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五人の覇者  作者: コウモリ
短編11
135/147

幕末五人の覇者

短編。幕末の五人

時は幕末。

刻は夕暮れ。

「猛、夕飯ですよ」

「む、すまねぇ竜介。おっ母が呼んでる」

「明日も会おうな、猛君」

「おう」


「佑樹、ご飯ですよ」

「ありがとうございます、母上」

「いいえ、全て富豪の父上のおかげです」


「春哉、夕飯だよ」

「すまんな、お袋」


「琢磨、夕飯ができましたよ」

「…解った、お袋」


「剛士郎!夕飯だよ!」

「解った解った、今行くよ」


平和な家がある五人だった。

だが、「平和」と「楽しい」は同じではない。

この五人、同じ村に住み、また生活が良く似ていた。

皆、農作業に励み、毎日同じ一日だった。

それ故、色のついた人生ではなかった。

だが、それも変わった。

ある日の夜だった。

村で宴が開かれたのだ。

そこには、まだ子供の猛や竜介も呼ばれた。

この様な非日常の場が唯一、彼らにとっての「色」だった。

そこに、ある酔っ払った武士が迷い込んできた。

「ヒィ…やけに騒がしいな…宴でも開いてんのか?」

その場は、一瞬で冷たく固まった。

相手は刀を持っているのだ。

「何だ…酒があるんじゃねぇか…。寄越せよ」

近くにいた人が恐る恐る酒を渡す。

だが、

「まずい!」

「す、すみません…」

すると、武士が刀を抜いた。

「宴会芸を見せてやる…そこのお前達、ここに来い」

呼ばれたのは、猛、佑樹、春哉、琢磨、剛士郎だった。

五人が近くに行く。

彼らが生きているのは、それまでだった。






五人は、真っ白な部屋で目が覚めた。

「目が覚めたか」

「……ッ……。」

「ここは、天上界だ」

「あなた…は…?」

「私の名は徳川家康。お前らに力を与えるために現れた」

「家康様…!」

江戸幕府一代将軍に、五人が土下座する。

「顔を上げろ。お前達はこれからやらねばならん事が沢山ある」

「それは…なんでしょうか…?」

家康は目を伏せた。

「我が江戸幕府を…守ってくれ」

「幕府を…守る…?」

五人が首をかしげる。

「幕府は安全なのでは…?」

「この後すぐ、幕府は崩壊する。わしの力で確かめたから間違いはない」

「…!」

家康は言った。

「わしから力を受け取り、幕府を守ってくれ。解ったな」

「へ…へい!」

家康は、笑って続けた。

「猛。お前には火の力を与え、フェニックスと名乗れ」

「へにくす?」

「フェニックスだ。佑樹、お前には水の力を与え、クラーケンと名乗れ」

「はい」

「春哉。お前には草の力を与え、ペガサスと名乗れ」

「解りました」

「琢磨。お前には雷の力を与え、サンガーと名乗れ」

「へい」

「最後に、剛士郎。お前には土の力を与え、バジリスクと名乗れ」

「仰せのままに」

最後に、家康は言った。

「すぐに江戸に向かえ。長州や薩摩が攻めてきておる」






江戸城周辺にて。

「幕府を守れとは言われたが…何をすれば良いのだろうか…?」

「簡単だ。薩長を見つけたら殺すんだ」

「それで良いのでしょうか…?」

「家康様の命令だ。やらねばならん」

「そうだな」

五人は江戸城の屋根に登った。

「ここからが良く見えるな」

「まだ攻めてきてはいなさそうですね」

だが、薩長は動いていた。

「城の下の方で誰か叫んでいる」

「ん…?」

大変だー!薩長が西から攻めてきた!

「きっ、来たみたいだぞ…?」

「やってやるぜ!」

大量の兵士が江戸城に向かっている。

対する幕府は準備が出来ておらず、少量の兵で向かえた。

だが、その差を埋める五人の戦士が現れた。

「薩長を焼き払え!大量火炎!」

「水攻めです!大量水流!」

「皆殺しだ!必殺劇毒!」

「十億落雷!」

「大瓦割り!」

薩長は、全兵死んだ。

「ヤッター、家康様の命令を守ったぞ!」

喜んでいた五人だったが、一人の男が来た。

「あなた方の活躍…拝見させて頂きました…!素晴らしい!幕府の正式な武士になって頂けませんか?」

五人が顔を見合わせる。

「解りました、なりましょう」

クラーケンが答えた。






その後、刀が配給された。

尤も、それで戦う気はないが。

「武士かぁ…」

「かっけぇなぁ…」

「気が引き締まりますね」

だが、バジリスクが言った。

「敵が来ておる。外に出るぞ」

今度は、前の倍の兵士が攻めてきていた。

だが、彼ら五人に敵うはずもなく、バタバタと倒れていった。

しかし、薩長もそれだけではなかった。

「何だあれ…」

恐竜だった。

とうの昔に死んだはずの恐竜がいた。

「怪物だ…!」

江戸の民が逃げ回っている。

五人は奮い立った。

「行くぞ!」

「大量火炎!」

「大量水流!」

「必殺劇毒!」

「十億落雷!」

「大瓦割り!」

だが、恐竜は少し狼狽えただけで倒れはしなかった。

「くそ…」

すると、クラーケンが言った。

「奥義をやりましょう」

「そうだな」

「総力奥義!」

『主は火の覇者』

「出でよ火鳥!」

恐竜と同じくらいの大きさの鳥が現れる。

互いが炎を吐いた。

だが、火鳥の方が火力は上回った。

「化物が死んだ!」

「二度目も勝ったぞ!」






そのままやっていれば、幕府崩壊は免れたかもしれない。

だが、欲を出した幕府は、五人に薩長に行って根絶やしにしろと命令した。

五人も、それを快く受け入れた。

「これで薩長を潰したら大手柄、幕府も安泰だなぁ」

「頑張らなきゃなぁ」

彼らは、東海道を歩いていた。

だが、その頃薩長の全兵士は中山道を歩いていた。






五人は、長州に着いた。

「薩摩長州の武士がいれば即刻殺ろう。一旦別れよう」

別の道を進んだ。






「どうだった」

「兵士なんか誰もいなかったぞ」

「薩摩に行ってみよう」

だが、薩摩も同じだった。

「一度江戸に帰りましょう」

だが、江戸に帰った時には既に遅かった。

「おー、江戸城だ」

五人が城に向かうと、いつもの門番はいなかった。

「門番が変わったのか?」

だが、その門番の服には薩摩の紋章があった。

「え…?」

江戸は変わった。

彼らは、負けた。






その後、明治になり沢山の事があった。

覇者として、人とは思えないほどの長生きをした彼らは日清戦争で戦ったり、国際連盟を作るのを手助けしたりした。

ある日、五人は国際連盟の事務長と、アメリカ大統領とディナーを食べていた。

「アナタタチスゴイ。フシギナチカラヲモッテイル」

「いえ、人から貰ったものです」

「…?ダレカラモラッタノ?」

「天上界というところにいる、徳川家康様です」

「ソレデ、ソノイエヤスサマトハソレイライアッタノデスカ?」

家康とはあれ以来会っていない。

五人は顔を見合わせた。

「一度…戻るべきだろうか…?」

「かもしれませんね…」

次の日、五人は天に上り、帰ってくる事はなかった。


幕末五人の覇者、終了。

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