第6話~友愛編~ 「初めての友達」
―――ここはアルカンシェル。アムールランドという島国の
中心にある首都だ。
しばらくロラとこの街を歩き続けた。気づけばもう夕暮れだ。
彼女とはすっかり仲良くなれた気がした。
「ところで、ロラちゃんの家はどこにあるの?」
そう質問すると、彼女は表情を変えずに、明るいまま答える。
「私ね、小さい頃にお父さんとお母さんが死んで、今は叔父さんの家に
引き取ってもらってるの。いつもはこうして朝から街に出て歩いてるんだ。
それを聞いたとたん、胸が締め付けられた。
・・・そっか、この子もきっと私と同じ・・・。
「ねえエルミール!エルミールの家はどこ?ナンビュスでは見たこと
ないけど・・・。」
ナンビュスタウンとは、この島の北東に位置する、シャンシャ族の
生活地帯だ。
しかし、さすがに別の世界から来たなんて言えないし・・・。
でも、ロラなら言ってもいいかな。
「信じられないかもしれないけど、実は私、これからこの国の
女王になるの。でもこの国の事はあまりよく知らないから、しばらくは
政治を勉強しながらいろんな町の様子を見ようと思っているの。」
そういうと彼女は、一切疑いもせずに驚きの表情を見せた。
「す、すごい!私女王様と話してるの!?」
「そんな、"女王様"なんて言われるまでの存在じゃないし、正直
国を動かすなんて不安だらけなんだ・・・。」
例え政治の初心者であっても国の頂点に立つ人間が政治の実権を握る
というのがアムールでの仕来りらしい。
正直未だに夢を見ているかのような状態だ。これからずっと
ここに居ると思うと、先が思いやられる。
「もしかして、私が最初のお友達?」
唐突なロラの質問に胸が高鳴るが、一呼吸おいて答える。
「うん。だからありがとう。また明日も会いに来ていいかな・・・。」
すると彼女は飛び跳ねながら、もちろんだよ!と答える。
実にかわいらしい子だ。
「じゃあエルミール、今日は私帰るね!」
「あ、まって!実は私、城までの道わからなくて・・・。」
私がそういうと、ロラは笑った。
「あはは!エルミールってもしかして方向音痴?そこをまっすぐ
行けば正門参道坂に着くから、あとは坂を登れば正門だよ!」
「ロラちゃんの記憶力の方が凄い気が・・・。とりあえずありがとう!
よかったら明日の正午、坂の下で待っててもらってもいい・・・
かな?」
すると彼女は大きくうなずき、じゃあね!と言って元気よく去っていった。
本当にあの子に出会えてよかった・・・。
この国での初めての友達に、大きな感動を覚えたのだった。