全世界戦争(二)
「ちょっと待ってください!」
「どうした、クラーケン…?」
「名案を思い付きました」
「マジで」
サラマンダーがギョッとしている。
クラーケンが壁に近づいた。
「聞き壁さん、開けてください」
『お前は何者だ』
「僕は…」
本当の事を言っても、嘘を言っても通れない。
さて、クラーケンは何と言うのだろうか。
「僕は…」
『僕は?』
「僕は、僕です」
「え゛」
驚いたのは、サラマンダーだった。
他の三人は絶句している。
「そんなのアリかよ、クラーケン…」
「フフフ…」
クラーケンが余裕の笑みで聞き壁を見つめる。
返事が返ってきた。
『嘘もついていない…持ち主のNGでもない…合ー格!通れ!』
「マジかー!」
クラーケン、合格。
続いて四人。
『お前らは何者だ』
「わしはわしだ」
「俺様は俺様だ」
「僕は僕だ」
「俺は俺だ」
『合ー格!通れ!』
「ヤッター!何かセコい気もするけどまぁ良いや!」
サラマンダー、満面の笑みである。
直後に、サイレンが鳴り始めた。
『敵、聞き壁通過。敵、聞き壁通過。他の壁の近くにいる兵士は、直ちに壁を守れ』
「うわっちゃー、守り固くなったみたいネ」
「どうする?策士クラーケン?」
「策士じゃぁ…ないんですけどね…。まぁ、ここまで来たら強行突破しかないでしょう」
「んじゃ、奥義行きますかぁ」
「五人の覇者」プロローグのどんぶりうなぎの最初のフレーズを覚えているあなた方ならもうお解りだろう。
そう、彼らがあと二回奥義をしたら終わるのである。
「総力奥義!」
『主は雷の覇者』
「出でよ雷虎!」
さて、強行突破などと軽口を叩いている彼らであるが、一体どこに向かっているのだろうか。
まぁ、一つ言える事は、雷虎は右に向かった、という事だけだ。
「何かでかいトラが右に行ったぞー!」
「敵の変化だ、追いかけろー!」
もう一つだけ言える事がある。
雷虎は、囮だった。
「フフフ…サンガーさん…雷虎の奴右行きやしたぜ…」
「フフフ…我らは左に向かおうか…」
さて、このドス黒集団はその後左に向かった訳だが、左が行き止まりだった事は周知の事実である。
「くっそ〜、強行突破って言ったから素直に雷虎についていきゃあ良かったぜ…」
「今頃右側は敵が囲んでるんだろーね」
「…………。」
「…強行突破しかねーな…」
「何回目だよそのフレーズ」
「取り敢えず、右側に行きましょう」
数分歩くと、遠くに人を見つけた。
「何があってんだ…良く見えねぇ…」
「えーと、沢山の死体と、それを食い漁るトラが見えますね…」
「ああ…雷虎勝ったんだ…」
地下界軍、弱し。
「まぁ…進もう」
サラマンダーが死体を通りすぎようとすると、寝返りを打った。
「うっ、動いた!」
「え゛」
四人が振り向く。
「サラマンダー、この死体が動いたのか…?」
「うん…あ、いや、雷虎が食べてただけだった。ごめんごめん」
「ったく、驚か…」
「ん?どうした、ペガサス?」
「こ…こいつ…雷虎が触ってないのに動いてたぞ…!」
「なっ…!」
五人、硬直。
「ペガサスさん…本当に動いたんですか…?」
「…ごめん、嘘」
「大龍火炎!」
「アイスキャノン!」
「エレクトローダー・ハイテンション!」
「ギガクラック!」
「いやあああああああああああああ」
「助けてくれぇ…クラーケン…死んでまう…」
「仕方無いですねペガサスさん…ヒール」
「ふぅ、生き返った…」
「なぁ、クラーケン」
「何ですか、サンガーさん」
「この際だから全員疲れを取って貰えねーか?」
「解りました。ヒール。パワーモア」
えー、五人の力果てを待ち望んでいた読者の皆さん。
本当にすまない。
「おお、元気出た」
「さて、進むか」
力を回復した五人は、その後も数々の試練をクリアし、進んでいった(その道が正しいとは限らない)。
「ポイズン!」
「ぎゃっ!」
「地下界軍の兵士さんよォ、地下界王の居場所を教えろや」
「絶対に言わんぞ…」
「フレア!」
「ぎゃっ!」
「ウェーブ!」
「ぎゃっ!」
「サンダー!」
「ぎゃっ!」
「クラック!」
「い、言います!」
「フッ、最弱の技でネチネチと攻撃する作戦、成功だな」
読者の皆さんには知ってほしい。
こういうのを拷問と言うのである。
「で、どこにいるんだ?」
「出られずの階にいる…このずっと上の階だ…」
五人、一瞬の沈黙。
「出られずの階って…」
「俺様達が最初に入った階じゃねーか…?」
「確か、サラマンダーが昇天した階だよな…」
「…………。」
サラマンダー、号令。
「全員、戻るぞ!」
「てんてんてん!」