全世界戦争(八)
「まあいい。まずは、お前らを倒さねばな」
フェニックスが燃え上がった。
変な意味で捉えないで欲しい。
マジで燃えているのだ。
すると、ツルギがサイゴに耳打ちした。
「サイゴさん、あなたは逃げてください」
「…何故だ?」
「あなたがいなくなれば二界道が二本とも消えてしまう。そうすると緊急時に使える切り札が少なくなる」
「俺からも逃げろと言っておく」
「…どんぶりうなぎ、ツルギ、すまない」
サイゴが飛び出す。
「逃がすか、サーカスフレア!」
だが、どんぶりうなぎに阻まれた。
「ちきしょう」
「お前の相手は俺とツルギで充分だ」
「言ってくれるじゃねーか。その自信を打ち砕いてやるぜ、鳳凰火炎!」
「フェニックス、貴様ごときに技など使う必要はない!」
二つの波動が炎の鳥に立ちはだかった。
「くそ…これでも駄目か…『アレ』は使いたくないんだけどな…」
「まだ完全に制御しきれていないからか?そんな弱者によく五禁を教えたな、火神も!」
「ぐ…」
すると、ツルギが言った。
「今度はこちらから行きますよ」
無防備のフェニックスに、波動が向かう。
それをフェニックスは右手で払った。
正確に言うと、右手で送り出した波動で相殺した。
「そこまで俺も弱者じゃねーよ」
フェニックスは一息おくと、
「サラマンダー龍臨!」
巨大な火の竜を出した。
だが、それは部屋に入らずに壁を突き破った。
「命ず、あの二人を倒せ!」
火の竜が二人に炎を吐く。
どんぶりうなぎとツルギは、最初は波動で相殺していたが、埒が明かないと思い、サラマンダー本体に攻撃した。
竜が倒れる。
「サラマンダーも殺られたか…」
フェニックスが歯ぎしりをする。
すると、ポケットの中のパックンチが言った。
「フェニックス、体力の事は心配しなくて良いンチ。パックンチが今まで食べてきたのがあるンチ。だから、やりたいようにやるンチ」
フェニックスは笑うと、
「ありがとな」
と言った。
そして、
「オー、ゴー、フィー降臨!」
三体のモンスターが現れる。
「ケン、ジュー、マウ士臨!
スペード、クラブ、ダイヤ、ハート王臨!
デーモン、ゴースト、パイレーツ魔臨!
サラマンダー、九頭竜、ワイバーン龍臨!
神臨!」
大量に光魔術の生き物達が現れた。
その数17で、宮殿は半壊した。
「締めには冥臨!
全てに命ず、あの二人を倒せ!」
全てがどんぶりうなぎとツルギに向かう。
「これが俺のオリジナル魔術、『全臨』だ!思い知れ!」
この英雄、光の魔術に手を加えるまでに成長した。
だが、この全臨、考えれば解るように一人じゃ成立しない。
二人以上の大量の体力があって成立するのだ。
光の魔術の生き物達は、二人を滅多撃ちにした…と言いたいところだが、どんぶりうなぎとツルギも応戦していた。
そして、この数相手に二人は優勢だった。
だが、フェニックスの狙いは違った。
「バーカ、光の魔術の生き物でお前らを殺ろうだなんて思ってねーよ。ちゃんと自分で終わらせるさ。テラフレア!」
油断していた二人が炎の中に消えた。
だが、すぐに生き返った。
「ふーん…そう言えば、アンタら殺しても生き返るんだっけ」
生き返ったとはいえ、かなり弱ったどんぶりうなぎが笑って言った。
「そうさ…お前達の方が力は上回っていたとしても、勝てはしない…」
だが、フェニックスは笑った。
「俺前もこんな事言った気がするけど…殺せないなら、植物人間にしてやるよ。AIH値100にな」
AIH値100。これは、植物人間の値だ(過去の回想 二界道編【四】参照)。
フェニックスは、力が弱ってロクに動けもしない二人に近づいて、呟いた。
「フレア」
同時に、ツルギの脳細胞のシステムが強制終了した。
心臓は動いているのに、呼吸はしているのに、死んでいる。
「どんぶりうなぎ、アンタはまだみたいだな」
フェニックスはしゃがみ、どんぶりうなぎの顔に自分の顔を近づけて言った。
そして、悲しそうに続けた。
「アンタと最後に会うなら…師弟のままが良かった…」
「もう、一思いにやれ、フェニックス」
「さよなら、どんぶりうなぎ…。フレア」
二人目が、倒れた。
フェニックスが立ち上がる。
「地下界王…」
「…………。」
サラマンダーが言った。
「もう、この戦争はお前らの負けだ…。地下界の民のために、降伏しろ」
だが、地下界王は笑って言った。
「フン、戦争?何の話だ」