お金稼ぎ(二)
次の日の朝。
「行ってくる」
フェニックスが登校する。
「行ってらっしゃい」
クラーケンだけが起きている。今日は、本当にクラーケンだけだった。三人とも安心しきっていた。
だが、五人とも知らない。
ドキュメンタリー番組の恐ろしさを。
トントン。
朝の八時。家に誰かが来た。
クラーケンとバジリスクだけが起きている。
「どうぞ」
「藤巻です」
「なら、二人を起こしてきましょう」
「二人?三人じゃないんですか?」
「ええ、フェニックス君は学校ですから」
「そうですか…。」
「おはよう、猛くん」
「よぉ」
「数学の宿題やった?」
「宿題?何それ食べられるの?」
「…今からやったら」
「バーカ、宿題はホームワークだろうが。家でやらないならやらなくていいんだよ」
「猛くん、本当に英語苦手?」
「生活と屁理屈に必要な単語は覚えているぞ」
「…………。」
キーンコーンカーンコーン。
「ホームルーム始めるぞー」
古賀先生が来た。
「えー、今日はテレビ局の取材が来ている」
「何で?」「学校紹介?」「さあ…。」
全員がボソボソと喋る。
「列島テレビの藤巻と言う人が挨拶する。」
「え゛」
「どうしたの、猛くん?」
「藤巻…ここまで攻めてきたか…!」
「知り合い?」
「軽くOKしなきゃ良かった…!」
「ねぇ、猛くん?聞いてる?藤巻って人知り合い?」
「え、ああ…アイツは俺達の担当だよ…。
バラエティー番組のな…。」
ガラララ!
「どうも、藤巻です。今日はご協力ありがとうございます。今回の目的は、火鳥フェニックス君…日常生活では猛君ですかね、の取材に来ました。普段彼がどのようにしているか調べるために、是非皆さんにはいつも通り行動していただきたく…」
バン!
「猛くん…?」
「おい、藤巻!俺は許可してねぇぞ!」
「バラエティー番組のレギュラーを持ったからにはあなた達は既に芸能人です。いや、あなた達の場合、ホワイトハウス、国連総本部での取材以降芸能人だったと言っても過言ではありません。芸能人たるもの、少しはサービス精神を持ってください」
「ハメられた…!俺達は…!」
「ハメられたなんて人聞きの悪い。あなたの同僚の四人はしっかりとハンコを押しましたよ。まさか、あなたは仲間を見捨ててでも自分の都合の良いことをしますか?」
「たまにするけど…今回は違う。アンタにゃ帰ってもらう」
「僕がこの番組を取り下げたらあなた達の家は破綻しますよ」
「ぐ…!」
「諦めて取材を許可してください」
「解ったよ…。」
「ついでに、四人がサインした書類にもサインして貰いましょうかね」
「くそ…。」
藤巻の顔に昨日の温厚な表情は残っていなかった。
放課後。
藤巻はテニス部までは見ていかなかった。きっと、今頃家にいるだろう。
「猛くん」
「何だ?」
「藤巻さん、どうしてあんなに厳しいんだろう?」
「この番組成功させないと後がないらしい。俺達に金が無いことを知ってるからあんな脅せるんだ…!」
「テレビに出るって大変なんだね…。」
「芸能人全員が俺達みたいに苦しんでる訳じゃないだろう。ただ…」
「ただ?」
「藤巻は、精神が異常な気がする」
家にて。
午後五時半。
「今日は藤巻来なかったな…。」
「え、朝八時ぐらいに来ましたよ?すぐ帰りましたけど」
「ふーん…。」
トントン。
「どうぞー」
「藤巻です」
「どっか行ってたの?今日は朝来てすぐ帰ったみたいだけど」
「フェニックス君のいる学校ですが」
「学校だァ?フェニックスに許可は取ったのか?」
「いいえ」
「え…?」
「はァ、あなた達もフェニックス君と同じ質問をしますね。もう芸能人なんですからサービス精神旺盛にしてくださいよ」
「芸能人にだってプライバシーがあるだろう!」
「パパラッチがいる限り芸能人にプライバシーなんてありませんよ。」
「なっ…!テメエ!この話は打ちきりだ!」
「いいんですか?家が破綻しても」
「構わ…」
「やめとけペガサス」
「フェニックス!」
「この話を打ちきりにしてしまえばコイツの言う通り家は破綻する。耐えるしかねーだろ…。」
「だがっ…!」
「俺は構わねーよ。それに…」
フェニックスは藤巻を睨むと、
「アンタ何する気かは知らねーけど、俺達は屈しねぇ。とことんやりあおうじゃねーの…。」
藤巻が不敵な笑みを浮かべる。
「遂に覚悟を決めましたか…。」
夕飯時。
「フェニックス、どうしたんだ?やりあうとか何とか…。」
「俺達覇者はテレビ撮影だろうと何だろうと凄いんだって奴に見せつけてやるんだよ。俺達を過酷な日々に陥れようとした事を後悔させられるぐらいにな。」
「俺らが折れてしまったらどーなるんだよ?」
「一生服従かもな」
「…!」
「まあ、まずそんなこたァ無いし、最悪モンスターの餌食にでもすればいい。折れちまったら折れちまったでどーにかこーにかして奴を殺せばいい。俺達は悪くない、奴は自分の失敗で死んだんだ、って」
「非情だな」
「ハードボイルドだな」
「いいな、『ハードボイルド・ルーラーズ』。非情な覇者だ」
「今回ばかりは打倒ノアから打倒藤巻に変えてやるぜ。」
「おっと」
「どうした、バジリスク?」
「敵が来る」
「しゃあっ、ハードボイルド・ルーラーズの出動だぜ!」
密かにクラーケンは思った。
(僕の中では僕達は「五人の覇者」だったんですけどね…。まあ、これもありかな…?)
バンッ!
フェニックスが勢いよくドアを開ける。外に藤巻がいた。
「藤巻、まだいたのか」
「あなた達は何かあるのですか?」
「モンスター退治だよ。来るなら来い」
「勿論。行くぞお前ら。いや、お前は大丈夫だ、カメラとマイクだけ。最低人数にする。不必要な物は行かない奴に預けとけ」
大きな広場。
人だかりが出来ているが、誰一人一線を越えずに広場の外で「それ」を見守っている。
だが、十人程度の人達が果敢にモンスターに近づく。
無論、覇者達とテレビ局の人達だ。
「今度の敵は…。」
「恐竜だな…。」




