呪い神(一)
「残りの四人を復活させ、私を完全にする準備は出来ている」
六人は衝撃を受けた。
「んな事…嘘に決まってるだろ…それに、別にアンタが呪い神っつー危なそうな奴である証拠もない…」
すると、火の呪い神は微笑を浮かべた。
「証拠が欲しいか…」
六人は身構えた。
「滅世…」
火の呪い神は、そう言った。
「…禁炎之舞!」
六人に向かって細い糸が飛ぶ。
彼らに当たるギリギリのところで、
「滅世禁炎之舞!」
フェニックスが返した。
だが、敵の方が威力が強かった。
六人は数メートルぶっ飛んだ。
「私が『神』である証拠を示した。それよりお前、何故五禁が使える?」
「火神に教えて貰ったんだ…」
「そうか…」
火の呪い神は何か考えるような顔を見せたが、すぐに六人に目を向けた。
「他に、私について知りたい事はあるか?」
フェニックスが言った。
「残りの四人を復活させ、私を完全にする準備は出来ている…って言ってたよな?何をしたんだよ」
火の呪い神は少し間を置くと、フェニックスに向かって話し出した。
「元火の覇者、火鳥フェニックス。お前の名前はそうだな?」
「そうだよ」
「お前が覇者になった時を思い出せ」
フェニックスの脳裏に、どんぶりうなぎにフレアや奥義を教えて貰った事がよぎる。
「お前は技を教えて貰ったあと、どうやって地上界に戻った?」
「どうやってって…火炎の翼で…」
「そうだ。翼で下りたのだ。なら、翼が無かったらどうなる?」
フェニックスは考えた。
翼が無ければ。
「どうやって…?」
解らなかった。
だが、火の呪い神は自分では答えなかった。
「私に聞くな。私はお前の仲間達の話をしているのだ」
「え…?」
フェニックスが五人の方を向く。
正確には、クラーケン、ペガサス、サンガー、バジリスクの四人を。
「お前ら…どうやって地上界に来ていたんだ…?」
四人が顔を見合わせる。
「僕は…どんぶりうなぎに会ったあと、何故か気絶して気づいたら地上界に」
「俺も」
「わしもだ」
フェニックスがペガサスを見る。
「お前は羽があるから、飛んできたのか?」
「いや、俺様も気絶してきた」
「だ、そうだ。フェニックス、お前だけが自分の力で地上界に来ていたのだよ」
「…何が言いたい、火の呪い神!」
火の呪い神はニヤついた。
「四人が気絶した間…何があったと思う?ただ地上界に運ばれた訳では無いのだ」
「…?」
「彼らに『種』を植え付けていたんだよ」
「種…?」
フェニックスが戸惑う。
「そう、種だ。どんぶりうなぎが眼を離した隙に植えたのだ。それは二百年間彼らの中で育ち続け、今開花する」
当の四人も何が何だか良く解っていない。
解っているのは、自分に何らかの種が植えられているという事だ。
フェニックスが叫ぶ。
「クラーケン、ペガサス、サンガー、バジリスク!何か思い当たる事は無いのか?」
「ありません…」
すると、火の呪い神が言った。
「今何の話をしているか良く考えろ」
フェニックスの脳が過去に遡る。
「残りの呪い神の復活について…」
「その通りだ。私が彼らに植えた種は…」
四人から黒い煙が出てくる。それは四人を隠した。
「…呪い神の種だ」
煙の中から現れたのは、前の四人ではない。
「久しぶりだな、火の呪い神!一足先に復活しておったか」
「水の呪い神も、今力を取り戻したではないか」
火の呪い神はフェニックスに向き直った。
「何が…あったんだ…?」
答えたのは地下界王だった。
「彼らの中で育った呪い神が、体を乗っ取ったのだ。姿形も変わっている」
「四人はどこに行った…?」
サラマンダーが地下界王に言う。
「あの体の中だ。だが、もう出ては来れんだろう」
フェニックスが火の呪い神を睨み付ける。
「テメエ何しやがる!」
「それを言うのはまだ早い。私のショーは終わっていない」
火の呪い神が指を鳴らした。
同時に、口を開ける。
「うあ…ああああああああああ!」
サラマンダーが頭を抱えた。
「どうしたサラマンダー!?」
次の瞬間、サラマンダーは消えた。
「火の呪い神…何をしたんだ…?」
「彼を吸い込んだ。私を完全体にするためにな。残ったのはお前一人。我々に勝つ術は無いのだ」
地下界王と五人の完全な呪い神。
五人の覇者を失ったこちらはフェニックスとパックンチだけ。
勝つ方法は無かった。