雷の覇者、雷虎サンガー
サンガーは、ずぶ濡れで目を覚ました。
「うぐ…」
起き上がる。
すぐに眼は利かなかったが、雷と雨の音で、状況が理解できた。
「嵐…!」
視界が利いてくる。
「夜だな…」
少し歩いていく。
すると、右の方からパラパラと小石の落ちるような音が聞こえてきた。
「何だ?」
音の方向に歩いていく。
すると、出した右足が置く地面を失った。
「え…?」
足を引っ込め、そこを手で触ろうとする。
先がない。
段差ではなく、下がなかった。
「ここは…崖なのか…?」
恐怖で二、三歩後ずさる。
違う方向へ進むことにした。
調べて解った事だと、ここは三方に見えない壁があり、一方に崖がある囲まれた場所だと解った。
壁はいくら攻撃しても破壊できなかった。
「どうして俺はこんな所に…?」
「それは独り言か?それとも、誰かいるなら答えを教えて欲しいのか?」
「誰だ!?」
サンガーが後ろを向くが、誰もいない。
すると、別の方向から同じ声が聞こえてきた。
「私が聞いている。お前の質問の答えを知りたいか?」
「…知りたい」
「ならば、教えてやろう。お前は、私の種であった。そして私はお前の体を乗っ取っている。お前はここに監禁されているのだ」
「私、私って…アンタ誰だよ…?」
「私は、雷の呪い神」
「呪い神…」
「ああ、私からも君に言いたい事がある。あまりここの壁を攻撃しないで欲しいのだが」
「監禁されているのなら、出られるまで攻撃し続ける」
「ふぅ…。殺されてでも攻撃するか、生きるために攻撃をやめるか。こう言われたらどうする?」
サンガーは笑って答えた。
「こう答えよう。攻撃し、かつ生きる」
「それは不可能だ」
「やってみなければ解らない」
「ならば解らせてやろう。貫地禁雷之槌!」
「ぐっ…!」
空から黄色い線が落ちてくる。
サンガーが前に避けた。
出来るだけ崖の方向へは行きたくない。
だが、その心情を理解されたのか、戦略をそう立てたのか、雷の呪い神はサンガーを崖へ追いやろうとした。
「貫地禁雷之槌!」
サンガーの目の前に落ちる。
当たらなかったのではない。
当てなかったのだ。
五禁の落ちた余波で、サンガーは後ろに飛ばされた。
崖の方向へ。
サンガーはギリギリの所で止まった。
「危ね〜」
サンガーの体重があと二キログラム軽かったら、死んでいたかもしれない。
五禁で崖に落ちないよう、すぐに崖から離れる。
「落ちなかったか」
雷の呪い神が言う。
「男なら自分の技で殺せよ。そんな戦略的な事をせ…」
「注文通りの殺し方をしてやろう。貫地禁雷之槌!」
サンガーの頭に大雷が落ちた。
「がっ…!」
「モロくらったな。これで生きられるなら大したものだが」
サンガーが膝をつく。
「まぁ…生きろというのは欲張りすぎたな。生き物の形を保てただけ優しゅ…」
「エレクトローダー・ハイテンション!」
突如サンガーが立ち上がり、電気を帯びる。
「アーンド雷の爪牙!」
電気を帯びた爪が、雷の呪い神に突き刺さった。
刺さった部分から血が出る。
そして、電流が流れる。
「何故生きていた…?」
「フェニックスが頑張ってんだ、そう簡単に死ねねーよ」
「気色悪い考えを持つ奴め…次こそ殺してやる、貫地禁雷之槌!」
二人の間にそれは落ちた。
そして、両方を吹き飛ばした。
雷の呪い神を壁の方向へ、サンガーを崖の方向へ。
「やっべ!」
どんどんと近づく崖を見てサンガーが言う。
爪を地面に突き立てる。
だが、余波に押され崖から転落した。
それを見た雷の呪い神は笑って言った。
「ハハ…様ァ見ろ…私を怒らせたからだ…ハハハ…」
崖へと向かう。
「亡骸を見れんのは残念だが、まぁい…」
崖の下を見て、雷の呪い神は固まった。
「亡骸、確かに見れなかったな」
「貴様…何故生きている!?」
サンガーは、崖に爪を立てていた。
爪からは血がにじみ出ていた。
「生きてやるさ…テメエに殺されることだけは…俺のプライドが許さん!」
サンガーは、本当に少しずつだが崖を登っていく。
爪でザックザックと音を立てて。
「く、来るな!貫地禁雷之槌!」
空から黄色い線がサンガーめがけて落ちていく。
当たれば、今度こそ確実に「死」だった。
だが、雷の呪い神が五禁を唱えた瞬間にサンガーは飛び上がっていた。
目標を失った黄色い線は見えない底へと落ちていった。
「生還ッ!」
「あ…あわわ…」
「さぁ、雷の呪い神。バトルを続けようぜ」
二人が、雷を出し合った。