表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五人の覇者  作者: コウモリ
短編10
124/147

極界の架け橋

短編。地上界が参戦する

前話さらっと言った、読者の皆さんの故郷である地上界の事を話そうではないか。

短編は基本的に脇役の過去を紹介する。

かつてサラマンダーが言った言葉だ(十三人参上【五】参照)。

、その基本的な短編の定義から外れるのは、今回で三回目だ(一回目:クラーケンの恋人 二回目:神秘の森)。

という訳で、今回の短編は五神の、地上界説得を描く。

…とは言うものの、全地方の状況を著すには、無理がある。

次はアメリカだ、

次はアフリカだ、

なんてやっていたら、いくら骨があっても折れてしまうだろう。

そして、くたびれ儲けになる可能性は高い。

だから、今回は五人の生まれ故郷である日本を描こうと思う。






日本、いや、アジアに向かったのは、最も馴染みのある水神だった。

もうご存じだろうが、水神が最初に向かったのは最も土地の広いロシアでも、最も人口の多い中国でも、その次のインドでもなかった。

日本である。

何故なら、日本は他のアジアの国々よりも技術面で抜きん出ており(地下界王によって二百年前に戻ったから)、敵が来た際に最も役に立つであろうから…という建前であるが、実際は、五人の出身地の方がそのネタを使いやすいだろう、という理由だ。

いや、ダラダラとややこしくなって申し訳ない。

とにかく、水神が向かったのは国会議事堂だった。






「…にて、やっちゃっ…いや、矢土やつち 谷津太やつた総理大臣の不信任案は…」

バタン!

「皆さん、聞いてください!」

いきなりの水神の登場に、数百名はざわついた。

「君!ここは君が入るような場所じゃない!何だね、そのコスプレのような格好は!」

天女、とキーワードを与えておくので、どのような姿かは勝手に想像して欲しい。

「私は、水神というものです。この地上を救いに来ました」

周囲からため息が漏れた。

「はァ、君…どうやってここに入ったかは知らんが、そういう思想を持った人はここにはいらないんだ。帰りなさい」

水神はいくら言われようと顔色を変えずに、こう言った。

「…二百年前に、五人の覇者が存在したのを知っていますか?」

ざわつきが、違う質になった。

すると、近くにいた議員が水神に話しかけた。

「江戸時代末…最後の佐幕派(幕府を補佐する)武士として戦った…火、水、草、雷、土を操るあの五人の覇者か!」

「アンタ達二百年時代観ズレてますね」

「しかし…五人の覇者と言えば幕末の…」

「ああ、はい、解りましたよ。アンタ達にとってはそーなんでしょーね」

水神が諦めムードで言う。

仕方がない、二百年前の世界なのだから。

水神は続けて、

「で、その五人はどのような事をしたのですか?」

「ああ、君は知らないのか…?小学校で習うはずなんだが…。まあいい、教えてあげよう。やっちゃっ…いや、矢土 谷津太総理大臣、教えてやってください」

「うむ。まず、彼らはただの農民だった。毎日耕作の白黒な生活をしていた。だが、ある日、彼らが生活していた村に酔っ払った武士がやって来て、五人を刺し殺したのだ。一度は死んだ五人だったが、彼らはすぐに蘇った。しかも、蘇った時、彼らは五つの力の超能力を手にしていたのだ」

矢土総理大臣はそこで一度切った。

「彼らを救ってくれたのは、天にいた徳川家康だった。そして、助けてくれた家康のために五人は幕府に忠誠を誓った。そして、あの戦いが来た。戊辰戦争だ」

水神はこの戦いを森としてしっかりと体験しているが、そんな超人が現れた覚えはない。

だが、話に水を差すわけにはいかないので、続けてもらった。

「新政府軍は物凄いスピードで旧幕府軍を攻撃していった。そこで覇者達は超能力で攻撃した。敵は巨大なモンスターを出してきたりしたらしいが、お構い無しだったらしい。だが、悲劇は起きた」

(興味無いだろうから以下略。いつか短編として紹介しよう。)

「眠りから覚めた五人は、アメリカの大統領や国際連盟の事務長などと面識を持ったのだ。そしてその後、彼らは元いた天の世界に帰った。以上だ」

最後の方、似たような事があった気がするが、まぁ…ねぇ。

「解ったかね、水神君。その五人がどうかしたのかな」

「私は、その五人の知り合いです」

「え゛」

「彼らはまだ生きています。」

「なっ…!そ、その証拠はあるのか!?」

「そうですね…私も、水の体系の技を使うことが出来ます。それを見れば信じていただけるでしょうか?アートウォーター!」

国会の中央に、やっちゃっ…いや、矢土総理大臣の水の彫刻が現れた。議員が沸く。

また、内外政治放送の国会中継を毎日見ているあなた方ならもうお解りだろう。

そう、国会にはテレビカメラがある。

この水の彫刻は、内外政治放送によって全国にばらまかれた。

「信じていただけましたか?」

「あ…ああ…」

割には全員、信じられない、という顔をしている。

すると、水神がテレビカメラを見つけ、それに向かって言った。

「全国の皆さん、今起こった事は本当です。そして、五人の覇者は今も存在しています」

テレビの前の人達がこの時、どんな表情で見ていたかをご存じだろうか。

それまでは政治に興味を持たず、テレビもただつけていた子は、アートウォーターがテレビで流れた瞬間、食い入るように水神を見た。そして、五人の覇者の健在を明かされると、いても立ってもいられず、外を叫んで駆け回った。

