第8話~友愛編~ 「彼女は人を見かけで判断する」
目を開けると、そこはいつもと変わらない天井。
白い壁紙、勉強机―――。昨日の一件は、実は本当に夢だったのでは
ないかと錯覚させるには、十分な"通常"であった。
・・・しかしそれも、一気に崩れ去る。
「女王様!女王様!ご起床の時間です!」
ノックの音と共に、大臣の声が響く。夢じゃなかった。
「お着替えになられたら食堂までお越しください。朝食後、
秘書兼教育係が来宮する予定です。」
あ、そう言えば昨日そんなこと言ってたな・・・。
部屋にはドレスが用意してあった。メイドさんが夜中に置いて
おいてくれたのだろう。
しかし女王にもなっていないのにドレスというのは・・・。
それに、今日は午後からロラと会う約束をしている。
「・・・制服でいいか。」
宮内で私服というのもさすがに気が引けるので、制服に
着替えることにした。
ブラウンのブレザーに、ワイシャツ、大きな赤のリボン。
下はチェックのスカートに、黒いソックス。
向こうの世界では、結構お洒落な制服ということで話題に
なっていた。
制服で食堂に行き、夜と同じく宮内の全員で朝食を食べる。
朝食が終わると、メイドさんの案内で小さな会議室のような
部屋に通された。メイドさん曰く、今からここに秘書が来るらしい。
なんか、緊張するな・・・今更だけど・・・。
―――十数分待っただろうか。コツコツとヒールが大理石の床に
当たる音がする。どうやら来たみたいだ。
「失礼します。」
落ち着いた声が室内に響いた。「どうぞ」と
返事をすると、ゆっくりと扉が開いた。
そこには、大人びた顔立ちの女性が立っていた。
婦人用のスーツを着こなし、髪は首元まで伸び、
左手には何かの書類を持っている。
まるで絵に描いた秘書・・・
私はしばらく見惚れたあと、我に返り挨拶をする。
「あ、どうも、エルミールですっ!よろしくお願いします!」
「アルカンシェル大学院出身、ラパン族のフルール・ベクラール
ですー。こちらこそ、よろしくお願いしますー。」
見た目とは裏腹に、結構おっとりした声だった。
「本日より、エルミール様の専属国家運営補佐兼、学力及び
国家運営基礎教務係となります、まぁ、あなたの秘書と先生と
考えてくれれば幸いですー、あと、今日からこの王宮に
住まわせていただくことになったので、どうぞよろしく
お願いしますー。」
言う事は見た目通りだな・・・なんてことを思いつつ、
「は、はい!よろしくお願いします!」
と元気よく返事をする。
「それでは、さっそくお勉強の時間です。始めましょう!」
彼女は笑顔で言った。
が、彼女ははっと思いだす。
約束、間に合うかな・・・?
※登場人物※
大臣[80/m]アンテルム・アラス (Anthelme Aarrass)
秘書[?/f] フルール・ベクラール (Fleur Beclard)
少女[14/f]ロラ (Rora)