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ドラゴンサクリファイス  作者: 花果 唯
後日談・呪寮院編
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第六話 選択

 「ユリウス様、お話とは?」


 遠慮がちにお祈り体勢の聖女が聞いてきた。

 私とリトヴァは立っているから自然と聖女はこちらを見上げ、上目使いになっている。

 美人の上目使いは中々攻撃力が高い。

 今は私達の喧嘩を見て怯えているのか、残念聖女モードでもなく凜としている。


 「普通に立つか座るかして、楽にしていいよ」


 女性には優しくしなければと、エセフェミニストな俺は彼女の手を取り立たせてやった。

 すると聖女は頬を赤くして立ち上がり、優雅に一礼した。

 ちゃんと礼儀正しく出来る分、マリアとは違うようだ。


 騎士の方にも楽にするように声を掛けた。

彼もさっきまでは凜々しかったのだが、今は緊張が解けたのか再び目がキラキラしている。

何を求められているのか分からないがこの視線は苦手だ。


 おっさんには声を掛けなかったのだが、勝手に地面に足を崩して座っていた。

 お前は空気椅子でもしていろよ。


 「おい」


 リトヴァの咳払いが聞こえた。

 俺に早く話を始めろという催促のようだ。

 もしくは格好をつけるのをやめろというお叱りかもしれない。

 聖女を構ったから嫉妬してくれたのだとしたら可愛いが、それは違うかな……ってそろそろ鋭いヒールでの蹴りが飛んできそうなので聖女に向けて話を始めた。


「まず聞くけど、あの呪いを解く方法はあるのか? 源体となったものが普通の状態に戻ることは出来るのか?」

「申し訳ありません。それは……出来ません。私も研究員に確認したのですが、『元に戻す必要がないから研究をする意味が無い』と。戻す研究をするように命を出したのですが、『不可能』だと言っておりました」

「……そうか」


 治すことは研究することはもちろん、念頭にも無いということか。

 予想はしていたが、やはり我々でなんとかするしかない。

 では、次の話だ。


「あとは『要望』かな。あの呪寮院での研究結果を全てこちらに渡して欲しい。あと、あの場所で行われていた研究は今後一切行わないと約束しろ」


 聖女から聞いていた呪魔石の情報で、ある程度解呪への目処は立ったと思う。

 俺はぼんやりとしか分からないが、リトヴァならなんとか出来るだろう。

 リトヴァの方を見ると同じようなことを考えていたようで俺を見て頷き、補足をした。


「併せて、呪われていた者達の身の安全を確約しろ。解呪は我々でやるから、お前達は今後一切彼らに干渉するな」


 リトヴァが解呪を『我々』と言った!

 『私』じゃなくて、『我々』と言ったということは、俺も含んでくれたということだ。

 嬉しい!

