呪い神(三)
「フェニックス、力を貸してくれ…!」
「…解った!」
「させるか!滅世禁炎之舞!」
「滅世禁炎之舞!」
フェニックスが相殺する。
「相殺…貴様いつの間にそんな力を…」
「パックンチのパワーのおかげだ。それより、地下界王!自分のパワーを人に与えるにはどうすれば良いんだ?」
「私にパワーを与えると念じるだけで良い…お前が本当に渡したいと思っているなら、自ずと私の所へ来るだろう」
「解った!」
フェニックスが念じる。
光の煙がフェニックスから地下界王に向かう。
「よし…」
地下界王が目の前にいる土の呪い神に手のひらを向け、
「封印!」
光線が土の呪い神に向かった。
だが、それは土の呪い神に当たっても何も起きなかった。
「…?」
「まだ弱い様だな」
「そん…な…!」
ドスッ!
「ぐはッ!」
土の呪い神が地下界王を蹴飛ばした。
「地下界王!」
フェニックスが駆け寄る。
「今度こそこの世を破滅させてやろう!総力五禁で…」
雷の呪い神の声が途中で止まった。
フェニックスと地下界王が呪い神の方向を見る。
すると、五人全員立ったまま固まっていた。
「何があった…?」
フェニックスが戸惑う。
「私が思うに…推測だが、奴等の中にいる五人の覇者達が内で戦っているのだ。呪い神の奴等も、内外同時に動く事は出来ないらしい」
「アイツらは…呪い神の中で意識を持っているのか!?」
「多分な。だが、話している暇はない。殺るなら今しかない」
「殺る…?地下界王、封印じゃないのか?」
「封印というのは呪い神に我々の力が及ばないから使うのであって、相手が動かん以上殺した方が未来のためだ」
「そ、そんなの駄目だ!中には五人の覇者がいるんだぞ!?」
地下界王が怒鳴った。
「友を捨てるか未来を捨てるか!フェニックス、友情は邪魔なだけだ!」
だが、フェニックスは考えを曲げなかった。
「いつかきっと呪い神と分離する時が来る!そん時俺がぶっ殺すから今は封印で抑えてくれ!」
「…解った」
地下界王が折れた。
だが、地下界王は、
「ただ、フェニックス」
「何だ?」
「封印は成功すれば受けた身はこの世のどこかに転移する。火の呪い神は地下界の中に残ったが、四人は火の呪い神曰く他の二世界で見つけた」
「じゃ、じゃあ…」
「彼らを封印すればこの三世界のどこかに散る。さっきは咄嗟の事で言えなかったが、彼らを封印する覚悟はあるのか?」
地下界王は封印する事を認めた。
今度は、フェニックスの番になってしまった。
「封印が成功したら、五人が三世界のどこかに散る…?」
「ああ、それは封印した者にも解らない」
「そんな…」
「奴等が固まっているのがいつまで続くか解らない。早く決めろ」
「…………。」
フェニックスは少し黙っていたが、結論を出した。
「封印して五人が散らばったら、俺が生きている限り探し続ける。それで封印解いて呪い神と分離。その後呪い神をぶっ殺す。シナリオは立った、地下界王、さっさと封印しちまうぜ」
地下界王は微笑を浮かべた。
「用意をしろ、フェニックス」
「おう」
フェニックスから地下界王にパワーが流れ込む。
「封印!」
光線が火の呪い神にぶち当たる。
が、またしても何も起こらなかった。
「まだパワーが足りないのか!?」
フェニックスが舌打ちする。
「やはりパックンチという虫ケラが仲間を引き連れるのを待つしかないか…」
「それまで固まってると良いけどな…」
「そうだ」
地下界王がフェニックスを見て言った。
「サイゴも封印を使える」
「何故」
「二界道を作らせたり何だったりと、サイゴは技術面が優れているので何かのために覚えさせておいたのだ」
「マジかよ、でもアイツ逃げちまったぞ」
「サイゴが行くとしたら二界道だ。パックンチとやらに連れてくるよう言ってくれんか?」
「言うったってどうやって?」
地下界王が考える。
「フェニックス、お前声で波動を作れるか?」
「作れる」
「覇者達は波動をコントロールした。だからお前はそれ以上の事が出来るだろう。メッセージの波動をパックンチまで飛ばせ」
「出来るかどうか解らないが…やってみよう」
フェニックスはパックンチが行った方向を向くと、
「サイゴも連れてこーい!!」
と叫んだ。
後は操るだけだ。
眼を閉じ、
「右行って…下…右…」
「やはり、覇者以上の事をしているな」
地下界王が苦笑していた。