全世界戦争(七)
「よぉ、覇者隊。俺達が最後の相手だ。ここまで良く倒せたな」
サイゴがにやけ顔で言う。
「二人と戦って随分消耗したみてぇじゃねーか。その状況で俺達三人に勝つのはかなり難しいんじゃねーか?」
言われた通りだ。
フェニックスがいないこの五人、しかも体力は残っていない。
地下界最強のこの三人に、勝てるはずがなかった。
「どうすりゃいいんだ…」
「どーするもこーするもねぇ。貴様ら五人、ここで死ぬんだよ」
「くそ…!」
三人が、戦闘ポーズを取った。
五人も一応身構える。
「行くぜ」
サイゴが五人に波動を送った。
五人全員で、ギリギリ総裁する。
「さすがに守りきるか…じゃ、三人同時にやったらどうかな?」
「やべ…」
五人が守ろうとした時にはもう遅かった。
三人から発せられた波動が、五人に向かった。
そして、消えた。
「波動が…消えた?」「…?」
「何があったんだ?」
どこからか声が聞こえた。
「弱いものいじめはいけないよ、三名様」
「誰だ!?どこにいる!?」
「フッ…日の出づる国から参るは太陽のごとく世界を照らし世界を滅す。陽光に照らされぬこの暗黒の地に光と正義を与えるため、極東より来たるは、日の丸戦士ニッポン!」
「ナニ馬鹿な事やってんだ、フェニックス」
ペガサスが部屋の隅を指差した。
「ばっ、馬鹿な事ってなんだよ。俺が四歳の時に流行った『日の丸戦士ニッポン』だぞ?ブロードキャスティングフォーチルドレンの超大作。あの登場時の決め台詞にはしびれたなぁ~」
「あー、だからあんな難しい事言えたんだ…。俺様、フェニックスが頭打ったかと思ったよ…」
「馬鹿を非難するにも程があるだろペガサス…」
すると、サラマンダーが言った。
「来てくれたんだね、フェニックス君!」
「おうよ、カガミぶっ殺してきたぜ」
フェニックスが、地下界王、どんぶりうなぎ、ツルギ、サイゴを睨み付けた。
「お前らも殺ってやるよ」
「待って、フェニックス君」
「…サラマンダー?」
「地下界王を殺さないでほしいんだ」
「はァ?何言ってんだ、アイツが大本命じゃねーか!アイツ殺さないと地上界も…」「解ってる。だけど、僕が思うに、彼は悪人じゃないんだ」
「悪人だろうとどうだろうと、殺さないと地上界が…」
「せめて、三人を殺しても地下界王を殺すのは少し待ってくれないか?色々聞きたいんだ」
「まぁ、それぐらいなら…」
フェニックスは敵に向き直った。
「地下界王以外!覚悟しとけよ」
「どちらがかな」
三人が波動を放った。
だが、フェニックスがポケットの中身を出すと、波動は消えた。
「なっ、何をした!?」
「パックンチは、技を食べる事が出来るンチ!」
「パックンチ!」
五人が叫ぶ。
だが、パックンチは意に介さない。
「今の波動は、フェニックスのを100とするなら80だンチ。年上ともあろう奴等が恥ずかしいだンチ」
「なっ、テメエ…」
サイゴが憤る。
「抑えて、サイゴさん」
ツルギが止める。
「大人ならもっと強ーい波動をパックンチに食わせろンチ!」
「調子こいてんじゃねぇ虫ケラ!」
サイゴがキレた。
キング・ジャイアントぐらいの大きさの炎がパックンチに向かう。
だが、それさえもパックンチは飲み込んだ。
「うーん、今のはフェニックス基準で60だンチ。ま、相手が悪いンチ。フェニックスの滅世禁炎之舞に叶う技なんか無いンチ。頑張った方だンチ」
「コケにしやがって…」
「コケにされる方にも五割責任があるンチ」
「それぐらいにしとけ、パックンチ」
「あちゃ、フェニックス」
「おい、サイゴ!よくもパックンチを虫ケラ呼ばわりしやがったな!ぶっ殺してやる!」
「バジリスクさん、フェニックス君、パックンチの肩を持ちますね…」
「ああ、何かあったのか…?」
美少女効果である。
「行くぜ三名様!テラフレア!」
「シールド」
「シールド」
「シールド」
「チッ…」
フェニックスが舌打ちした。
「シールドにゃあ、叶わねぇ…」
サンガーが、助け舟を出した。
「おい、どんぶりうなぎ、ツルギ、サイゴ!いつまでもそのままで良いのか?お前ら最後の相手なんだからシャキッとしろよ!」
サンガーとしては、挑発で三人をシールドから出すつもりだったが、フェニックスにとっては違う方向に働いた。
「サンガー!本当にコイツらが最後なのか?」
「え?あ、ああ、アイツらが自分で言った」
「っかしーなぁ、カガミは俺の知らない敵が何人もいるって…クラーケン、こいつらの前の敵は誰だ?」
「キング・ジャイアントとノアです」
「あの二人が…。それを含めても、『何人も』には届かない…」
フェニックスが珍しく考え込んでいる。
はずもなく、ポケットの中でパックンチが話した事を真似ているだけだった。
「地下界王!」
「…何だ」
「本当にコイツらが最後なんだな?」
「ああ」
その眼は、本当だった。
フェニックス(パックンチ)は一度思考を止めた。
「まあいい。まずは、お前らを倒さねばな」