途切れ
「よし、インストールも終わってるな。」
後はゲーム開始時刻となる20時を待つのみだ。
βテストに参加できていなかった俺はその差を埋める為に様々な情報を集めていた。
一つ、βテスト時からデータは何一つ引き継がれないと言う事。
これはつまりβテスト参加者のアドバンテージとなる物が自分自身で体感した経験のみとなる事を意味している。
俺は他のVRMMORPGを体験していた経験が少しではあるがある為、このあたりの事はある程度分かっているつもりだ。
一つ、このゲームの題名になっている「sword&skill」。
このskillはトップを目指す点で見逃せないものとなる。
戦闘を補助する物や、生産系の物など種類も多岐にわたる。
そして、何より重要なのはswordを用いたskillである戦技だ。
クラフトやソードスキルなどと呼ばれているこの戦技には公式な名称は設定されていないが、その種類はskillを凌ぐほどの種類があると言われている。
対モンスター戦にしても、対人戦にしても、これらが勝負の流れを握ってくる事に間違いないだろう。
「……っと、そろそろ時間だな。」
現在時刻は19時57分を指している。
ベッドに仰向けになった俺は改めて確認をしておく。
「トイレに歯磨き、風呂も済ませた。寝落ちしても問題ないだけの状況も整ってる。……後30秒か。」
まもなくだ。もう後ほんの少しで新たな世界を目にする事ができる。
「…よし!ワールド・イン!」
ハードによるVRへのダイブ時に必要とされる定型句を告げた俺の意識は徐々にまどろんで行く。
「(…どんな世界が待ち受けているんだろうか)」
「……チュ………ス……か…」
意識が途切れる寸前に何かが聞こえたような気がした。