第8詰 僕の幼稚園時代①
砂場があった。僕は、砂遊びにハマっていた。母親の都合で、朝早めに幼稚園に連れられて来ていた僕は、同じく早く来ていた他の子たちと幼稚園が始まるまで砂場で遊んでいた。
誰が一番高い“山”を作るか競ったり、逆に深い穴を掘ったり、砂でなんか作ったり、、、とにかく砂遊びが楽しくてしょうがなかった。昼間は沢山の園児が集まる人気スポットも、朝早くは2、3人の貸し切り状態。僕らは、思う存分、砂遊びを堪能していたのだった。
そのうち遊び方はエスカレートして、外の手洗い場からバケツで水を汲んできて泥遊びに発展する。掘った穴に水を入れて、“池”をつくったり、砂でつくったウォータースライダーに水を流したり、泥だんごをつくったり。ついには、雪合戦ならぬ泥団子合戦が勃発。始業前から、泥だらけになっていた僕ら早朝出勤組は、朝の砂遊びを禁止されてしまったのだった。
それにしても、なぜあんなに砂遊びにハマっていたのか。あの砂の感触、砂の山を創作する楽しさ、そしてあの泥団子合戦は今までやったどの遊びよりもエキサイトした気がする。
ただ幼稚園児だったから、何でも楽しかっただけなのか。もしかしたら、今でも砂遊びしたら楽しいのかもしれない。、、いや、多分楽しくないだろう。あの頃、あの早朝、あの数人だったから楽しい思い出になったのだろう。
幼稚園時代を思い返してみて、分かった事がある。今の僕はつまらないかもしれないが、振り返ると、楽しい思い出がある。
僕はつまらないんじゃない、つまらなく“なった”のではないか。
いつからだろう、つまらなく“なった”のは、、、