 思わずにやにやと頬が緩んでしまう。


「おい!」


 さっきより鋭い『おい』が飛んできた。

 これは照れ隠しと『自重しろ』という意味に違いない。

 掛け声一つで意思疎通出来るなんて、俺達も中々夫婦レベルが上がってきたのではないだろうか。うんうん。

 更に頬が緩む。


「何を一人で頷いているんだ。ったく……こいつは放っておく。さっきの話だが、お前達は呑むことが出来るか?」

「そ、それは無理です! 研究を止めるなんて! 呪いは我らの専門分野でもあり……他の竜教に遅れをとることになります!」


 着ているものは上等なのに、今ではただの疲れたおじさんにしか見えない中年が慌てたように飛び上がり、リトヴァの前にやって来た。

 リトヴァは顔を顰めて鬱陶しそうにしている。

 おい中年、お願いだから嫁殿の機嫌をこれ以上損ねないでくれ。


「呪いの研究の全てを止めろと言っているのではない。『竜族を犠牲にして石を生産する人間を作る』などという外道なことをするなと言っているのだ」

「ですが、呪魔石が大量生産出来るようになれば、我らは大きな利益を得ることが出来るのです! 教団としても、期待の大きい研究で……」

「そうか。だったら我々は、お前達が同じ過ちを凝り返しているのを見つけたら、悉く潰しに行く。好きにしろ」

「そ、そんな……」


 中年はリトヴァに食い下がるが相手にして貰えない。

 というか、それ以上リトヴァに近づいたらぶっ飛ばすぞ。


 人間社会だと一つの研究を捨てるというのは容易ではないと思う。

 救われる人がいることも事実だし。

 人間社会でのパワーバランスも大事だろう。

 でも、俺達も今回のことは黙って見逃すわけにはいかない。

 研究を止めろと言っても確約なんて取れないだろうし、したとしても信用出来ないので『見つけたらぶっ潰す』という方針には俺も賛成だ。

 ただ一つ、慈悲深い俺は見逃してやる例外を与えてやろうではないか。


「あんたが研究の実験台になるんなら、その時だけは見逃してやるさ」


 おっさんに向けて言い放つと、素晴らしいスピードで首を横に振っていた。

 それを見てリトヴァがクスリと笑った。

 聖女達は微妙な顔をしていた。

 大丈夫だ、君達には言わないから。


「さて、そろそろ戻るか。早速治療を始めたい」

「そうだね」


 人間三人組はなんともいえない表情をしているが、俺達の中では一段落ついたような気がした。

 後は呪いを何とかして、フラン達を元気にするのみ。


「あの……リトヴァ様、ユリウス様」


 聖女が再び、恐る恐るといった様子で声を出した。

 何か言いたい様なので、リトヴァが許可をだして話すよう促した。


「私を被害者の方々に、会わせて頂けないでしょうか」


 リトヴァと顔を見合わせた。

 月竜教の人間はフラン達と会わせないつもりでいた。

 だからさっきも関わるなと釘を刺したのだが……。


「月竜教を代表して、私から謝罪をさせて頂きたいのです。それに、私に何が出来るかは分かりませんが……償いをさせて頂きたいのです」

「謝罪と賠償か」


 俺達で何とかしようという頭が働いていたから、全くその発想が浮かんでいなかった。

 確かに、加害者が被害者に対して謝罪と賠償を行うのは当然といえば当然だ。

 でも、フラン達は自分達をあんな目にあわせた加害者側に会いたいと思うのだろうか。


「フラン達に聞いてみようか」


 考え中のリトヴァに提案した。


「そうだな。彼らに謝罪を受けるか確認して来よう。その間にお前達は研究資料を纏めておけ。あと、お前達の責任者にさっきの話を確約させておけ」

「そ、それは……」

「承知しました」


 まだ納得していない様子のおっさんを遮るように恭しく礼をした聖女と騎士に軽く挨拶を返し、その場を後にした。




※※※




 フローラ達の元に戻ると、呪われていた三人の容態が少し悪化していた。

 リトヴァの回復が切れ始めて少し気だるそうな様子だった。

 本人達は問題無いと言ったのだが、すぐに回復をかけてやった。

 顔色が戻ったところで、リトヴァが早速に解呪についての話を切り出した。


「聖女が言っていた話によると、『竜種呪魔石』とやらを砕いたものが体内にあるということだから、それを取り除いてやればいいのだが……」


「そういうものの気配は感じないけどなあ。リトヴァは分かるの?」

「分からん」

「分からんのかい!」


 潔い物言いに、思わず突っ込んでしまったじゃないか。


「消えてはいないけど、混ざり過ぎているってことなのかな」

「恐らくな」

「じゃあ、どうすればいいかな。研究資料を待つ?」

「いや、実は心当たりがあるのだが……」

「そうなの?」


 だったら早く言えよ、という意味を込めて視線を向けたが、何やら言い詰まっている。

 言いにくいことなのだろうか。


「確証はないのだが……。この子達は人間の身体ゆえ呪いに耐えられず、死の淵を行き来するような状態に留められている。だが、呪いに耐えうる身体になれば、竜種の呪いに打ち勝つ肉体になれば……」

「それは……」


 そこまで言われて、なんとなく漠然とした予想はついた。

 正直、あまり良い方向の話とは思えない。


「どういう風な手段を考えているかは分からないけど、率直な言い方をすると『人間やめよう』ってこと?」


 大人しく私達の会話を見守っていたフローラ達が息を呑んだ。

 一瞬彼らに目を向けて気に掛けている様子を見せたが、俯くと何か思案し始めた。


「……厳密にいうと、今も既に人から変化している状態であると思っている。『呪い』ではあるが、竜族の一部を取り込み変化した『竜人』に。とは言っても竜の比率は極めて低くほぼ『人』だ。だが竜の部分の度合いを少し引き上げれば……」

「呪いに打ち勝つ身体になる?」

「可能性はある」


 理屈的には納得出来る話だ。

 でも確証があるわけでもないし、失敗すればエリーサさんのような姿にならないだろうか。


「そういえば、フローラってなんで大丈夫だったんだろう」

「そういう能力を生まれ持っていたんだろうな」


 ヘルミはあまり毒が効かなかったが、あれは『慣れ』で習得したものだった。


「天性のものって凄いね。稀なんじゃない?」

「ああ、無いことも無いが……本来であれば『耐性』をつけ、『無効』へと進化させるものだ。フラン達の方も無効ではないが『耐性』があったのだろうな。で、なければ他の多くの者達と同じように亡くなっていただろう」


