過去の回想 あの日編
五人は洞窟の中にいた。始まりも、終わりも見えない場所。
「ここが…。」
「地下界なのか?」
「ようこそ、地下界へ」
「うぉうっ!誰だアンタ?」
目の前に女の人が座っている。普通の女性。デパートの案内所のお姉さんと言うような感じ。
「私は地下界の受付。あなた達をここまで連れてきました」
「…そりゃどーも」
「さて、早速ですが質問です。あなた達は地下界に進みますか、二界道に進みますか?」
「ニカイドウ…?」
「地下界に進んだらどうなるんだ?」
「地下界の住人になります。順番が回ってくれば魂は輪廻に戻ります」
「順番…?」
「今生きている人よりは既に死んでいる人の方が多いのは解りますよね。ですから、地下界の人口を一定に抑えるために一人死ねば一人輪廻に戻ります」
「なるほどね。じゃあ、二界道に行ったらどうなるわけ?」
「二界道に行くには向こうにある天上界扉を潜らなければなりません。そして、二界道を無事に抜けきれれば、天上界に繋がる地下界扉にたどり着きます」
「無事に抜けきれなければ?」
「その魂は消え失せます」
「…………。」
全員が絶句する。だが、フェニックスが、
「…ここに来るときに覚悟は出来てたはずだ」
と言った。
「…だな」
「俺様達は二界道へ行くぜ」
「かしこまりました。では、こちらです」
天上界にて。
「鰻丼ー。茶ー飲みに来たぞー。」
「その呼び方やめいッ、キング・ジャイアント!」
「すまんすまん。ん、どうした、浮かない顔をして?」
「五人が…地下界に入った」
キング・ジャイアントの顔色が変わる。
「…何故」
「イフスティックで五人の技を一時的に奪った。それで天上界に来るために二界道を通ろうとしている」
「ならば、鰻丼、お前がやることは決まっているな、」
「ああ。イフスティックで五人の技を復活させ、我々も二界道に向かう」
「それは違う」
「何だと」
「わしらが二界道に行ってはならん」
「キング・ジャイアント、お前も二界道の危なさは解っておろう?我々天上界の人間であってもあそこを通り抜けられる確率はたったの一割。九割は死んでしまう…」
「その通りだ」
「ならば我々が…」
「それは違う」
「…キング・ジャイアント!」
「あの道は五人が、彼らだけで通り抜けなければならん」
「何度も言うが、我々でも一割の確率しか…」
「ならばそなたは何故『あの日』彼らに付き添った」
「…………。」
「五人が死んだあの日、そなたは彼らを天上界に誘導した。最も、五人から記憶は消したが。そなたは、何故そこまでの危険を冒して彼らを生き返らせた」
「…………。」
「何か、成し遂げたいものがあったのではないか?彼らと共に、成し遂げたいものがあったのではないか?」
「…………。」
どんぶりうなぎは黙ったままだ。
「それを成し遂げるには、彼らが自分達の力だけであの道を通り抜けなければならん。お前という頼れる師から離れなければならん。お前も、離れてやらねばならん!」
「解った…。五人の技だけ復活させておこう。」
どんぶりうなぎは杖に唱えた。
「必ず、通り抜けろよ…!」
五人が死んだあの日の事。
「ようこそ、猛さん、佑樹さん、春哉さん、琢磨さん、剛士郎さん。そして、どんぶりうなぎさん」
「地下界の受付よ、こやつらを二界道に連れていくが、よろしいか」
「構いません」
「どんぶりうなぎとやら、ここはどこなんだ」
「地下界。俗に冥界と言う所だ」
剛士郎の問いにどんぶりうなぎが答える。
「我々は今から何を…?」
「心配はいらん。どんぶりうなぎがお主らを導く」
「二界道とは何だ」
「お主らが知るようなことではない。知ったとしてもすぐ忘れてしまう」
五人とどんぶりうなぎは二界道に入った。
「キィヤァァァァァァァァァァ!」
モンスターが襲ってくる。
「うわっ!」
五人は驚くが、どんぶりうなぎがモンスターに眼を向けると、モンスターは跡形無く吹っ飛んだ。
「今のは…?」
「モンスターだ。地上にはおらなんだが、この地下界にはたくさんいる。気を抜くな、あのモンスターより強い奴がこれから何匹も現れるぞ」
五人は未だかつて無い恐怖を感じながら、どんぶりうなぎの後ろを歩いていった。
それからも、どんぶりうなぎは眼光一つで敵を片付けていったが、遂にそれだけでは勝てない敵が現れた。
「キョアアアアアアアアアアア」
ギン!
どんぶりうなぎが睨み付けるが、モンスターは睨み返し仲裁したようだった。尤も、五人には何も解らない。
「キョアアアアアアアアアアアア」
今度はモンスターが攻めてくる。だが、
「シールド」
どんぶりうなぎがそう唱えると五人に近づいた途端に消えてなくなった。
次に現れたのは、モンスターではなく、「人間」だった。そいつは、どんぶりうなぎと同じように魔法を使ってくる。
「ショック」
「シー…」
どんぶりうなぎがシールドを張るのに間に合わず、五人は気絶した。
「目が覚めたか」
次に五人が起きたのはあの真っ白な世界だった。その時は彼らは五人一緒ではなく、一人だった。そして、二界道の記憶も無かった。そこで彼らは力を受け取った。
地下界にて。
「これが…天上界扉なのか?」
「そうです。私が付き添えるのはここまで。後は自分達で頑張ってください」
五人は、扉を開いた。




