十三人参上(三)
「あーあ、長引くね、あの話題」
「仕方あるまい。深刻な話のようだからな」
「割にはふざけてねーか…?」
沖田、近藤、土方の話である。
因みに、斎藤、山南は熟睡している。
「ねぇ、リュウくんは話に参加しなくていいの?」
「僕は良いんだよ、地上界とはあんまり関係無いから」
年齢的には沖田の方がリュウより十ほど上なのだが、こうして二人話すと同年代のように思える。
「じゃあ、早い内から皆に告げておいて、地上界に天上界軍の基地を作るってこと?」
フェニックスがそれまでの内容をまとめて区切った。
「はい」
水神が容認する。
「一つの基地でどれくらいカバーできる?」
良い色に焼き上がったバジリスクが聞く。
「今までの話を聞く限り、ヨーロッパなら一つでいけるんじゃない?アジアは三つ、アフリカも一つ、アメリカ大陸は南北二つってところかな?あ、オセアニアも一つ」
「総本部的なのもどこかに置いた方が良くないですか?」
サンガーにクラーケンが意見する。
五人の目が光った。
「…日本だな」
「ですね」
「各州上手い具合に置きましたから総本部は日本で良いでしょう」
水神も賛成した。
「よし、じゃあ各基地の詳しい配置を考えよう」
地上界の地理が解らないためこれしか言えなかった天上界王である。
クラーケンが紙に描いたアバウトな世界地図に基地の位置が完成した。
「こんなもんでしょうね」
「後は地上界の奴等と微調整するしかないな」
「次は、送る兵についてですが」
全員が天上界王を向く。
「うむ、お前らが地上界の事で話し合っている間に軍の司令官と相談して決まった。」
「え、サボってなかったんだ、グータラ王」
「珍しいな、ノロマ」
「好き勝手言ってるわね、アンタ達」
天上界王が睨んでんのか呆れてんのか中途半端な目で五人を見る。
因みに、水神は一人眼中から避難していた。
「で、どうなったんだ?」
「さすがに高レベルな兵は渡せない。中級辺りの奴を各基地千〜万で我慢してくれないか」
「足りるか…?」
心配そうな五人に水神が言った。
「地下界の兵士は死んだ人間からしか現れる事は出来ません。非常に効率が悪いので、数千人規模で大丈夫でしょう。それに、計画には地上界の人が自ら戦うことが含まれていたはずです」
五人が納得しかけた。
が。
「ただ…」
「ただ?」
「地上界と地下界を結ぶ二界道など作られると厄介なことに…」
「…………。」
最大の不安がそこにある。
「安心しろ」
「天上界王?」
「極界戦争以来、天上界での戦争訓練では二界道への対処が必須になっている。送る兵士は皆訓練を受けている」
「天上界王、訓練と実戦は違います」
「安心してください、水神様。前の極界戦争もたかが千二百年前。経験者も数多く残っています。その中には勿論二界道に関わった人が何人もいます。彼らを送りましょう」
「なら、心強い」
全員が笑った。
「俺達から話すことは以上だ。まァ、剣舞でも見たいなら見ろ」
六人が、リュウ達の元に帰ろうとした。
だが。
「覇者の五人よ、待ってくれ」
「…?」
「天上界軍になる気はないか?」
「え?でも…」
「無論、他の軍人と同じように生活に制限はかけない。『覇者隊』としてやってみないか?」
よくよく考えれば今の五人にはその方が良いのかもしれない。
戦争の際、地上界支部の軍人と話しやすくなる。
「良いか?」
フェニックスが四人に聞いた。
「俺は賛成だけど」
「僕も賛成です」
「俺様も」「俺も」「わしも」
「天上界王」
フェニックスが代表として言った。
「引き受ける」
天上界王から礼があると思っていた。
だが。
「ああ…フェニックス君…かな?」
だが、天上界王はフェニックスだけを呼んだ。
「どうした」
「君は五人の中でもずば抜けている」
「ずば抜けているって程じゃねぇよ。ちょっと親父のせいでAIH値が高いだけだ」
「いや、明らかに他の四人とは違う」
その四人も肯定の意思を示し頷いた。
「参ったな…俺アイツらからそんな尊敬されてたのか…。で、それから?」
「そなただけ覇者隊を外れて更に高い身分の軍人にならんか?」
「…え?」
天上界王が言ったことは突然だった。
フェニックスはは四人より強いから覇者隊よりも良い身分をつける、と言ってきた。
「天上界軍でも最高クラスの軍人に!」