「五人の覇者は今もいるんだー!内外政治放送の国会中継、超人が出ている!」

その声を聞いた人々は、それまでテレビを見ていなくても、他局を見ていても、内外政治放送をすぐにつけた。

そして、水神と五人の覇者の存在を知った。

ほんの数分で、この日本全国に知れ渡った。

再び、国会にて。

水神は、テレビカメラから、総理大臣に向き直った。

「そこで、皆さんにお願いがあります」

「な、何だね…?」

「もうすぐ、地下界という所から大量の戦士が攻めてきます。彼らもまた、私達と同じ様に技を使う事が出来ます。ですが、私達の天上界は軍が壊滅状態にあり、この地上界を完全に守りきる事は不可能です。だから、軍を動かし、その時に備え、非常時は地下界と戦って欲しいのです」

「そんな…急に言われても…!」

「急に言い、早急に答えて貰う必要があります。今にも地下界はこちらに攻めてきているかもしれません」

「…!」

「出来るだけ早く。決めてください。失礼しました」

水神は国会議事堂から出た。






その日の内外政治放送のニュースの一部を紹介しよう。

『えー、今日の通常国会で、水神と名乗る女性が皆さんご存じ五人の覇者の存在と戦争についてを話しました。この映像がその時の様子です…………。

…………。

えー、内外政治放送では、無作為に選出した…え?え、あ、はい…。失礼しました、なんと視聴者の皆様から既に大量のご意見を頂いておりまして…現在もその数は増え続けております。ご意見される方は、電話、FAX、インターネットの公式サイトからどうぞ。下にご覧いただけますでしょうか…これはリアルタイムで更新しております。

赤が戦争の参加に賛成される方、青が参加に反対される方、灰色が解らない、様子を見るべきだ、などのその他です。見たところ、赤が五割、青が四割、灰色が一割と言うところでしょうか…?』

赤は、着々と増え続けていた。






それからは、どの局も戦争の事以外伝えなくなった。

そして、必ず画面右下には世論のゲージが表示されていた。

三日が経った。

全ての局の世論は、賛成で一致した。

第二次世界大戦の敗者である我らが、更に戦いを受けてどうするのだ?

そんな意見も読者の中にはあるかもしれない。

だが、人々は皆、こう考えるのだ。

我らが英雄が戦っているのに、我らが戦わずしてどうする。

日本、いや、地上界は、戦争への参加を決定した。






水神は、総理大臣とディナーを食べる事になった。

都内の店にて。

「今回は、ご協力ありがとうございます。我々五神も地上界を全力で守護致します」

すると、総理大臣は言った。

「その…確かに戦争への参加はする。だが、我々日本人は殆どが戦争が初めてなのだ」

「承知しています」

「だから…君達の住む、天上界と交信を取れるようにしたいのだが…」

「なるほど…」

「聞けば、ある地区に二界道という、地上界と地下界を結ぶトンネルがあるとか」

「はい。地下界が攻めるならそこからでしょう」

「それを、天上界と地上界にも作れないだろうか?」

水神は、ため息をついた。

「残念ですが…無理です。あれは、大量虐殺が伴って出来る事ですので」

「そうか…」

「ですが、天上界と地上界の交信は出来るように致し…」

「あれは、機械では作れないのか?」

「…え?」

総理大臣の言葉に、水神は戸惑った。

「我が国は、技術面で他国より抜き出ている。そして今、日本は宇宙エレベータという物のパーツを全て持っている。作れと言われれば二日とかからず完成するだろう」

「宇宙…エレベータ…?」

「ああ。それを用いて、二界道を作る事は出来ないだろうか?」

水神は考えた。

確かに、理論上は出来るだろう。

だが、地下界に悪用される可能性も高いのだ。

「危険すぎます。地下界に悪用されない訳がない」

総理大臣は、ニヤリと笑った。

「そんなマネはさせんよ」

総理大臣は秘書を呼び、二枚の紙を用意した。

書いてある事は似ていたが、違った。

「これが何かお解りかな?」

「いえ…」

総理大臣は、まず右の紙を指した。

棒グラフだ。

「これは、一般的なホルモンの量」

左を指す。

「これは、『君』のホルモンの量」

「え?」

「ここに来る途中、計らせて貰ったよ。『いつの間にか』ね。」

二枚の紙の違いは何だろうか。

右の一般的なホルモンの量には、数本の線が引いてあった。

左も、同じ本数線が引いてあった。

だが、一本だけ、大幅に長さが違った。

「同じ方法で計った。なのにこのホルモンだけは数値が異常に違う。君のは短すぎるんだよ。何度計っても結果は同じ」

「…………。」

「実はね、このホルモン。何の役割を果たしているか未だ解っていない。君は解るかい?」

「…Ability Inhibiting Hormone」

「能力抑制ホルモンという意味か…。いや、意味はどうでも良かった。これを計れば、地上界の人間かどうかは判断出来る。天上界の人は、地上界の人間がこの人は大丈夫だと設定すれば乗れるようにしよう」

「そうすれば…地下界の人間は利用できない…!」

「どうだ?作っても良いか?」

「ええ、解りました。今すぐに建設を開始してください」

総理大臣はまたニヤリと笑うと、秘書に何かを伝えた。

「これで、地上界も天上界の仲間だ」

三界が三角形で結ばれた。

もう、これは天上界と地上界の極界戦争ではない。

力は弱いが他の二界に根性は負けない地上界の加わった、

全世界戦争だ。


極界の架け橋、終了。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