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五人の覇者  作者: コウモリ
二百年大修行
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二百年大修行 サンガー編(三)

「どーしてくれるんだよ雷神!砂漠の生態系壊滅だよ!」

『皆がゴッドバンドのために命を捧げた。わしはその期待に応えたまでだ』

「ええい、自己中心的な解釈しおって!」

『じゃあね』

「待たんか」

『何?もう君と話すことはないけど』

「アンタ、神なんだよな?」

『そう。神臨では呼ばれないけど』

「神臨?よく解らんがとにかく、神なら殺した奴責任取って復活させろよ」

『無理。それを出来るのは魔術の使い手だけ。まァ、それに合わせて言うなら冥界の生き物も』

「冥界の生き物?詳しく聞かせてくれよ」






『冥界の生き物に形はない。蜃気楼となって殆ど現れる。つまり、あるはずの無いもの。例えば死んだ家族やもう一人の自分。蜃気楼は人を殺し、また蘇らせる。』

「そんな生き物が…。」

サンガーは衝撃を受けた。

生死を操る技がある時点で驚くべきものなのに、それを簡単に扱う生き物がいる。

「アンタは出来ないのか?」

『出来ない』

「…………。」

『じゃあ、帰るぞ』

雷神の声が聞こえなくなった。






修行の箱に戻る。

「終わったかンチ?」

「ああ。雷神とも話してきた」

「そうかンチ。技はどうなったンチ?」

「普通に操れるようになったよ。今なら惨事は起こさない」

パックンチはホッとして帰った。

「雷神、ねぇ…。」

正直イメージと外れる。

自分の力を悪用してバンドなんか組み、生き物を殺す。

ただ、強さはサンガーの雷祭りとはレベルが違う。

「っし、打倒雷神!ギガサンダー!」

今日も元気に修行である。






修行が始まってから百九十年経っただろうか。

今、サンガーは修行の箱の建設作業に参加している。

一歳の時点で周期表を全て覚えていたのに喋れないから披露できなかったあなた方ならもうお分かりだろう。

何で修行の箱が壊れてんの?

どんな技にも耐えられる、戦時中シェルターにもなった最強の箱。

それが何で壊れてんの?

一歳の時点で周期表を全て覚えていたのに喋れないから披露できなかったけれどアルファベットが書いてある積み木を使って周期表を作って一躍天才赤ちゃんとしてスターになったあなた方ならもうお分かりだろう。

サンガー、雷神より強くなりました♪

そもそも修行の箱というのはまだ天上界が神達によって開拓されている頃に「神が」作ったものだ。

サンガーが雷神より強くなれば無論修行の箱は耐えきれない。

それで、作り直しているのだ。

だが、アルキメデスより先にアルキメデスの原理を発見したのに発表するのに手間取ってアルキメデスに先を越されてしまったあなた方ならもうお分かりだろう。

「人間が」作る修行の箱などすぐに壊れてしまう。

サンガーを始め、この工事に参加している全員がそう思い始めた。

だが、アキレスより先にカメに追い付いたあなた方ならもうお分かりだろう(今回はこの手の文章がやたらと多い)。

そう、サンガーが作れば良いのだ。

「いや、俺そういう魔法知らないから」

「なら教えますよ」

作業員が言ってきた。

「これは結構簡単なんですよ。シールドは出来ますよね?」

「ああ」

「なら、簡単です」






そんなこんなで物(生命体、非生命体、自他関係無し)の防御力を上げる技を手に入れた。

「ガーディ!」

早速おニュー修行の箱に魔法をかける。

「これ、持続時間とかあるんじゃないのか?」

「はい、ガーディは使った人が眠るまで持続します。」

「じゃあ、これ…」

「そういう時は永久持続という技を。非生命体かつ自分が技をかけた物だけに対して有効な技です」

「フォーウ」

「これであなたを越える人が現れるまで安泰ですね」

「一人思い当たる鳥が…いや、何でもない」






久しぶりに砂漠に向かった。

あの砂漠に。

何かあると期待した訳ではないが、何かあったのだから仕方がない。

「アンタは?」

「雷神」

「マジすか」

「マジす」

「何か雰囲気変わってない?」

サンガーは雷神を怪訝そうに見つめる。

雷神からは人を見下すオーラが消えていた。サンガーが雷神より強くなったからだろうか?

「サンガー、わしと戦ってくれ。お前がどれくらい強いのか確かめたい」

「…?」

「戦ってくれ」

「まァ…良いけど。何で?」

「聞けば修行の箱を壊したそうじゃないか。あれにガーディをかけたのはわしだ。久しぶりにわしを越えた奴を見た。この年になっても強い奴と戦いたいという願望は変わらなんだ、お前と戦いたい。」

「…解った。勝負だ。」

覇者と神の、対決だ。


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