 フランは俯き、辛そうな顔をしていた。

 他の人達も耐性が無く死んでいた場合を考えたのか、怯えた顔になっていた。

 本人達に聞かせる話じゃなかったかもしれない。


「あ、でもさ。フラン達も『耐性』から『無効』に進化させたら、竜の部分を濃くしなくてもこのままでいけるってことだよね」


「ああ。だが、それには長い間呪いと戦う苦痛が伴う」

「そうか、体が慣れて無効になるまで耐えなきゃいけないってことだよな」

「それに必ず『無効』になるとは限らない」


 今すぐ治すためにリスクの伴う手段をとるか、安全を考えてゴールの見えない手段をとるか……。


 リトヴァは前者を押している印象を受けたが、俺はどちらかといえば後者かな。

 エリーサさんのようなことになる可能性があるものは選べない。

 リトヴァだって同じ思いはあると思うのだが、早く治してやりたい気持ちが先走るのだろうか。


「竜の部分を濃くするにはどうするつもり」

「我々の血を舐めるくらいでいいと思うが」

「え、それって危なくないの?」


 舐める程度というが、俺達は一応神である『月竜』だ。


「あ、あの」


 フローラと同じ、この村出身の女性が消え入りそうな声で話しかけてきた。

 リトヴァと顔を向けると、まだ目は見えていないはずなのだが俺達が見ていることが気配で分かったのか身をすくめた。

 『どうぞ』と声を掛けると、遠慮しているのか言葉に詰まりながらゆっくりと口を開いた。


「あの……聞けず仕舞いだったのですが……。あなた達は一体……? 私達をどうするおつもりで助けてくださったのでしょう……」


 そういえば俺達について何も説明していなかった。

 助けて貰った手前言えなかったけど、『怪しい人なのでは?』と思っていたようだ。

 視覚的な情報がない中、治療はされているとはいえ、得体の知れない奴らに連れ出されてさぞ不安な思いをしただろう。

 信用していない奴に『助けてあげる』と押しつけられても戸惑うのは当たり前だ。

 気が回らなくて申し訳ない。


 説明するにしても『俺達月竜なんです』と言って、信じて貰えるだろうか。

 でも月竜だと理解して貰わなければ、治療方法も分かって貰えない。


「お兄ちゃんとお姉ちゃんは神様なんだよ!」


 迷っていると、フローラが無邪気な声で嬉しそうに声を上げた。

 あれ、フローラにも説明していなかったのだが、気づいていたのか?


「だって『神様助けて』ってお願いしていたら、お兄ちゃんが助けてくれたから!」


 なるほど、そういう理解をしていたのか。

 分かっているようで分かっていないのが可愛らしい。

 あの時気づくことが出来て本当に良かった。


「お二人は月竜様ですよね? だって、『リトヴァ』『ユリウス』って呼んでいるから……」


 嬉しそうにしているフローラの横で、大人しくベッドに腰を掛けて座っているフランが静かに呟いた。

 どうやらフランは正しく理解しているようだ。


 女性も月竜の名前くらいは知っているだろうが、まさか当人……いや、当竜だとは思っていなかったのだろう。

 見えていない目を瞬かせている。


「そうだ。今は人の姿をとっているが我々は月竜だ」


 リトヴァが短く答えた。


「やっぱり……! 早く目を治してお姿を拝見したいです」


 フランは落ち着きながらもどこか興奮した様子を見せた。

フローラの話を聞いて、俺達の容姿に興味を持ってくれているのだろう。

リトヴァやこの体の容姿は期待に応えられると思う。

早く見せてあげたい。


「きっとすぐ良くなる。俺の嫁殿はとびきりの美人だから驚くよ。俺もとびきり男前だしね!」


 フランの頭を撫でながらそう話すと、麗しの嫁殿から殺意の篭もった視線が飛んできた。

 嘘は言っていないじゃないか。

 ユリウスの容姿を褒められたからって、照れ隠しの殺意光線はやめて欲しい。


「本当にお兄ちゃんもお姉ちゃんもすっごく綺麗なんだよ! びっくりするから!」

「うん。見えなくても分かるよ。伝わるものがあるから。でもやっぱり目でも見たいな。僕、頑張るよ」


 なんという可愛い姉弟……抱きしめたい発作が!

 だめだ、今は空気を読んで我慢だ。


 そんなほんわかムードの兄弟の隣で固まっている人達がいる。

 さっき質問をしてきた女性と、もう一人救出した女性の大人組だ。


 恐らく今は、本当に俺達が月竜なのか困惑中だと思う。


「話を戻すが」


 困惑中の大人組を無視する容赦ないリトヴァ先生が話を再開した。


「今、呪いを解く方法が二つ挙がっている。それを説明するので、当人達の意見を聞かせて欲しい」


 さっきの話を聞いていたとは思うが、あれは俺とリトヴァが相談していたようなものなので、ちゃんと彼らに向けて内容をかみ砕きながら説明する必要がある。

大筋はリトヴァが話し、皆の反応を見ながら俺が補足をするというスタイルで説明を行った。


 聞き終わった皆の反応は、『無言で俯く』というものだった。

 それはそうだろう。

 すぐに理解出来るような話ではない。


 だがリトヴァ先生の話はまだ続く。


「併せて話しておきたいことがある。君達をこんな目にあわせた月竜教の『聖女』とされている人物が、君達に会って謝罪したいと言っている。そして、償いをしたいとも」


 フランとフローラは顔を見合わせ、大人達は再び俯いた。

 こちらの話にも困惑しているようだ。


「『聖女』は君達が被験者となってしまった研究についても知らなかったようだよ。俺達が君達を連れ出したことで実態を知ったみたい。信用は出来る人物だと思うし、会う時も俺達が付き添うから何かされるということもない」


