第二次極界戦争(三)
ひたすら、六人は考えた。
何度も実行し、何度も…「あんな事」をされた。
六人とも、下半身不随である。
すると、突然フェニックスが言った。
「何か…あったよな」
「え…何が?」
「行き詰まったら、小心に返れって」
「弱気になってどーすんだよ」
「何て言うんだっけ?」
「初心に返れだろ」
「あっ、そっか。行き詰まったら初心に返れだ」
フェニックスが一人合点する。
良い事を言ったはずなのだが、フェニックスが言うとどうも有り難みがない。
だが、反応してくれる人はしてくれるらしい。
「それですよ、フェニックス君!」
「え、いきなり何だよ、クラーケン?」
「初心に返るんですよ!」
バジリスクが追求する。
「初心にもいろいろある。どの初心だ」
「ピッタリのがあるじゃないですか!そう、僕達五人が出会ってすぐの頃に!」
「サラマンダー、何かあったっけ…」
「途中参加の僕に聞いて解る訳無いじゃないか」
「とにかくフェニックス君、ついてきて下さい!」
クラーケンは、フェニックスを連れて壁から見えない場所に行った。
「これは…結局どの初心なんだ?」
フェニックスを見てペガサスが戸惑う。
「ヒントは初めての短編です」
「初めての短編って…ああ、『クラーケンの恋人』か?」
「はい」
「って事は、これは…」
ペガサス、絶句。
「て言うか、クラーケンこの服どっから手に入れたんだ?」
「アートウォーターも日々進化してるんですよ」
「へぇ…」
種明かしをしよう。
「フェニックス君」
「あら、サラマンダーさん。私の名前はフェニックスではありませんよ」
「…じゃあ、何という名前なの」
皆さん覚えているだろうか。
忘れている人が大半だろう。
それで結構。クラーケンの恋人を参照にすれば良い。
「私の名前は、紅子です」
「…………。」
クラーケンの恋人を読めば解るが、紅子さんはフェニックスの女装の割には、めちゃくちゃ可愛い。
現に、ペガサス、サンガー、バジリスクのハートを鷲掴みにした事がある(不本意)。
「これほどの女性なら通してくれますよ」
「だな」
「ちょいと覇者の五名様」
「何ですか、フェニ…子さん」
「俺の反対意見は無視ですかい」
「その姿の時は女言葉を使わんか。それと、女に意見を言う権利はねぇよ」
「バジリスク、テメエ何時代の人間だよ」
「サラマンダーに胸張って紅子です、って言った奴が何を言う」
「ぐ…」
「とにかく、やれ」
ああ、どうか読者の皆さんには解ってほしい。
男尊女卑とは名ばかりで、この世は全て女尊男卑なのだ。
「あの…」
紅子さんが壁の前に立って言った。
「私は…女です…」
ガタンッ!
開いた。
床が。
「え゛ぎゃあああああああああ」
フェニックスが地の底へと向かった後、前の壁が消えた。
「結局…何だったんだこれは」
「フェニックス君…どーなったんだろ」
「…死んだかもしれませんね」
「ま、いっか」
良くない。
五人は進んでいった。
「なかなか次の番人が現れませんね…」
と言った時に、目の前に現れた。
「じゃんじゃかじゃーん♪」
「誰、君」
「え、番人だよ番人。効果音まで付けて出てきたのにそりゃああんまりだ」
「そうか…貴様が番人か…」
ペガサスが言った。
「貴様、紅子さんをどこにやった!」
「怒るの多分ここじゃないッ!しかも、もうフェニックスで良いし!」
「黙れサラマンダー!俺はこいつに仕返ししねぇと気が済まねぇんだよ!」
因みに、さっき「ま、いっか」と言ったのはペガサスである。
「マンティスシーザー!」
「ぎゃっ!」
番人が間一髪で避ける。
「ちょっと、俺は最後の番人だよ?そんなにアッサリ倒しちゃって良いの?」
サイゴとは性格が正反対の最後の番人である。
「黙れ!フォレスト!」
「どっわ、ペガサステメエ味方も殺る気か!」
「避けりゃ良いだろ!」
「どうやってだよ!」
「飛べば良いんだよ!」
因みに、敵には聞こえていない。
「飛べるのサラマンダーだけじゃねぇか!」
「じゃあ、サラマンダーが持てよ!仕切り直して、フォレスト!」
火事場の馬鹿力、という慣用句をご存じだろうか。
かじばのばかぢから、「か」と「ば」が同じだ、わーい♪
ではなくて、
差し迫った状態において、普通では考えられないような力を発揮する
という意味だ。
無論、慣用句だから、「火事場」でなくともこれは適用される。
そして、今がそれだ。
「サラマンダー…」
「何だい…?」
「お前、大人四人持てるほど力あったの…?」
「そうなのかもね…」
「最後の番人はどうなった…?」
一人、地に残り死亡。
「やったぞ…!」
「二界道を出れるぞ…!」
「よっしゃああああああああああ」
次回より、地下界に突入。