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予兆

時は21世紀も終わりに差し掛かろうかと言う今日この頃。

科学技術の発展により、現実とVR(仮想現実)の境界線が希薄になりつつある中で人々は生活を送っている。

そんな大多数の一般人の中の一人、俺、長谷薫はせ・かおるは、ベッドの上で目を覚ました。

部屋の中にはけたたましい程の目覚まし時計のアラーム音が響いている。

「………やっべ!」

今日は月曜日じゃないか!

ゲームをやめた時の記憶がない事から恐らくは寝落ちしたのだろう。

「やばいぞ…このままだと遅刻しちまう!」

俺は市内の公立高校の一年生だ。

この学校は比較的校則が緩いと言う現代にしてはとても珍しいタイプの学校なのだが、遅刻だけはめっぽううるさいのだ。

「朝飯食ってる場合じゃない!行ってきます!」

スクールバッグを引っさげ俺は通学路を駆け出した。

幸い学校までの距離は、走れば10分程で着く比較的近い位置にある。

腕時計の時間が指し示している時間は8時5分。

8時20分には出席を取り始めるから本っ当にギリギリだ。

「頼むぞ…間に合ってくれ!」


--------------------


「……な、なんとか間に合ったか…。」

教室に入るなり、不躾な視線が俺に向けられる。

遅刻寸前だったんだから無理も無いか。

「よっす薫!今日は随分とギリギリだったなぁ…なんかあったのか?」

俺の後ろの席に座っている後藤健吾ごとう・けんご通称チャラ男なんて俺は胸の内で呼んでいる…が話しかけてきた。

「おはよう健吾。久しぶりに寝坊しちまってさ。すげえギリギリだったんだよ。」

「へぇ…薫が寝過ごすなんて珍しいな。明日は雪でも降るんじゃねえか?」

「言ってろ。」

他愛もないような軽口を叩き合う。

この学校でこんな風に話せるのはこいつだけだ。

と、友達が少ないとか言うな!

交友関係が狭いなら深くして行けばいいんだ!

「おっと、先公が来たようだぜ。」

また今日もつまらねえ授業が始まるなぁなんて言いながら健吾は自分の机に突っ伏した。

「……こんなんでもこいつ、成績いいんだよなぁ。」

--------------------


やがて時間は過ぎ放課後。

「薫よー。飯でも食ってかねえか?」

授業が終わるなり目を覚ました健吾が話しかけて来る。

「わりぃ。今日はどうしても外せない用事があるんだ。」

「ん、そうか。じゃぁまた今度な。」


……さてと、あれを受け取りに行かないとな。

学校を出た俺は家路とは反対方面にある大型の家電量販店を目指していた。

先日予約しておいた物がやっと手に入るのだ。

「人気が出るであろう予感はしてたけど、まさかここまでとはな。」

この店だけでもざっと50人以上が並んでいる。

おそらくは俺と同じ物を予約していた者たちなのだろう。

ネットで検索してみると全国でも似たような現象が起きているようだ。

「……普通はこういった物って朝の10時とかから始まりそうなもんなんだがな。18時から引き換え開始って変なもんだな。」

俺が予約していた物はVR技術の結晶体とも言えるMMORPGの新作、その名も「sword&skill」と言う非常にシンプルなネーミングの物だ。

βテストの頃から凄まじい抽選倍率でこうして現物を手に入れられるとは夢のようでもある。

「…っと、そろそろ列が動き出すようだな。」

ついに、ついにこの時が来たのだ。胸が踊る。

現物を手にした俺は一目散に家路に着いた。

ハードはあらかじめ入手してあるし、インストールさえすればすぐにでもプレイ可能だ。

「ただいま!」

「ん?お兄ちゃんおかえりー。」

妹のかなでの声が居間の方から聞こえてくる。

「どったの?そんなに急いで?」

「新作のゲームだよ!早くプレイ可能時間になってくれ!」

「ふーん。お兄ちゃんゲーム好きだもんね。でもゲームやるなら先にご飯とお風呂済ませちゃってね。昔から一度始めるとなかなか終わらないんだから。」

「分かってるよ。今日の夜飯は何…って聞くまでもなかったな。」

「これだけ匂いがしてればね。今日はお兄ちゃんの好きなカレーだよ。」

「よっしゃ!食って風呂入ってゲームプレイに備えるぜ!」


……この頃はまだこの後に起こる事態を知る由も無かった。

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