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五人の覇者  作者: コウモリ
エピローグ
144/147

雷の覇者、雷虎サンガー

サンガーは、ずぶ濡れで目を覚ました。

「うぐ…」

起き上がる。

すぐに眼は利かなかったが、雷と雨の音で、状況が理解できた。

「嵐…!」

視界が利いてくる。

「夜だな…」

少し歩いていく。

すると、右の方からパラパラと小石の落ちるような音が聞こえてきた。

「何だ?」

音の方向に歩いていく。

すると、出した右足が置く地面を失った。

「え…?」

足を引っ込め、そこを手で触ろうとする。

先がない。

段差ではなく、下がなかった。

「ここは…崖なのか…?」

恐怖で二、三歩後ずさる。

違う方向へ進むことにした。






調べて解った事だと、ここは三方に見えない壁があり、一方に崖がある囲まれた場所だと解った。

壁はいくら攻撃しても破壊できなかった。

「どうして俺はこんな所に…?」

「それは独り言か?それとも、誰かいるなら答えを教えて欲しいのか?」

「誰だ!?」

サンガーが後ろを向くが、誰もいない。

すると、別の方向から同じ声が聞こえてきた。

「私が聞いている。お前の質問の答えを知りたいか?」

「…知りたい」

「ならば、教えてやろう。お前は、私の種であった。そして私はお前の体を乗っ取っている。お前はここに監禁されているのだ」

「私、私って…アンタ誰だよ…?」

「私は、雷の呪い神」

「呪い神…」

「ああ、私からも君に言いたい事がある。あまりここの壁を攻撃しないで欲しいのだが」

「監禁されているのなら、出られるまで攻撃し続ける」

「ふぅ…。殺されてでも攻撃するか、生きるために攻撃をやめるか。こう言われたらどうする?」

サンガーは笑って答えた。

「こう答えよう。攻撃し、かつ生きる」

「それは不可能だ」

「やってみなければ解らない」

「ならば解らせてやろう。貫地禁雷之槌!」

「ぐっ…!」

空から黄色い線が落ちてくる。

サンガーが前に避けた。

出来るだけ崖の方向へは行きたくない。

だが、その心情を理解されたのか、戦略をそう立てたのか、雷の呪い神はサンガーを崖へ追いやろうとした。

「貫地禁雷之槌!」

サンガーの目の前に落ちる。

当たらなかったのではない。

当てなかったのだ。

五禁の落ちた余波で、サンガーは後ろに飛ばされた。

崖の方向へ。

サンガーはギリギリの所で止まった。

「危ね〜」

サンガーの体重があと二キログラム軽かったら、死んでいたかもしれない。

五禁で崖に落ちないよう、すぐに崖から離れる。

「落ちなかったか」

雷の呪い神が言う。

「男なら自分の技で殺せよ。そんな戦略的な事をせ…」

「注文通りの殺し方をしてやろう。貫地禁雷之槌!」

サンガーの頭に大雷が落ちた。

「がっ…!」

「モロくらったな。これで生きられるなら大したものだが」

サンガーが膝をつく。

「まぁ…生きろというのは欲張りすぎたな。生き物の形を保てただけ優しゅ…」

「エレクトローダー・ハイテンション!」

突如サンガーが立ち上がり、電気を帯びる。

「アーンド雷の爪牙!」

電気を帯びた爪が、雷の呪い神に突き刺さった。

刺さった部分から血が出る。

そして、電流が流れる。

「何故生きていた…?」

「フェニックスが頑張ってんだ、そう簡単に死ねねーよ」

「気色悪い考えを持つ奴め…次こそ殺してやる、貫地禁雷之槌!」

二人の間にそれは落ちた。

そして、両方を吹き飛ばした。

雷の呪い神を壁の方向へ、サンガーを崖の方向へ。

「やっべ!」

どんどんと近づく崖を見てサンガーが言う。

爪を地面に突き立てる。

だが、余波に押され崖から転落した。

それを見た雷の呪い神は笑って言った。

「ハハ…様ァ見ろ…私を怒らせたからだ…ハハハ…」

崖へと向かう。

「亡骸を見れんのは残念だが、まぁい…」

崖の下を見て、雷の呪い神は固まった。

「亡骸、確かに見れなかったな」

「貴様…何故生きている!?」

サンガーは、崖に爪を立てていた。

爪からは血がにじみ出ていた。

「生きてやるさ…テメエに殺されることだけは…俺のプライドが許さん!」

サンガーは、本当に少しずつだが崖を登っていく。

爪でザックザックと音を立てて。

「く、来るな!貫地禁雷之槌!」

空から黄色い線がサンガーめがけて落ちていく。

当たれば、今度こそ確実に「死」だった。

だが、雷の呪い神が五禁を唱えた瞬間にサンガーは飛び上がっていた。

目標を失った黄色い線は見えない底へと落ちていった。

「生還ッ!」

「あ…あわわ…」

「さぁ、雷の呪い神。バトルを続けようぜ」

二人が、雷を出し合った。


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