呪い神(二)
フェニックスは地下界王に言った。
「地下界王…天上界と地上界は本当に誰も攻めていないのか?」
「今更何を…答えとしては誰も攻めていない」
「ならば…」
フェニックスはポケットからパックンチを出した。
「天上界と地上界に行って、皆を呼んできてくれ」
「…フェニックス一人で残る気かンチ?」
「ああ」
「危険すぎるンチ…行けないンチ…」
「大丈夫だ、お前が連れてくるまでなら耐えられるさ」
「でも…」
「行ってくれ。天上界と地上界、二世界の運命が懸かってるんだ」
「…解ったンチ」
そう言うと、パックンチは自分の体の中から光の玉を取り出した。
それを99:1ぐらいに分ける。
1の方を自分の体の中に戻した。
「パックンチ…?」
「行って帰るだけならこれで充分だンチ。残りはフェニックスにあげるンチ。パックンチがずっと溜めてきたパワーだンチ」
「良いのか…?ありがとな」
フェニックスは自分の体にそれを押し込んだ。
「絶対…死んじゃ駄目だンチ」
「たりめーだ」
パックンチはすごいスピードで飛んでいった。
「飛べたんだ…めっちゃ速いし…」
「逃がすか、滅世禁炎之舞!」
「滅世禁炎之舞!」
フェニックスが火の呪い神を抑えた。
「パックンチは殺させない。あれが二世界の希望だから」
「人間が調子こいた事言いやがって…」
「落ち着け、火の呪い神」
「水の呪い神…」
「あの虫ケラが帰ってくる前にコイツを殺せば良いだけではないか」
「それも…そうだな」
フェニックスが身構える。
「死ね!滅世禁炎之舞!」
だが、フェニックスは応戦せずに避けた。
相手は五人、しかも神。同じ技で応戦し続けて先に力尽きるのは確実にこちらだからだ。
それに、ジンギと戦った時や、さっきもそうだった。
瞬発力には自信があった。
「ちょこまか逃げおって…滅世禁炎之舞!」
フェニックスが右に飛び退くが、
「消陸禁水之踊!」
更に襲ってきた。
左に転がる。
フェニックスが避けた二本の線は、辛うじて残っていた宮殿を全壊した。
「あの…呪い神様、出来るだけ地下界に影響を与えないで欲しいのですが…」
地下界王が言う。
「解っている」
そうは言うが、呪い神達の眼にはフェニックスしか映っていないようだ。
「絶人禁草之生!」
今度は緑の線がフェニックスに向かう。
フェニックスは火炎の翼を使って飛んだ。
「貫地禁雷之槌!」
だが、雷の呪い神から黄色い線が来るわけではなかった。
上から来たのだ。
後ろにフェニックスが飛び退く。
「予想はしていたが、本当に上から来…」
「隠天禁土之建!」
右に避ける。
「今度は下からか…」
既に荒れ地となったその場所は、呪い神のやりたい放題だった。
通常五禁から四重五禁まで、フェニックスを殺すためだけに撃ち続けた。
だが、フェニックスは避け続けた。
「どんなもんだ、俺の才能+パックンチのパワーだ」
「ちょこまかちょこまか…」
火の呪い神の怒りが頂点に登り詰めた。
他の四人も、我慢が限度だった。
地下界王の顔が青ざめる。
「まさか…呪い神様…」
草の呪い神が他の四人を見て言った。
「総力五禁、使ってしまうか」
「おやめください!総力五禁など使おうものなら上の二世界だけでなく、地下界も吹っ飛んでしまいます!」
だが、土の呪い神は笑った。
「また一から作り直すさ」
「そんな…」
地下界王が膝をつく。
「火の呪い神様、私があなたの封印を解いたのは地下界を最強にするため…お約束を守って頂けないのですか…?」
「何故貴様の言う事を聞かねばならん」
「…………。」
騙されていたのだった。
「行くぞ」
「待ってく…」
「滅世禁炎之舞!」
「消陸禁水之踊!」
「絶人禁草之生!」
「貫地禁雷之槌!」
「隠天…がっ…!」
地下界王が土の呪い神を抑えた。
「地下界王…?」
もう駄目だと覚悟していたフェニックスも、相当驚いた。
火の呪い神が地下界王に叫ぶ。
「何をする、地下界王!」
「一人を抑えていればこの世界の消滅は防げる…!」
「…離せ…」
土の呪い神が足掻くが、地下界王の抑えから逃れられない。
「フェニックス!」
「地下界王…?」
「かつて誰かがしたように…呪い神は封印する事が出来る!」
「え…?」
「封印を掛けるのと封印を解くのは一まとまり…私も呪い神を封印する技術を持っているのだ!」
「何だと!?」
呪い神が地下界王の方を向いた。
「だが、私一人では五人を封印する事は…いや、一人さえも出来ないだろう…。フェニックス、力を貸してくれ…!」