土の覇者、土蛇バジリスク
「…?」
バジリスクが目を覚ましたのは、砂漠だった。
夜になっており、辺りは静まっていた。
「何があったんだ…。わしから黒い煙が出てきて…その後は…」
解らなかった。
少し歩いてみる。
まずは、ここがどこかを調べなくてはならない。
少し歩くと、前にある何かとぶつかった。
「何かあるのか…?」
手で前を探る。
硬い壁があった。
向こうに砂漠が続いているように見えるのだが、壁があった。
「破れるのか…?ギガクラック!」
だが、壁は破れなかった。
「破れない…。ここは…一体どこなんだ…?」
壁に沿って歩く。
すると、曲がり角が来る。
「四角形になっ…」
「隠天禁土之建!」
バジリスクのいる地面から細い線が現れ、バジリスクを吹き飛ばした。
「がっ…!」
十数メートルは上に上がった。
そして、落ちた。
「ぐはっ…!」
「不意打ちとはいえ、落ちる時に何も出来なかったとは覇者の名折れだな」
「誰だ…?」
「土の呪い神だ」
「呪い神の土の奴…?何故ここにいる?」
「貴様が壁を叩いたせいでここが揺れている」
「揺れている?ここはどこなんだ?」
「私の中だ。私の種であったお前をここに閉じ込めている」
「…出せよ」
「何をしようとお前は出られない。ここはお前の体の中でもあるからな」
「…?」
「私がお前の体を乗っ取っているのだ」
「なっ…!」
「だが、さっきの様に騒がれては困る。ここで殺してやろう。隠天禁土之建!」
またしても避けられない。
「げほっ…!」
「覇者の中ではお前が一番ノロマな様だな。その調子ならすぐに殺せそうだ。隠天禁土之建!」
「ごぶっ…!」
ドサッ。
「死んだか…?」
バジリスクが動かない。
土の呪い神がバジリスクに近づく。
「全く動いてはいないが…息はしている。まだ死んではいないな。次で仕留めてやる。隠天…」
「岩石斧!」
「なっ…!」
「ぜやっ!」
バジリスクが土の呪い神に向かって斧を振る。
土の呪い神は数メートル吹っ飛んだ。
「覇者一ノロマかもしんねーけどよ…わしは覇者一のパワーの持ち主だぞ」
「…生意気な…隠天禁土之建!」
「ふんッ!」
バジリスクが地面を殴り付ける。
線は出てこなかった。
「何をした…?」
「五禁が地面から出る前に潰したんだよ」
「そんな事が…!」
「次はお前を潰すぜ。岩石槌!」
巨大な岩のハンマーが現れた。
「覚悟しろ!」
「おっ、隠天禁土之建!」
ハンマーは砕け散った。
「チッ…」
バジリスクが持ち手だけになった岩を捨てる。
油断していた。
「隠天禁土之建!」
「なっ…!」
バジリスクが舞い上がる。
そのまま落ちていく…はずだった。
落ちる場所には土の呪い神がいた。
「やべ…」
「死ね!」
土の呪い神が落ちてくるバジリスクを殴り飛ばす。
威力が違った。
バジリスクは二十メートル以上ぶっ飛び、壁にぶつかった。
「いって〜…」
「貴様よりパワーもあった様だな。取り柄は消えたぞ」
だが、バジリスクはすぐに立ち上がった。
「あ、あれほどの威力で殴られたというのに…」
「わしのもう一つの取り柄を教えてやろう。『タフ』だ」
「それもいつまで持つかな、隠天禁土之建!」
バジリスクに茶色い線は直撃した。
轟音と共に砂埃が巻き立つ。
「いくらタフだろうと、避けられなければ意味が…?」
砂埃の中から現れたのは、血だらけのバジリスクだった。
「五禁を…受け止めた?体で…?」
「テメエみたいに生まれつきのマッチョじゃねぇんだ…わしの体は、やられてやられてやられまくって出来た鉄の鎧だ…!」
「く…だが、それほどの出血量、かなりの痛手を負ったはず。あと一度五禁をくらえば終わるだろう。隠天禁土之建!」
「ロックハーデン!」
「なっ…!動けん…!地下界王の固めとは質が違う…!」
その言葉にバジリスクは疑問を持った。
「地下界王?何で地下界王がアンタを固めるんだよ」
「今、地下界王は敵だ。我々が地下界を破壊しようとしたからな」
「つまり、フェニックスと地下界王が組んでるって事か…?」
「ああ、我々を封印しようとしている」
「そんな事が…」
土の呪い神は笑った。
「尤も、奴等じゃ無理だろうがな」
バジリスクも笑った。
「わしが勝ちゃあ別の話だろう」
「ああ、勝てればな。勝てれば」
土の呪い神が岩を打ち砕き自由になる。
「勝てるものなら勝ってみろ」