少し安心材料を伝えると、大人組は興味が沸いたようで顔を上げた。


「賠償内容については、君達が望むものを言えばいいだろう。これからの生活資金、物、または職や住まい。なんでもいい。提案した治療を選ぶか、聖女に会うか、そして何を望むか。一晩ゆっくり考えてみて欲しい」


 リトヴァは明日、聖女に会うつもりのようだ。

 もう少し時間があってもいいのでは? と思うが……。

 とりあえず考えてみて貰って、まだ迷っているようなら俺からリトヴァに相談するとしよう。


「フランとフローラも、考えてみてね。急ぐことはないから。フローラが呪いを無効に出来るんだから、フランだって少し時間が経てば無効に出来るかもしれない。暫く立ってから無効になる兆しがないなら、そこから竜に近づけることを試してもいいし。もしかすると、呪いを解く方法も見つかるかもしれない」

「最後のは可能性が低いだろう」

「今俺達に出来なくても、人間が研究したらそのうち見つかるかもしれないじゃないか。こんな呪いが出来たくらいだし」

「呪いは『解く』方が段違いに困難だ。人間が方法を見つけることが出来たとしても、どれだけ時間が経過しているか分からんぞ。すぐに出来るようなものじゃ……」

「兎に角フランは焦らずに考えてくれよな!」


 リトヴァは余計なことを言わなくてもいいのに!

 出来れば俺は、フランには無茶をして欲しくない。

 まだまだ子供なこの子がエリーサさんのようになってしまったらと思うと辛くて仕方が無い。


「ユリウス様」

「どうした?」


なんとかフランには安全度が高い方を選んで貰えないか考えていると、フランに呼ばれた。

近づいて顔を覗くと、大人びたとても穏やかな顔をしていた。


「僕、早く元気になりたいです。だから、危険かもしれないけど……頑張ります」


その言葉を聞いて、思わず顔を顰めた。


「さっき話した、強い身体にする方法を選ぶってこと?」

「はい」


『心は決まっている』という意志の強さが顔に滲み出ていた。

もしもの時の覚悟も出来ていそうだが……それが心配だ。

 この子の意思や覚悟はいつも人のためのものだ。

 早く元気になりたいのも人に迷惑を掛けたくないとか、そういう理由ではないだろうか。


「フラン……お兄ちゃんは反対だな。君に何かあったらどうするんだ。怖い話をするけど、魔物のような姿になる可能性もあるんだよ?」

「それでも……元気になれるんですよね? 僕は……自分のことは、自分で出来るようになりたいんです」

「それは今みたいに治療しながらでも出来るじゃ無いか」

「でも、いつまでもユリウス様とリトヴァ様のお世話になるわけにはいきません」


 この姉弟はとても良い子達だが……良い子達過ぎる。

 命の危機にあった異常事態はまだ完全に収束していないのに、今だって目は見えていないし呪いの苦痛があるはずなのに遠慮をし過ぎた。


「そんなことは気にしなくていいんだ。お兄ちゃん達は神様だから、時間は沢山ある君にとっては長い時間でも、俺達にとってはほんの一時なんだ」


 今まで人間だった俺にとっては『人の一生』はまだ長い時間だと思うけれど、フランを安心させるために嘘をついた。

 今は嘘だけれど、終わりが無いのならいつか本当になりそうなことだし、俺達のことなんて気を使わないで欲しい。


「そうかもしれないですけど……僕が嫌なんです」


 フランの表情は全く変わっていない。

 俺が何を言っても駄目なのだろうか。


「フローラはどう思う?」


 表情を曇らせて心配している様子のフローラも賛成しているようには見えない。

 俺の言葉は駄目でも、お姉ちゃんの言葉ならと思ったのだが……。


「……フランが決めることだから」

「……そうか」


 弟の意思を尊重するようだ。


「分かった。でも……一晩よく考えてみて」


 二人でゆっくり話をすれば変化が生まれるかもしれない。

 リトヴァと顔を合わせ、二人で部屋を出た。


「あの子の決意は変わらないだろう」

「そうだろうね。でも……俺は嫌だな」


 一晩でフランが考え直してくれることを祈るしか無かった。

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