
ハードボイルドさん
メリーさん
妄想彼女の2人は欠席しました
どうか今年もよろしくお願い致します