二百年大修行 ペガサス編(二)
ペガサスが帰ってきた。
「ツルギ、買っ…ツルギ?」
誰もいない。
「ツルギ…?」
札束があった。メモと共に。
『トーンへ
確かに女は受け取った。金は置いておくから店に来い
ザード』
「う…嘘だ…!」
突っ伏した。
だが、ずっとその調子ではいかない。
酒場に戻った。
「店長、話が」
「何ですか」
「この辺の風俗…」
すると、店長はあからさまに嫌な顔をして言い放った。
「そういう話を中に持ち込まないでくれ」
「あ、すまん…」
外に出る。
相変わらず汚い小道だ。
すると、
「にーちゃん、金貸せよぉ、新しい女が来たらしいかんなぁ、ヒック」
ツルギの事であろう。ペガサスはそいつの胸ぐらを掴むと、
「それはどこだ!?」
「え…あの店だ…」
「あんがと」
店に入った。
ツルギが起きると今度は正反対の派手な部屋に来ていた。
服装がまた違う。
ガサガサの灰色の服。Tシャツは無くなっていたが肌は隠れているから結果オーライだろう。
「ーって、これ奴隷の服ですね…。」
そう、奴隷は男も女もこの服を着る。
「まずい…。」
ガチャ。
男が入ってきた。
「やぁ、商品♪」
「放してください」
「おいおい、常識で考えろ。誰が買った奴隷を逃がすかよ」
「ならば力ずくで」
ペガサスとの約束で使うのは躊躇われたが、やむを得ない。
刃を出す。
はずだった。
「バーカ、お前は奴隷だぞ?奴隷は技を使えないんだよ。反逆防止でな」
「そん…な…!」
「足首見てみな」
何やらテープが貼ってある。
「それは識別と封印の両方を兼ねてる。だが、お前じゃ外せねぇ。それは付けた人、つまり俺じゃないと取れない」
男が薄気味悪い笑顔を浮かべる。
すると、羽を生やした男が、
「ならば貴様に取ってもらう、ザード」
「ペガサスさん!」
「…誰だよテメエ」
「んー、そいつの彼氏」
「ギャハハ、お姫様を取り返しに来たのか?」
「その通り」
「残念だけど帰りな!決死輪!」
ツルギが青ざめる。
「逃げてペガサスさん!それに触れれば必ず死にますよ!」
「え゛」
ぴょいこらぴょん。
ペガサスが輪から逃げた。
「チッ、動きが良いな。決死輪じゃ勝てねぇ」
男が諦める。
「取っ組み合いといこうぜ」
「望むところだ」
ぶつかった。
肘と肘がぶつかり合う。
力はほぼ互角だった。
だが。
「ギガサンダー」
「どぅおわっ!」
ペガサスがギリギリで耐える。
「卑怯だぞ!」
「フン、こちとら奴隷が懸かってんだ。卑怯も糞もあるか」
「チッ、ギガポイズン」
「え゛」
バタン。
相手が倒れた。
「卑怯だぞ…!」
「フン、こちとら彼女が懸かってんだ。卑怯も糞もあるか」
死んだ。
「やったな、ツルギ!」
「…………。」
「どしたァ、浮かない顔して」
「…すか」
「え?」
「このシール誰が剥がすんですか」
「あ゛」
大惨事である。
「でっ、でも、この死体の指でこう…」
「剥がれませんね」
「すみません」
「ああ、シールが剥がれないなんて…」
ツルギのすすり泣き。
うっうっ…。
「とっ、取りあえず着替えろ。ほら、服も買ってきたし…。」
と言って、ペガサスは学生服のスカートを差し出した。
「はい?」
「服も買ってきたし」
「…これが…?」
「うん、激安」
「もう私、奴隷で良いです…。」
「ねぇ、俺様頑張ってるからね?敵倒して、持ち金で頑張って服買って…」
うっうっ…。
「ねぇ、俺様はどうすればいいの、ツルギ」
うっうっ…。
「答えて」
「ぐすん、奴隷を捨てて旅に出れば良いんじゃないんですか?」
ひくっ、ひくっ…。
「頼むから打か…」
ガチャ。
数人の男が入ってくる。
「テメエ誰だ!そいつは店の女だぞ!」
「ゲッ、仲間かよ…。」
ペガサスが顔をしかめる。
「おい見ろよ!ザードが殺されてる!」
「生き返らせとけ」
「え?」
ペガサスはその言葉に違和感を覚えた。
「生き返んの?」
男がブツブツ呟くと死んだザードという男が蘇った。
「やった!」
涙声のツルギが喜ぶ。だが、それはまだ早い。
「さて、そこの兄ちゃん。俺達全員と戦うか?勝ち目はまず無いぜ?」
「そりゃぁ、やってみねーと解んねーよ」
「良い度胸だ。いくぜ!」




